特集1「明日のエネルギーを創り出す」
サステナビリティレポート2008

新エネルギー・環境分野の事業を統合
21世紀は「環境の世紀」。地球温暖化を始めさまざまな環境問題あるいは資源問題が、人類の前に立ちはだかる中、そのソリューションを提供するため、三菱商事が2007年4月にイノベーション事業グループ内に立ち上げたのが新エネルギー・環境事業本部です。従来イノベーションセンター、エネルギー事業グループ、金属グループ、機械グループなどに分かれて取り組んできた環境ビジネスを統合しました。
新エネルギー・環境事業本部は4つのビジネスユニットで構成されています。新エネルギー事業第一ユニットでは、太陽電池、燃料電池などの事業に、新エネルギー事業第二ユニットではバイオマス燃料事業に取り組み、排出権事業ユニットでは京都議定書の下でのCO2など温室効果ガス排出権関連事業、環境・水事業ユニットでは国内外における上下水道事業や資源リサイクル事業を手掛けています。


総合商社としての強みを活かす
新エネルギー・環境事業本部のビジネスの第一の特徴は、さまざまな事業を手掛ける総合商社としての強みを活かした事業展開を進めていることです。例えば排出権ビジネスは、2005年の京都議定書の発効に伴って成立した全く新しいビジネス。しかし三菱商事では1990年代後半からこの分野の可能性に着目し、世界銀行炭素基金に参加したり、排出権などの取引仲介を手掛けるナットソース・ジャパン(株)を共同設立するなど、イノベーションセンターと機械グループを中心に情報収集やビジネス手法の開発を進めてきました。元々は排出権そのものの売買を扱うイメージが強かった排出権ビジネスですが、当社では、お客様のニーズを受け、調査から事業提案、プラントの建設やファイナンスといった一連の事業すべてを手掛け、そこから出てくる排出権を販売するというビジネスモデルを確立しています。排出権の販売先も、従来からのお客様である電力会社やメーカーが中心なので、そのニーズをいち早く把握することができます。このように世界各地にネットワークを張り巡らせている当社の総合力がフルに発揮されています。
地球環境に貢献するバリューチェーン
バイオマス燃料においても、燃料の売買だけではなく、自ら製造を手掛けるサプライヤーを目指しています。太陽光発電事業もこれまでの太陽電池モジュールを売るだけのビジネスから、“川上” においては原料の調達、“川下”においては太陽光発電事業と、総合的なビジネス展開を目指した活動を進めています。すなわち原料から最終製品、関連したビジネスへと、環境分野でもバリューチェーンの構築を進めながらビジネスモデルの開拓をしていくことがもうひとつの特徴となっています。
新エネルギー・環境事業本部のビジネスは、ビジネスそのものが地球環境を改善していくことにつながっています。いわば、利益の追求と地球環境への貢献が両立できるビジネスといえます。今後人口が増加し、地球環境問題や資源問題がますますクローズアップされる中、持続可能な社会構築のためにビジネスも大きく変革を求められるでしょう。その中で、新エネルギー・環境事業本部は、地球のキャパシティに合った総合的なソリューションを提供する重要な使命を担っています。今後も既存事業で培った信頼、経験とネットワークを強みとし、地球規模で先進的、包括的な事業に取り組んでいくつもりです。
太陽光発電の仕組み

太陽光発電は、温暖化ガスを排出しない100%クリーンなエネルギーで、化石燃料のように枯渇の心配なく利用できるという大きな特徴を持っています。また、場所の制約を受けにくいため、需要地で発電することも可能で、化石燃料に代わる次世代エネルギーとして期待されています。
太陽光発電の仕組みは、半導体中の原子に太陽光が当たったときに電気が発生する現象(光電効果)を利用して、太陽光エネルギーを直接電力に変換するものです。太陽光エネルギーを電力に変換するための装置が太陽電池で、使用される半導体には、大きく分けてシリコン系と非シリコン系(化合物系等)があります。シリコン系の半導体には結晶系と非結晶系があり、最も広く普及しているのは結晶系シリコンで、単結晶シリコン型と多結晶シリコン型があります。
助成制度が太陽光発電市場を一気に拡大

2006年時点での太陽光発電導入量※は、累計約5.7GW(2006年度の単年導入量1,515MW)となりました。国別では2004年まで日本がトップでしたが、2005年以降、ドイツがリードしています。ドイツでは、1990年代後半から太陽光発電の導入が本格化し、2004年に施行された新・再生可能エネルギー法により、太陽光発電設備で発電した電力を高く買い取る制度「フィードイン・タリフ」が改善され、20年間という長期にわたる優遇価格での電力の買い取りが保証された事もあり、急成長を遂げました。今後も、太陽光発電設備への投資がさらに進み、太陽光発電導入量の一層の増加が見込まれます。
ドイツに続いて導入量が多いのは、日本、米国、スペインの順位になります。スペインでは、2007年6月に施行された新しい「フィードイン・タリフ」の導入効果により、太陽光発電市場が急速に拡大しています。また、日照量も豊富で、同様の普及策が施行されているフランス、イタリア、ギリシャなどでも太陽光発電の普及が期待されています。
全世界における2025年までの長期予測では、累積設置量が432GW、単年導入量は55GWまで増加すると見込まれています。ただ、現時点での発電コストは40円/kWh程度と、まだ割高であるため、今後は大幅なコスト改善が課題です。今後、欧州を中心とした市場拡大が予想される中で、発電コストの低減や技術開発の発展など、普及に向けた業界各社の動向に注目が集まっています。
※国際エネルギー機関(IEA)の太陽光発電システム研究協力実施協定(IEAPVPS)参加国における導入量
原料不足の解消が課題
2006年の世界の多結晶シリコン(ポリシリコン)生産量は約3万9,000トンで、そのうち太陽電池市場では約1万6,000トンが使用されたと推定されます。欧州をはじめとする太陽光発電普及策の効果もあり、急激に需要が拡大しているため、2004年以降、太陽電池の主原料であるポリシリコンの供給不足が顕著になってきています。そのため、シリコンの使用量が少ないアモルファスシリコン型(非結晶系)太陽電池や、シリコンを使用しない化合物系太陽電池などの開発導入が進んでいます。またシリコン原料メーカーの生産設備の増強実現や新たなシリコン製造技術の開発など、業界を挙げて原料不足解消の努力が行われています。
欧州において大型太陽光発電事業への進出を検討

太陽光発電は、温暖化対策に有効なことから世界中で大きく需要が伸び、年率30%を超える成長を続けています。最近では欧州、特にドイツやスペインを中心に、多くの太陽電池を地上に並べた“太陽光発電所” の建設が進んでいます。
このような市場の動きの中、三菱商事においても、欧州での太陽光発電所の買収を含めた、本格的な太陽光発電ビジネスへの進出を検討しています。
事業の経験をてこに世界展開を
これまで当社は、太陽光事業において、主に太陽電池セル・モジュールの欧州・米国市場向け輸出取引を手掛けてきました。新エネルギー事業第一ユニットでは、原料調達から太陽電池セル・モジュールの販売、発電ビジネスまで、バリューチェーン全体におけるビジネスの構築に向けた事業戦略を描いています。また、有望パートナーとの協業・関係強化により太陽光発電プロジェクトの開発やエンジニアリング、さらには発電事業者としての知見を取得する事により、欧州市場だけでなく、今後市場拡大が見込まれる米国や中東、東南アジア市場への足がかりとしたいと考えています。

原料調達や新技術の開発にも取り組む
現在の太陽電池の主流は、結晶系シリコン太陽電池です。ここ数年、太陽電池の原材料となるポリシリコンやシリコンウエハの不足から、世界的な需要の高まりに対して生産・供給が十分にできない状況が続いています。当社では、太陽光発電ビジネスの順調な成長に向けてシリコン原材料の安定供給を目指し、原料分野におけるパートナーとの協業や、新技術への支援・投資も行っていきます。
また、発電効率を高める技術として、岡本硝子(株)と共同で特殊反射鏡及び特殊レンズの開発にも取り組んでいます。
このように、当社は太陽光発電コストの低減や新たな需要創出を図り、健全で持続的な市場成長に貢献したいと考えています。




