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DXの最前線で奔走、位置情報で変革を生み出す

DXの最前線で奔走、位置情報で変革を生み出す

DXの最前線で奔走、位置情報で変革を生み出すDXの最前線で奔走、位置情報で変革を生み出す

三菱商事の現場の最前線で、若手・中堅社員が何に着眼し、何を考え、どうアクションをしているのか。DX推進の起爆剤にもなり得る位置情報サービスを活用し、産業やビジネスの変革につなげようと奮闘する社員の挑戦に迫ります。

プロフィール


増池乾人

増池乾人(ますいけ・けんと)

2017年入社。IT部署での業務を経験後、19年からデジタル戦略部。20年からは全社横断のDXタスクフォースにも加わり、世界中で位置情報サービスを提供するHERE Technologies社との協業に取り組む。

チャレンジは、まさかの一言から始まった

2019年、急激に進むデジタル化に対応するべく新設されたデジタル戦略部に、一期生として配属されました。そこで私に課せられたミッションは、三菱商事が参画を検討していた位置情報サービスのリーディングカンパニー「HERE Technologies社」(以下、HERE)のポテンシャルを見極め、社内外のパートナーの理解を得ること。最初の一歩として、まず向かったのがインドネシアです。アジア大洋州はHEREが市場開拓を狙う地域。三菱商事が幅広く事業を展開するインドネシアで、HERE活用の足掛かりをつかもうと考えたのです。

約2カ月間、三菱商事の現地拠点の協力も得ながら、事業会社や現地企業にHEREの実力や優位性を説明して回り、具体的な活用策を模索する日々を過ごしました。しかし、ポジティブな反応もある一方、最大限分かりやすく伝えたつもりでも、なかなか前向きな検討につながらない。3歩進んで2歩下がる、といった感覚に一抹の不安を覚えていました。

※位置情報サービスの最先端企業で、1985年に米国・シリコンバレーで創業。北米と西欧のカーナビ搭載車のうち80%がHEREのデジタルマップを採用。また、位置情報サービスを使い、運送、物流、都市交通、マーケティングなどの分野で人や物の移動に関する事業を展開する。

HEREとの協業模索に奔走する毎日。インドネシア・ロンボク国際空港にて

数か月後、その不安が現実のものに――。現地事業会社と連携してPoC(アイデアやコンセプトの実現可能性や効果を検証すること)を進めるはずが、計画が白紙になってしまったのです。「HEREの実力が分からない。そもそもHEREの技術を使って大丈夫なのか」。私たちプロジェクトチームと現地の温度差を目の当たりにした瞬間でした。

HEREの実力を証明せよ

一晩どっぷり落ち込みましたが、翌日からは気持ちを切り替え、HEREの真価を証明するミッションに取り掛かりました。認知度の高い既存のサービスと比較して検証し、HEREの優位性をわかりやすく示すための実験に着手したのです。

必要なのは地図とアルゴリズム両面での評価です。まず、地図としての評価項目を洗い出し、情報の正確性、新鮮さ、量、カバレッジの4項目に絞り込みました。検証のために既存サービス同様の仮アプリも開発。開発の方向性を月曜に決めて週内に突貫でアプリ開発を進め、翌週からはHEREと既存サービス、それぞれの地図アプリを手に2台の車に乗り込んで検証を開始しました。

手作りのHEREマップ(右)

「ヨーイ、ドン」で、ジャカルタの中心部から数十キロ離れた工業団地まで往復。アプリを頼りにどちらの車の方が早く到着できるか、検証を繰り返しました。5分おきに記録を取り、渋滞予測やルーティングの精度を確認。地図上の目標物のピン位置の正確性や、新規店舗の情報が盛り込まれているかもチェックしました。毎週、検証とアプリのアップデートを繰り返す中で、HEREの実力に確かな手応えを得ることができました。

この検証レポートを手に、社内や事業会社にHERE活用を再提案。自らの頭と手と足で稼いだ肌感覚と検証を重ねたレポートの甲斐あって、HEREが既存サービスと双璧をなすデジタルマップであること、一部の検証項目ではより優れた性能を持つことなど、その真価を理解してもらえるように。「HEREの等身大の実力が分かった」と評価いただき、具体的な案件検討につながるなど、ブレークスルーになったと感じています。

社会にインパクトを与えられる仕事を

HEREへの理解を広げ事業開発に奔走する中では、時に厳しい言葉を掛けられることもありました。そんな時でも、三菱商事に入った時から抱いている「社会にインパクトを与えられる仕事をしたい」という思いが支えになりました。川上から川下まで産業のタテの幅、10の営業グループがカバーする産業のヨコの幅を掛け合わせた面積の大きさは、三菱商事ならではの特長。リアルワールドでの確かな知見にデジタルという新たな軸を掛け合わせてこそ、社会的インパクトのあるビジネス変革を起こし、本当に社会のためになる事業を生み出せると思いますし、そこに大きな魅力、面白さを感じています。

そのために必要なのは、あらゆる産業においてデジタル活用を進めることです。幅広い産業と接点を持つ三菱商事だからこそ実現できるDXがあり、位置情報はその起爆剤になり得るもの。HEREとの協業は絶対に形にしたいと思っています。一方で、今の自分にはまだ現場知見が十分あるわけではありません。産業、ビジネスの現場に身を置き、深く理解することの重要性も感じており、現場で泥臭く知見を蓄え、将来的にはデジタルとビジネス知見、その両方を掛け合わせて事業を構想できる人材を目指していきたいと考えています。

物流、都市交通、スマートシティ 期待されるHEREの技術

私たちプロジェクトチームでの検証も経て、三菱商事は20年5月、HEREに資本参画しました。HEREとの協業テーマは多岐にわたりますが、私が主に取り組んできたのは物流やスマートシティ、アジア・大洋州地域での協業です。中でも物流業界はHEREの技術活用が期待される分野。例えば、荷物を載せる荷役台「パレット」は、運搬の度にある程度の紛失が当たり前とされ、年間何百万枚という損失が見過ごされてきました。しかし、パレット1枚1枚に位置情報デバイスを搭載すれば、パレットの位置や動きをリアルタイムで把握でき、輸送業務の効率化や紛失防止に役立てることができます。物流の最適化はコスト削減だけでなくCO2排出削減など低・脱炭素面においても重要です。最初の一歩を踏み出したばかりの構想ですが、物流全体で付加価値のあるサービス展開を国内外で模索しています。

また、都市交通やスマートシティの分野でも、インドネシア・ジャカルタ郊外で進む都市開発事業において、データを活用したデジタルマーケティングでのHERE活用を検討。「AI・IoTデータプラットフォーム」「モビリティー」「都市アプリ」といったさまざまな分野での活用を視野に入れています。

HERE及びプロジェクトメンバーと

位置情報を、あらゆる産業やビジネスの起爆剤に

モノが物理的に存在すれば、そこに位置という概念が必ず出てきます。全てのモノの基盤となる位置情報は、あらゆる産業やビジネスに変革を起こす起爆剤となる可能性を秘めています。移動情報の蓄積(ヒストリカルデータ)が、例えば交通渋滞緩和の打ち手につながるなど、活用の範囲も多岐にわたります。

HEREとの協業は、三菱商事のデジタル戦略の第一歩であり、手段の一つ。事業の現場を通じて得られる知見や経験に加え、DXによる価値向上の可能性がある事業が数多くあることこそ、三菱商事の強みです。今後も、営業の現場とデジタル部署・全社横断のDXタスクフォースが両輪となり、社会にインパクトを与えられる事業を共に構想していきたいと考えています。

<位置情報で社会課題の解決へ― HEREとの協業テーマ:まとめ>