世の中の〝いま〟が分かる 時事ワード、いちから解説!
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キーワードから社会の動きを読み解き、分かりやすく解説します。
第1回 「カーボンニュートラル」とは?
- カーボンニュートラルの基礎知識
- 日本や世界での取り組み
- 実現のための新しい技術
カーボンニュートラルってなに?
二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスの「排出量」から、「吸収量」や「除去量」を差し引き、実質ゼロになる状態のこと。カーボンニュートラル実現には、まず温室効果ガスの排出量を削減することが重要です。その上で、削減し切れない排出量については、森林などでの吸収量や、CO2を地中に貯留する技術などを活用した除去量を差し引き、実質ゼロを実現します。
そもそも温室効果ガスってなに?
CO2やメタン、一酸化二窒素、フロンガスなど、地球の大気中に含まれ、赤外線を吸収して再び放出する性質を持つ気体のこと。この性質により、太陽光で暖められた地表から地球の外に向かう赤外線の多くが熱として大気に蓄積され、再び地表に戻ってきます。大気中の温室効果ガスが増えるとこの効果が強まり、地球表面の温度が高くなります。
なぜCO2が注目されるの?
日本で排出される温室効果ガスのうちCO2が約9割と、高い割合を占めています。世界の大気中のCO2濃度は増加傾向にあり、工業化(1750年ごろ)以前に比べて4割以上増加しているとされています。
CO2はどんなところから出るの?
日本で排出されるCO2の約9割は、燃料の燃焼や供給された電気や熱の使用に伴うエネルギー起源のCO2です。
このまま何もしなかったらどうなる?
工業化以降、人為的な活動により、世界の平均気温は2017年時点で約1℃上昇。有効な対策を取らなかった場合、21世紀末の世界の平均気温は、2.6 ~ 4.8度上昇すると言われています。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)※1の報告書は、気温上昇を1.5℃※2に抑えることは不可能ではないとした上で、そのためには社会のあらゆる面において前例のない転換が必要だと指摘。30年までにCO2排出量を45%削減(10年比)し、50年ごろには実質ゼロにすることが必要だとしています。
※1 気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)
気候変動を評価する主要な機関。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立され、気候変動の状態と、それが経済社会に及ぼす影響について科学的見解を提供する。
※2 同報告書では、気温上昇を1.5℃に抑えられた場合、パリ協定が目指す2℃未満の気温上昇と比べ、熱波や豪雨、海面上昇などのリスクが減り、生物多様性の低下、食糧の減産などへの影響が少なくなるとしている。
気温が高くなるとどうなるの?
気温が上昇すると、私たちの暮らしや自然環境に大きな影響を及ぼします。
例えば…
世界はどう取り組んでいるの?
パリ協定
パリ協定は、2015年に取り決められた、20年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みです。先進国、開発途上国を問わず、世界全体で温室効果ガス削減に取り組むとしています。
パリ協定が掲げる目標の達成に向け、2021年4月時点で、
世界125カ国と1地域が「2050年カーボンニュートラル」を表明しています。
例えば…
日本の取り組みは?
日本は2020年10月、「2050年カーボンニュートラルの実現」を宣言しました。実現に向け、再生可能エネルギーの活用を進め、50年には発電量における再生可能エネルギー比率を50~60%にまで高める方針を示しています。さらに、産業における14の重点分野を定め、取り組みを加速するとしています。
例えば…
取り組みは企業でも
世界中の企業がカーボンニュートラルの目標を掲げ、取り組みを推進しています。
日本でも200社以上の企業がカーボンニュートラルを宣言しています。(21年8月時点)
どんな技術が注目されているの?
カーボンニュートラルの実現に向けて、世界中で新たな技術の開発や事業化が進んでいます。
三菱商事もさまざまな事業を通して、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
例えば…
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再生可能エネルギー
風力や太陽光、水力、地熱などの自然エネルギーを活用する再生可能エネルギーは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時にCO2をほとんど排出しないことから、カーボンニュートラル実現に向けて大きな役割を果たすことが期待されています。
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CCUS
CCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)は、発電所や工場などから排出されるCO2を分離して回収し、有効利用(CCU)、または貯蔵(CCS)することを指します。CO2の排出を抑えるだけでなく、資源として活用する技術として注目されています。
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水素
発電や燃焼時にCO2を排出しない水素は、次世代のクリーンエネルギーです。多様な資源から製造することができ、例えば水に電気を加えることでも作り出すことが可能です。電気分解に再生可能エネルギーを利用し、製造過程でもCO2を発生しない「グリーン水素」など、さまざまな取り組みが進んでいます。
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燃料アンモニア
アンモニアは燃焼時にCO2を排出せず、石炭や天然ガスなどの代替燃料として、既存の火力発電設備での燃焼が可能なことから、水素と並び、次世代のクリーンエネルギーとして注目が高まっています。アンモニアの製造段階で発生するCO2を回収・貯留することで、CO2フリー化の実現も期待されています。