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森林資源に根ざしたパルプ事業では、地球環境に与える影響を考慮するとともに、森とともに暮らす地域住民とのパートナーシップも重要です。徹底した自然保護と地域との深い対話は、ビジネスを縛る制約ではなく、発展のための力となっているのです。 創業時から環境と対話を重視
アルパックの事業開始は1993年。地域や自然との共生は創業時からのテーマでした。1989年、アラスカで原油タンカー、バルディーズ号が座礁し大量の原油が流出、海洋汚染をもたらし、企業の責任が厳しく問われました。パルプ・製紙産業も、原生林を大規模に伐採することで自然を破壊し、森を生活の場とする先住民の権利を奪うとして、世界各地で非難を浴びていました。カナダでも森林産業と先住民とのトラブルが発生し、環境保護団体による出荷阻止行動や製品のボイコットを受けた例がありました。 こうした背景からアルパックでは、当初から環境への影響を最小限にするために最新鋭の環境設備を導入、徹底的な環境対策を施すと同時に、先住民を含む地域住民との対話を重視するという経営方針を貫いてきたのです。 「何か一つ装置をつければ水も空気もきれいになるというものではありません。入り口から出口までを一貫したシステムで管理して初めて実現するものなのです」 同社の環境対策について、アルパック社長の斎藤純はそのように説明します。それ以上に重要なのは地域の信頼を得ることです。 事業の開始に当たっては、環境団体・政府も参加した環境ヒアリングを実施、操業開始以来排水・排気ガスをモニターし続け、そのデータを公開しています。工場も地域に完全に開放され、多くの地域住民が見学に訪れます。 「最も重要なのは情報の開示。法令を重視し、水質や排ガスなどのデータ、事故の報告などについても説明責任を果たし、時間をかけて信頼を積み重ねてきました。地域で存続していくためには透明性を高め、信頼関係を築いていくことが不可欠なのです」(斎藤社長) 持続可能な森林管理の認証を取得 580万ヘクタールという広大な森林面積を管理しながら、アルパックの年間伐採面積は1万ヘクタールにすぎません。森林の再生能力を損なわないサイクルで伐採を進めているからです。 この森から切り出されるパルプ原料となる木は、アスペン(ポプラの仲間)を中心にした広葉樹。アスペンは伐採したあと、地下の根から新しい芽が伸びてくる性質があり、約70年で再生します。アルパックではこうした自然のサイクルの範囲で原木の伐採・調達を行っています。同時に森は先住民の生活・狩猟の場であり、彼らの権利を守り、その生活の維持を保証することにも最大限配慮しています。その伐採方法についても自然を損なわず、地域住民の利益を守るやり方を進めてきました。5年先の利用計画まで地域住民や州政府に事前に説明。翌年の事業計画についてはさらに詳しく情報開示します。森林内に生息する野生動物、渡り鳥、魚類などの調査も継続し、生物多様性や景観の保全にも努めています。 こうした取り組みが認められ、2005年には、アルパックの管理する森林では持続可能な森林管理が行われているとして、FSC(フォレスト・スチュワードシップ・カウンシル)の認証を取得することができました。FSCとは、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも持続可能な森林管理を推進する国際機関です。FSCにはWWF(世界自然保護基金)やグリーンピースを始めとする環境団体や先住民団体、各国政府などが参加しています。認証の取得に先立ち10か月に及ぶ包括的なアセスメントや環境団体及び先住民コミュニティとの対話が行われました。こうした幅広いステークホルダーとのパートナーシップがあってこそ、FSC認証が得られたのです。 これまでに世界70か国以上の国々の9,000万ヘクタールがFSC認証を受けていますが、その中でもアルパックが認定を受けた550万ヘクタールという面積は、単一林区としては世界最大です。北米では近年FSC認証製品の需要が高まっていますが、まさにアルパックは環境意識の高い需要家に支えられています。 ![]() 森の生態系を調査
地域との共存共栄体制
地域貢献活動についても、従業員を通じて地域をサポートするしくみがあります。慈善事業やスポーツ指導など、従業員がプライベートな時間に行う地域貢献活動を、企業として支えています。従業員は、通勤・退勤時や就業中に事故に遭遇すれば救援活動を行いますし、近隣地域への救急車の派遣、火災消火活動への従業員の派遣も行っています。このような取り組みは地域からの高い評価を受けており、従業員の誇りにもつながっています。 「おかげでアルパックにはいい人材が集まってきます。アルパックで働くことに誇りを持った、質の高い従業員がアルパックの競争力の原点でもあります」(斎藤社長) 2007年秋には、カナダの出版社が毎年発表している「働きやすいカナダの職場ベスト100」にも選出されました。 カーボンニュートラルを実現 気候変動対策でもアルパックは一歩先を行っています。木材の運搬で使う燃料を減らすために、一部をトラック輸送から鉄道輸送に切り替えました。工場ではパルプ製造過程で生じる黒液という廃液や近隣の製材工場で発生する木くずを燃料に電力をまかなっています。いわゆるバイオマス発電なので、余剰電力はグリーン電力として地域に販売しています。 1994年から2005年までに、アルパックのパルプ生産量は増加しているにもかかわらず、温室効果ガス排出は47%も削減。パルプ乾燥重量1トンあたりの温室効果ガス排出量は0.16トン - CO2と、従来のパルプ製造に比べて5分の1以下になっています。加えて、アルパックでは2000年ごろから植林事業も開始しました。植林した木々が吸収するCO2は排出したCO2と相殺(オフセット)されます。この分と合わせ、2006年にはアルパック社の事業は「カーボンニュートラル」を実現しました。しかも2020年までに植林面積は2万ヘクタールに及ぶ計画で、これに伴いオフセットするCO2の量は年々増加します。 さらにパルプ製造の過程で出てくるヘミセルロースが、食料と競合しない代替自動車燃料(バイオエタノール)の原料として注目されています。効率的に生産できる技術の開発はもう少し先になりそうですが、将来性を見込んでさまざまな企業・行政関係からのアプローチがあります。貴重な森林資源を最大限生かした新たな産業の可能性に、カナダ政府も大いに期待しています。
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