三菱商事

第2回 欧州電力トレーディング

Create the Next ~ 思いが未来を変える

第2回
欧州電力トレーディング

必要な時、必要な量を安価に
クリーンな電力を欧州全域へ

三菱商事グループが世界中で取り組む事業と、そこで奮闘する社員を紹介するシリーズ。第2回は再生可能エネルギーの先進地域、欧州で電力トレーディングビジネスを展開するElectroRoute(アイルランド・ダブリン、以下ER)のファイナンシャル・エグゼクティブとして活躍する田口剛大の挑戦を取材した。

“風力は割高”は欧州では過去の話。クリーンエネの主力だ

電力トレーディングのイメージ

上:“風力は割高”は欧州では過去の話。クリーンエネの主力だ
下:電力トレーディングのイメージ

シェアリングエコノミー広がる 欧州電力市場

環境意識の高い欧州。国によっては風力や太陽光など再生可能エネルギーでの発電分が電力消費の50%を超えるという。デジタル技術の進化とともに、再生可能エネルギー由来の電力を各戸でシェアし、電力市場を通じて余剰分を売電したり、不足分を調達するといったシェアリングエコノミーへの動きも活発だ。

「電気を〝つくる〟だけでなく〝どう融通するか〟という時代を迎えている」。欧州・中東周辺地域で洋上風力などによる発電事業を手掛けるDiamond Generating Europe(三菱商事100%出資、以下DGE)の鈴木圭一CEOは、欧州電力市場で起きている変革の波をこう捉える。「個々の需要家が望む形で直接電力供給できるビジネスモデルへと変えていかなければならない。天候に左右されやすい再生可能エネルギーを、必要な時に必要なだけ手ごろな値段で届けるサービスが求められている」

新たなビジネスモデルに欠かせないのが、電力市場を俯瞰(ふかん)して需給を調整し、需要家に安定的に電力を供給する機能だ。

そこで2016年、三菱商事はDGEを通じアイルランドの首都ダブリンに拠点を構えるERに資本参画した。欧州8カ国の電力市場で電力や送電線の使用権に関するトレーディングを行い、発電事業者と需要家双方に総合的なサービスを提供するベンチャー企業だ。そこに三菱商事から出向しているのが、同社のM&A(合併・買収)にも携わった36歳の田口剛大だ。

ディーリング経験の豊富な人材がそろうER

再生可能エネルギー市場支える 最先端のディーリングを学ぶ

田口は入社以来、太陽電池の原料リサイクルやメガソーラー立ち上げなどに携わってきた再生可能エネルギービジネスの専門家だ。ERではファイナンシャル・エグゼクティブとして連結決算・内部統制対応などの三菱商事とのインテグレーション業務とともに、事業計画の策定をサポートする。IT活用が進んだベンチャー企業に全く違う企業文化を受け入れてもらうといった基盤づくりで苦労もあるが、「最先端の電力市場を土俵に日本では経験できないことが多く刺激的」と語る。

欧州では電力の国際連系線が100年前に築かれ、国をまたいだ市場間での電力融通が早くから行われてきた。例えば大陸側が晴れ、ロンドンは雨というとき、大陸の豊富で低価格な太陽光発電余剰分をロンドンで使うといった電力需給調整が可能になる。

トレーダーは各地の天候などを細かくチェック、需要を予測して電力取引を行う。電力市場の充実、電力融通の歴史がそろった欧州だから可能なビジネスだ。また、価格の変動リスクを避けたいと考える需要家には1~2年先の取引価格を約束することで将来の調達価格を固定することもできる。「優れたトレーダーが集結するERで最先端のノウハウを学び、他地域でも同じようなビジネスを展開できるぐらい日々のオペレーションに精通したい」

現在は電力トレーディングのノウハウを発電所、さらには需要家へ提供するサービスを拡大中だ。「ERは発電所と電力市場、需要家と電力市場を結ぶ中心的役割を果たすため、電力トレーディングとサービスの両輪で変革者になろうとしている。電力ビジネスの最先端で奮闘する田口君への期待は大きい」(鈴木CEO)

新しいビジネスの芽を育てる パイオニアとしての挑戦

再生可能エネルギー導入は世界的流れになっており、UberやAirbnbなどに代表されるシェアリングビジネスへの動きも加速している。

「電力市場を含む様々な業界において個人と個人をつなぐ世の中になっていくだろう。電力業界で実現していくのは容易ではないが、ERはその機を捉えるために業界の先駆者としての第一歩を踏み出している。ここで経験する知見は必ず他の地域やビジネスにも応用できる」と田口は力を込める。

パイオニアとして新しいビジネスに挑戦することは、重責を担う分やりがいもある。電力トレーディング機能は自然エネルギーの普及を支える、社会的、環境的意義の大きな仕事だ。「ベンチャーとして勢いのあるERの成長戦略に、三菱商事のノウハウとビジネス基盤をうまく融合させ、いずれは電力ビジネスの収益の柱になるように新しい芽を育てていきたい」と野心を語った。

取材を終えて

ダブリン郊外の丘に立つ風力発電施設を取材した。ここでつくり出す電力が英国や大陸にも融通され社会生活を支えていくことに思いを巡らせた。クリーンエネルギーの活用を支える電力トレーディングにサステナブルな未来への息吹を実感した。いつまでも暮れないダブリンの夜。ギネスの杯を重ねるにつれ田口さんは冗舌になる。先兵として出向した苦労と誇り、そして世界を視野に入れた夢を存分に語ってくれた。

2018年5月31日 日本経済新聞掲載広告
企画・制作=日本経済新聞社クロスメディア営業局

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