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Create the Next(CCUタスクフォース)

CCUタスクフォース
CO2の循環利用へ グループ横断で挑む

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世界規模の社会課題であるカーボンニュートラル社会の実現に向け三菱商事は、2021年10月、カーボンニュートラル社会へのロードマップを発表した。

ロードマップでは、温室効果ガス削減目標として30年度半減(20年度比)・50年ネットゼロを掲げ、30年度までに2兆円規模のEX(エネルギートランスフォーメーション)関連投資を実行、EXとDX(デジタルトランスフォーメーション)の一体推進による新たな未来社会の創造を目指す、と示した。その推進を支える新技術と位置付けているのがCCU(CO2の有効利用 = カーボンリサイクル)だ。

三菱商事では幅広い産業と接点を持つ商社の強みを生かしたグループ横断型の「CCUタスクフォース」を立ち上げ、CO2循環利用の事業化を目指す。今回は、脱炭素化の先頭に立つ気鋭のプロジェクトチームにスポットを当てた。

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世界で培った知見結集 自発的チャットが端緒

工場などで排出されたCO2を原料に燃料をつくる。コンクリートに封じ込める。他の用途に再利用する──。脱炭素社会実現に向け、単にCO2の排出を抑えるだけでなく、CO2を「資源」ととらえることで、新たな活用法、新たなビジネスの創出を目指す期待の技術がCCUだ。日本では「カーボンリサイクル」とも呼ばれ、現在、燃料、建築用材料、化学繊維など様々な分野で、CO2を原料とした製品・研究開発が進められている。

三菱商事が環境保全と事業性の両面からその将来性に着目、立ち上げたのがCCUタスクフォース。もともとは脱炭素に関心を持つ若手社員たちが意見交換の場として自発的に始まったチャットが原点。それを会社肝いりの先進部隊として再編成し、多様な部署のメンバーからなるグループ横断型プロジェクトチームに発展させた形だ。

「脱炭素は、今や世界共通の課題。それを実現するためには、EV(電気自動車)に代表される電化や電源の脱炭素化など、多方面からのアプローチが求められる。CCUも施策の一つとして、多様な取り組みが必要だ」。金属資源グループから参加したメンバーの一人、辻悠介(写真内左から2人目)は「脱炭素=総合格闘技」と表現する。

「三菱商事は商社として多くの産業と接点を持つ。世界を舞台に培った知識や経験は深く、幅広い。聞きたいことがあれば、社内各所にいる専門家に電話一本でつながる。タスクフォースでは、そうした広範な分野で活躍する専門家が最前線の情報や知識を持ち寄り、互いに見識を深め合うことで事業を育てていきたい」

脱炭素ビジネス推進のうねりは今や会社全体に広がりをみせる。きっかけとなったチャットは800人を超える社員が参加する一大コミュニティーに成長し、脱炭素分野で三菱商事が存在感を発揮する原動力になっている。

COP26会場でもCCU技術を展示

環境配慮型建材を開発 将来の有望市場へ先手

三菱商事が現在進めているCCUの取り組みは「建材系」と「燃料化学系」の2つ。中でも、コンクリート生産にCO2を活用する建材系に現在、チームとしての軸足を置いている。建材系は需要規模が大きいためCO2削減効果も大きく、また水素を使わないため、燃料化学系に比べ事業化が早く進むと見られるためだ。燃料化学系については、グリーン・ブルー水素開発の進展を見ながら中長期的に進める事業分野と位置付ける。

具体的な事業化の動きも始まっている。その一つがカナダ・カーボンキュア社との資本業務提携だ。同社の技術は、焼成過程で排出するCO2を回収してセメントに注入、化学反応でカルシウム結晶をつくりCO2を固定化する仕組み。コンクリートの強度が高まるうえ、製造コストも従来と変わらないなどの利点を持つ。同社と共同で地球環境に配慮したコンクリート生産手法の確立を目指す。

コンクリートは安価で便利な建築材料として広く用いられる一方、製造過程で大量のCO2を排出、社会活動に関わる全CO2排出量の約6%を占めるとされる。このため低炭素コンクリートを使用した「グリーンビルディング」は欧米での需要が急拡大しており、カーボンキュアの他に米国・ブループラネット社との協業も推進中だ。

国内企業とのタイアップも進む。21年11月に英国で開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)。この展示会場にタスクフォースのメンバーが出向き、日本発の環境配慮型コンクリート「CO2─SUICOM」を紹介した。特殊な混和剤を使い、CO2の発生源であるセメントの使用量を低減。さらにCO2を別途吸収・固定化することで排出量をゼロ以下にできる。すでに建物や道路、縁石などに使用され、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の公募委託事業にも採択されている。

「CO2の有効利用は夢のような技術と思われがちだが、大量かつ安価に製造できる方法を確立できれば、環境改善と市場創出を両立できる」と辻は強調する。

事業性についても確かな手応えを感じている。IEA(国際エネルギー機関)のリポートによると、CCUS(Sは貯留)の市場規模は30年までに約10億トン、50年までに50億トンになる見通し。仮にCCUがこの1割としても、兆円単位のビジネスが生まれると予測。「脱炭素市場が広がる中、そのためのソリューションを提供することは、あらゆる産業に接点を持つ三菱商事の重要な責務であり、その先に大きな商機があるはずだ」

眼前には、壮大なブルーオーシャンが広がっている。

2022年3月4日 日本経済新聞掲載広告

企画・制作=日本経済新聞社コンテンツユニット