三菱商事

Starting Point ~その思いが未来へつながる~

Starting Point ~その思いが未来へつながる~ インドネシアLNGプロジェクト Vol.1 柳のようなしなやかな強さで Starting Point ~その思いが未来へつながる~ インドネシアLNGプロジェクト Vol.1 柳のようなしなやかな強さで

インドネシアに赴任して以来、西村智昌は就寝前の携帯電話チェックが日課になった。緊急事態を知らせるメールや着信がないことを確認すると、ようやく一日の緊張が解けていくのを感じる。

今年3月、三菱商事が45%を出資するドンギ・スノロLNG(DSLNG)社のプレジデントディレクター(社長)に就任した。年間生産量は200万トンと、LNG(液化天然ガス)の市場全体から見れば小さなビジネスだが、特筆すべき点がふたつある。ひとつは、これまで国際オイルメジャーが主導的役割を担ってきたLNGの世界で、ノンメジャーの三菱商事が初のオペレーター(操業主体者)を務めること。もうひとつは、インドネシアの国営エネルギー企業プルタミナ社、同国民間最大手のメドコ社、韓国ガス公社との3カ国・4社による共同プロジェクトであることだ。

国籍も話す言葉も違う、メジャー出身者もいれば現地採用社員も、西村のように株主から派遣された人間もいる現場で、取り扱うのは天然ガス。ささいな誤解や行き違いでも、現場の業務に支障をきたしかねない。「チームとしていかに一体感を持って取り組むか、いつも考えています」。そう語る西村にとって、携帯が鳴らなければホッとする、というのは紛れもない本心だろう。

入社以来、エネルギー畑ひと筋30年の西村が、今も忘れられない光景がある。駆け出しのころ、中国地方のある発電所で、LNGの導入プロジェクトに関わった。初めて燃料が納入される日、緊張した彼の目に映ったのは、近隣住民が笑顔で手を振りLNGを積載したタンカーを迎える姿だった。「まったく予期していなかったので驚きました。自分の仕事で人を喜ばせることができるんだ、誰かの役に立てるんだと、初めて実感した瞬間です」

社長となった今は、スタッフが仕事に喜びを感じられるよう、現場の環境づくりにも気を配る。上から一方的に押し付けるのは柄じゃない。風に揺れる柳のように、柔軟に、しかし芯は曲げず。そんな在り方でいたいと思う。「真面目すぎるくらい真面目に。正直に。自分はそれでいいと思っています」。そうでなければ、暮らしと産業の根幹を支えるエネルギーを安定供給することなどできない。西村の胸には今も、あの日手を振ってくれた人たちの姿がある。

Think Big, Act Honestly

2017年5月7日 朝日新聞「GLOBE」掲載

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