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![]() 民営化が進みグローバル化する水市場
水の惑星といわれる地球。しかし、地球にある14億km3の水の97.5%は海水です。2.5%しかない淡水もその7割は北極や南極の氷として存在し、残りのほとんども地下水で、人間の生活圏にある水はわずか0.007%にすぎません。水資源に恵まれた日本にいると忘れがちですが、水もまた有限な資源なのです。現在でも世界中で10億人ほどが、安全な水を利用できない状態にあるといわれています。中でも今後人口が急増する、中東やアフリカ、アジアで水不足が深刻化することが懸念されています。衛生的な水を安定供給していく水事業は、人類の生存や都市の存続にとって不可欠なものです。こうした公共性から、水事業はこれまで長く行政がその設置運営を担ってきました。しかし、90年代初めから水事業の民営化が大きく進みました。民間資金や民間技術を活用することで、より効率的な運営と質の高いサービスの提供を行うことができると考えられるようになったからです。特に発展途上国においては、公共部門に十分な資金と技術・ノウハウがないことから、民間資金の導入が求められています。 1997年民営化されたマニラの水事業
1990年代、フィリピンの首都マニラは、ふくれあがる人口とともに、インフラ整備の遅れや環境の悪化が問題になっていました。マニラの公営水道事業は、無収水率※が63%に達し、24時間給水率も26%にすぎませんでした。つまり、送られた水の3分の1しか蛇口に届かず、蛇口があっても水が出ない時間帯が多いという非常に非効率な状況にありました。しかも人口カバー率は58%にすぎず、公共水道から水を得られない人々が4割以上もいたのです。アジアの発展途上国の水事業の運営は必ずしもうまくいかず、設備が老朽化しても更新もできないままというところも少なくありません。マニラの水事業も無収水率が一向に改善されない状況が続き、業を煮やした当時のラモス政権は水道事業の民営化を決意。こうして1997年にマニラ首都圏の水道事業は、東西に分け民営化されました。 ※無収水率:浄水場から送られた水の全量に対して、漏水や盗水により途中で失われる率 地元大手企業と共に民営化事業に参加
1997年のマニラ首都圏水事業民営化に当たって、三菱商事は現地大手コングロマリットのAyalaグループなどと共に、給水人口500万人の東地域を担当したマニラ水道会社(MWC)に資本参加し、経営の一角を担ってきました。事業内容は上水道の取水から、料金の徴収、下水やし尿処理まで上下水道全ての領域にわたります。しかし、まず重要なのは、無収水率を改善し、つくった水をきちんと末端まで届けることでした。なにしろ、浄水場を出た水のうち3分の2が失われる状態。その原因はパイプが老朽化していたため水漏れが起こることと、老朽化したパイプから水を抜く人が多かったことでした。 「まず何より、人々に水をきちんと届けることが第一の優先課題でした。水道がなければ、水を買わなければなりません。200リットルのドラム缶の水が200円(水道の約20倍)もするので、貧しい人々には負担が大きいのです。逆にこれが盗水の原因にもなっていました。水を届けることは盗水対策にもなるのです」 そう語るのは、MWCの設立期から現地で同社のマネジメントに関わってきた西村弘(環境・水事業ユニット創新企画チームリーダー)です。 無収水率は24%に劇的に改善
民営化当初は、アジア通貨危機やエルニーニョによる大渇水など厳しい条件が重なり、運営が圧迫されました。その対応に当たっては大規模な借り入れはせず、民営化前に契約したアジア開発銀行や国際協力銀行などからのODA資金を利用して設備投資を行いました。また、働く人々のコンプライアンス意識やモチベーションを高めるために、マネジメントの改善に注力。マネジメント層が現場の職員と働くことで両者の距離を縮めると共に、公正なマネジメントを心掛けました。かつて公務員だった従業員たちは、いまフィリピンのトップ企業集団Ayalaグループの一員として、誇りを持って働いています。経済環境が好転した2003年ごろからは大規模な新規設備投資も可能になりました。老朽化した設備を更新すると共に、最新の設備を導入。これまで公共水道から水を得られなかった人々に水を届けるためのプログラムもスタートしました。 販売水量は民営化当時の一日当たり44万m3から2007年には104万m3に増加。しかも浄水量はその間むしろ減っています。もちろん寄与したのは無収水率の改善です。無収水率は63%から24%に劇的に低下しました。
し尿処理事業でも、当初2台しかなかったバキュームカーを100台にまで増やし、2007年にはフィリピン初の本格的なし尿処理場も完成させました。こうした事業はマニラの環境改善にも大きく寄与しており、水道の普及と合わせて「MWCは業務そのものが社会貢献」(西村)なのです。他にも病院や学校へ優先的に水道管を引いたり、コミュニティ支援のために地元に仕事を優先的に発注するなどの事業も実施しています。ビジネス面でもMWCは順調に成長してきました。2002年には配当を開始、2005年にはフィリピン証券市場に上場を果たしました。 No.1を目指し、国内でも水事業を展開
「MWCの成功は世界からも注目されています。ベトナム、インドなど他のアジア諸国からMWCと一緒にやりたいという申し出が来ており、三菱商事も協力しています。今後もAyalaグループとパートナーを組んでいくことで、アジアの水市場において一定のポジションを築いていけると思っています。そのためには、まず日本国内でNo.1を目指し、その上で海外でも通用する力をつけたいと思います」(水谷重夫 環境・水事業ユニットマネージャー)。当社は2000年に、日本ヘルス工業(株)と合弁で(株)ジャパンウォーターを設立して国内での水事業に乗り出しています。 日本の水事業は2002年の水道法改正によって、民間化の必要性が高まっています。しかし、日本には水事業を手掛ける民間企業がほとんどありません。そんな中、ジャパンウォーターは、広島県三次市で浄水場の維持管理業務を受託するなど、全国20ヵ所で水道事業の業務委託実績を積み上げてきました。今後、日本国内における総合水事業を成功させると共に、MWCで培った経験をもとにアジア地区での水事業に確固たる地位を築いていくことが環境・水事業ユニットの目標です。
その他実績:宮崎県宮崎市(2006年)、愛媛県新居浜市(2006年)
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