SELLCの持分引受をロシア政府に申請し、2022年8月31日付で同申請が承認されたことにより、当該LNG関連事業に対して引き続き10%持分を有しています。当該LNG関連事業への投資に関する経済的実質に重要な変化はないことから、SELLC宛て投資の認識に当たっては純損益の認識を行わず、SEIC宛て投資に関して認識していたその他の資本の構成要素をSELLC宛て投資に関するその他の資本の構成要素として継続して認識した上で、SELLC宛て投資をその他の投資(FVTOCIの金融資産)として会計処理を行っています。 会社定款及びSELLCの出資者間協定書の条件など事業運営に係る詳細については、新たな出資者への持分移転手続きが完了し、SELLCの出資者構成が確定した後に協議する必要があり、当該投資に係る不確実性は依然として継続しています。連結会社は、当該状況を勘案し、確率加重平均による期待現在価値技法を用いたインカム・アプローチで当該投資の公正価値を測定しており、測定に用いる割引率はロシアのカントリーリスクプレミアムを考慮した上で決定しています。SELLCへの投資を通じて当該プロジェクト期間にわたる配当収入を見込む一方、その他シナリオも加味し、2022年度末における当該投資の公正価値(レベル3)を83,210百万円として測定し、2022年度において60,185百万円のその他の包括損益の減少(税前)を認識しています。 なお、2022年度末以降に、2023年4月11日付のロシア政府令(第890号)によって新たな出資者の決定が承認されました。連結会社は、上記の公正価値に対してこの決定による影響はないと判断していますが、今後の更なる状況の変化により、その他シナリオで加味してきた不確実性が一部解消することで、確率加重平均による期待現在価値技法に用いるシナリオを再評価する必要があり、これによりSELLC宛て投資の公正価値は増加又は減少する可能性があります。 (2)気候変動による影響 気候変動及び脱炭素社会への移行による連結計算書類への影響は、非金融資産の減損、金融商品の公正価値、有形固定資産の耐用年数、資産除去債務等の会計上の見積りにおいて考慮されています。連結会社が2021年10月に策定した「カーボンニュートラル社会の実現に向けたロードマップ」は、パリ協定等で示された国際的な目標達成に貢献することを目指して策定されており、外部機関が公表するパリ協定に沿った脱炭素シナリオはこれらの会計上の見積りにおける重要な参照情報の一つとなります。一方で、脱炭素シナリオは需給等に関する市場全体の傾向を仮定するものの、連結会社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と連結会社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、脱炭素シナリオを用いたシナリオ分析では数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、連結計算書類における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。そのため、仮に脱炭素シナリオ分析において、連結会社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の兆候が示された場合にも、それらが直ちに連結計算書類における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りの設定においては、脱炭素シナリオに加え、連結会社の方針、各国の政策、外部機関の分析結果、及び各事業における固有の状況等を総合的に勘案し、合理的な見積りを行っています。ただし、将来における気候変動リスクに対する連結会社の戦略の変更や世界的な脱炭素化の潮流の変化は、これらに重大な影響をもたらす可能性があります。 連結会社では、気候変動関連のリスク及び機会が連結会社の事業に与える影響や事業戦略のレジリエンスを検討する一環として、地球温暖化を産業革命前に比べて1.5度以下に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)を用いたシナリオ分析を行っています。同シナリオ分析におけるリスクサイドの分析対象事業として、気候変動の移行リスクが高く、かつ資産規模が特に大きい天然ガスセグメントのLNG関連事業、及び金属資源セグメントの豪州原料炭事業が選定されています。 LNG関連事業については、1.5℃シナリオ下において天然ガス・LNGの市場全体の需要は不透明性がありますが、連結会社のLNG事業の戦略地域であるアジアでは長期にわたり一定程度の需要が想定されています。公正価値測定及び減損又は減損の戻入の兆候判断を含む減損テストにおいては、既存のLNG事業における生産量の大部分を占める長期販売契約、及びその他のスポット契約等の動向予測に基づき、将来のキャッシュ・フローを見積っています。 豪州原料炭事業については、1.5℃シナリオ下においても、インドや東南アジア等新興国の需要に下支えされ、一定の需要が継続する見込みです。鉄は、脱炭素化に必要なインフラ整備にも不可欠な基礎素材として引き続き堅調な需要が見込まれる一方、新たな脱炭素製鉄法が世界的に普及するまでには相応の時間を要することが想定されます。このため、今後数十年にわたる移行期間においては、原料炭を用いる高炉製鉄が主流であり続け、高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献する高品位原料炭のニーズが高まる見込みです。豪州原料炭事業では高品位原料炭を主に生産しています。なお、リスクサイド分析対象事業の選定基準である資産規模につき、豪州原料炭事業における100%出資子会社のMitsubishi Development Pty Ltdの固定資産帳簿価額は994,604百万円となっています。上記の1.5℃シナリオの実現には多くの不確実性を含みますが、当該シナリオ下においても一定の需要が継続する見込みとなるた27
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