
資源の開発においては、周辺の生物多様性や森林、水などへの配慮が必要です。また、地域社会が重要なステークホルダーの一つとなります。三菱商事がオーストラリアで進める鉄鋼原料事業は採掘の前も後も、細心のケアで自然環境そして地域社会との共生を果たしています。
資源事業への挑戦

オーストラリア東部クィーンズランド州にあるBMA炭鉱。東京23区の2倍にも及ぶ広大な面積から、高品質の石炭を掘り出しています。BMAの石炭は、全産出量の90%超が製鉄用の原料炭(製鉄の際に鉄鉱石と一緒に高炉に投入し、還元剤として使われるコークスのもとになる石炭)で、日本をはじめ、韓国、ブラジル、インド、ヨーロッパなど世界約30ヵ国に及ぶ需要家に向け供給されています。その量は年間約5,000万トンと世界最大級です。
当社では、1968年に100%子会社である資源投資会社MDP(Mitsubishi Development Pty Ltd)をオーストラリアに設立。同社を通じて原料炭と一般炭(燃料用の石炭)の採掘事業を行ってきました。MDPは2001年に世界最大手の資源会社BHPビリトン社と共同でBMAを設立、クィーンズランドでの大規模炭鉱事業に乗り出しました。この事業の買収に必要とした資金は約1,000億円。巨額投資を行い操業のリスクを負って、自ら原料炭の主要プレイヤーになろうとする本格的な石炭資源事業会社への大きな挑戦でした。

大規模な露天掘りとリハビリテーション

BMAの炭鉱は比較的地表に近い部分に炭層があるため、坑道を掘らず露天掘りが可能です。とはいえ、石炭層までは数十メートルから百メートルを超える土砂を取り除いていく作業(剥土)が必要です。
採炭はまず表土をはがすところから始まります。雨の少ないこの地方では、森林は発達せず、表土は灌木混じりの草原に覆われています。30~40cmの表土を植生ごとはがし、この表土を別の場所に保存しておきます。その後石炭を掘り進めていくと、そこには大きなくぼみが残ることになります。全ての採掘後、このくぼみを、隣接する区域を採掘する際に除去した土砂で埋め戻し、重機などでならします。さらにその上を保存しておいた表土で覆い、採炭前にとっておいた草木や周辺で採取した種子を使って植栽するのです。これがリハビリテーション(自然環境の修復)というプロセスです。もちろん石炭を掘った分は地面の高さは下がりますが、基本的には採炭前の原状にほぼ回復させます。
表土を保存している間も、草木が枯れないように水やりや肥料の補給などの世話をします。また修復後も回復状態をモニターし、草木がしっかりと根付いているか、生きものが戻ってきているかをチェックするのです。BMAでは計画策定、修復作業や調査に当たるために、大学で生態学を学んだ専門家が活躍しています。

HSECを最優先事項として

鉱山事業にあたっては、HSEC(Health、Safety、Environment、Community)、つまり環境や社会、安全衛生への取組みを経営の最重要事項の一つとしています。BMAでは、例えば採掘の過程で必要とする大量の水の持続可能な利用も取組みテーマの一つです。
採炭の過程では大量の水を必要とします。石炭の洗浄に使われる水は、テーリング・ポンドと呼ばれる池に流し込み、数年単位で不純物が沈殿し、上澄み水が上がってくるまで厳しい環境規制の下で管理。その上で水質をチェックし、リハビリテーションや洗炭に再利用しています。雨水や地下水も炭鉱内の複数の場所で貯水し、粉じん飛散防止のためにまく水や植栽への水やりに利用します。もちろん作業員の安全面にも十分に配慮した操業を行っています。BMAは、過去「National Minerals Industry Excellence Awards for Safety and Health」などHSECに関するいくつかの表彰を受けています。
地域と共に生きる

地域社会への貢献面では、MDP 設立当初から地域の道路や電気、水道といったインフラ整備に取り組んできました。BMAでは、従業員が居住する町のインフラ整備を目的とした助成金を地方自治体を通じて拠出しています。また、MDPやBMAでは毎年地域の自治体や大学などに寄附を行っています。例えば、MDPではニューサウスウェールズ大学に寄附講座を持ち、BMAでも大学やスポーツ団体、NGOなどへの寄附を行っています。MDPが西豪州地域で新たな鉄鉱石資源開発に取り組むに当たっては、地域の先住民コミュニティとの関係を構築し雇用機会を提供すると共に、文化遺産を調査したり、先住民文化の継承のためのプログラム提供を行ったりするなどの配慮をしています。地域と共に生きることは、資源ビジネスを行う上で何より心がけなければいけないことだからです。

