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三菱商事では、市場メカニズムを使った『地球環境と経済の共生』が必要であると認識し、早くから排出権ビジネスに取り組んできました。総合商社の強みを生かし、全世界で排出削減プロジェクトを立ち上げ、ビジネスという側面から地球環境と企業を支えています。 気候変動対策が生んだ新しいビジネスモデル 2007年4月、三菱商事では大規模な組織改革を実施しました。将来を支える事業として新エネルギー・環境、金融、医療の3分野を全社推進分野と位置付け、イノベーション事業グループ、新産業金融事業グループの2つを新設。イノベーション事業グループ内に新エネルギー・環境事業本部が、さらにその中に排出権事業ユニットが設けられました。 話は10年前にさかのぼります。1997年、京都で第3回気候変動枠組条約締約国会議、いわゆるCOP3が開催されました。COP3では、2008年から2012年の5年間(第一約束期間)、附属書I国(先進国、ロシア、ウクライナ、中・東欧諸国)の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を、約5%削減することが合意されました。これが「京都議定書」です。 京都議定書では、各国の国内努力にも関わらず、温室効果ガスの排出削減目標を達成することが困難な場合のために、京都メカニズムと呼ばれる3種類の手法が認められました。その3種類の手法とは、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)排出権取引(ET)です。 地球の大気中のCO2濃度は、産業革命以前では280ppm(0.028%)程度でしたが、今は381ppm程度まで増えています。その濃度は先進国の大都市でも、人の住まない南極でも同じ。CO2は大気中で拡散するからです。逆に、たとえば発展途上国で効率の悪い発電所を改善したり、工場から排出されている温室効果ガスを回収し分解するなど、地球上のどこで排出を減らしても全体に効果が及びます。京都メカニズムはそこに注目した仕組みであり、世界全体で効率的に排出削減を進めていこうという試みなのです。 20世紀の後半から、台風やハリケーンの大型化や集中豪雨、干ばつといった気象災害が世界で頻発するようになり、地球温暖化の原因は、化石燃料の燃焼など人為起源による温室効果ガスであるとほぼ断定されています。 ![]() ※附属書I国 先進国と市場経済移行国(ロシア、ウクライナ、中・東欧諸国) 排出権取引に関わるすべてのサービスをワンストップで 京都会議後の1998年、当時の三菱商事社長 佐々木幹夫(現会長)が、気候変動対策や二酸化炭素の削減は将来大きな動きになると考え、調査を命じたのが始まりでした。これを受け三菱商事では京都メカニズムに注目し2000年の世界銀行炭素基金(PCF)への参加を皮切りに、2001年に排出権取引ビジネスの草分けである米国ナットソースおよび短期金融仲介の第一人者である東京短資(現在の東短ホールディングス)などと共同でナットソース・ジャパンを設立するなど、早くから排出権取引に必要となるインフラ整備に取り組んできました。2004年にはアジアで初の温室効果ガス削減資金である日本温暖化ガス削減基金にも中核メンバーとして参加しています。同基金は途上国や東欧諸国で行われる温室効果ガス排出削減プロジェクトから生じる排出権を購入し、出資者間で配分することを目的に設立された基金です。 2005年1月にEUにおいて域内排出権取引制度が開始され、同年2月には京都議定書が発効したことから、京都メカニズムを活用した排出権ビジネスに世界的な注目が集まり、多くの企業が参入し始めました。しかし早くからこの分野に注目した三菱商事は、ノウハウと経験で他社に先行しています。約200ヵ所に海外拠点を持ち世界中のあらゆる産業にアクセスしていること、各国政府や世界的な企業とネットワークを築いていることなどの強みを生かし、単なる排出権の売買だけでなく、CDMやJIプロジェクトに力を入れ、調査から事業提案、プラントの設置やファイナンスといったすべてのサービスを“ワンストップ”で提供する事業を展開しています。 「この仕事は発展途上国がベース、しかも中心都市から離れるほどビジネス機会が広がってきます。だからローカルに徹しなければなりません。一方で、国際交渉などの動きにも敏感でなければなりません。徹底的にローカルでかつインターナショナル。この両極端を同時にやる、いかにも三菱商事らしい仕事だと思います。しかもこのビジネスは、会社への利益貢献とともに地球環境の保全にもつながります。会社だけでなく、相手国や日本政府にも貢献できる。こういうビジネスはなかなかありません」 排出権事業ユニットマネージャーの慶田一郎はそのように語ります。 ![]() 実績を積み上げるとともに“ポスト京都”を視野に 三菱商事の排出権ビジネスは着実に進展を見せています。2006年には初めてのCDM案件が国連に登録されました。2007年11月末現在、6件のCDMプロジェクトの国連登録が完了し、その削減量は年間1,270万トンとなりました。これはこれまでに国連に登録された削減量のうち7.5%のシェアを占めます。さらに2007年9月28日には、ウズベキスタンの国営化学会社ウズキミヨサノアト社と同社傘下の化学肥料会社3社との間で、CO2の310倍という温室効果を持つガスである亜酸化窒素(N2O)を削減するプロジェクトについて正式契約するとともに、ウズベキスタン政府からCDMプロジェクトの承認を取得しました(CO2換算で年間120万トンの排出削減に相当)。現在、この案件を含め16件が国連登録手続き中で、先の6件と合計すれば年間約1,800万トンのCO2排出削減量を達成できる見込みです。さらに、40〜50件の案件を検討中。数においても質においても、この分野を大きくリードしています。 2007年6月にドイツ・ハイリゲンダムで開催された先進国首脳サミットでは、2050年に世界の温室効果ガス排出を半減させるという日本政府の提案をもとに基本方針が合意されました。京都議定書の第一約束期間が終わった後、2013年以降(ポスト京都)も、何らかの形で排出権ビジネスは継続されるでしょう。 「気候変動対策には、数十年といった中長期の取り組みが必要になります。ポスト京都で三菱商事が先行しているためには、常にアンテナを高く掲げ、今後もできるだけたくさんの案件をいろいろな国々で手掛けていくことが大切と考えています」(慶田ユニットマネージャー) 気候変動に限らず、環境への配慮をしないビジネスは成り立たなくなっています。企業の事業活動・技術開発は環境を意識した方向にシフトしており、排出権取引以外にも世界中でさまざまな新しいビジネスモデルが生まれています。同時に、それらすべてが三菱商事のビジネスに関連してきます。排出権事業ユニットが手掛ける一つひとつの案件は手間がかかる地道な仕事ですが、これを着実に仕上げていくことは環境分野における新たなビジネスの経験蓄積やモデル構築にもつながっていくのです。
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