コロナ禍で投資計画に暗雲 情熱のバトンで突破口を切り開く
コロナ禍で投資計画に暗雲
情熱のバトンで突破口を切り開く
2016年入社。自動車・モビリティグループ 自動車事業本部所属。
語学力を活かし、新興国の成長に貢献したいとの思いで三菱商事に入社。入社後はインドネシアでの自動車事業を担当し、販売金融会社やディーラーなど現地事業会社の管理を担当。2021年度から中国の事業会社にグローバル研修生(*)として派遣。
(*)グローバル研修生…若手社員を対象に、海外での実務研修、海外のビジネススクールへの派遣、世界各国の文化と言語を習得するための語学研修を実施。年間100人前後を派遣。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/resource/training.html
注:新型コロナウイルス感染対策のため、密を避け、換気などに十分配慮して取材撮影しています。
信頼関係の危機
「自分が起爆剤になる」
入社以来、海外での自動車事業を担当しています。特に印象深いのは、2020年10月から担当した、インドネシアのディーラーへの投資案件です。三菱商事は同国で50年以上自動車事業に取り組んでいますが、より消費者に近い事業分野を強化するため、この会社へ増資する計画でした。ところが、長引く新型コロナウイルスの影響で投資環境が悪化し、計画が頓挫しかける事態となったのです。
コロナ禍とはいえ、一度は決定した増資が停滞したままでは信頼関係にもひびが入りかねません。担当を引き継いだばかりでしたが、危機感を募らせ、「自分が起爆剤になって状況を打破するしかない」と決意しました。複雑なスキームや交渉経緯を把握するべく資料を読み込み、過去の担当者に話を聞いて回り、社内の説得を開始しました。しかし、なぜ今増資が必要なのか、という意義が思うように伝わりません。「熱意が感じられない」という厳しい言葉にショックを受けたこともありました。
投資の世界に絶対の正解はありません。計画の妥当性や実現可能性をきちんと説明するのは大前提ですが、最後は担当者の熱意が動かす部分もある。東京という離れた地にいながらも、自動車事業にさまざまな立場で携わる駐在員から話を聞く中で、事業の成長性や増資の必要性に手応えを感じていました。何よりこの会社に出向している駐在員の熱い想いが後押しとなり、これ以上の投資先はない、という確信を持っていました。この情熱をいかに伝えるか――。駐在員やチームメンバーが一丸となり、考え得る限りのアイデアを出し合いました。
中でも大切にしたのが、「仲間を増やす」ことです。私が駐在員から熱い想いを受け取ったように、社内に想いを共有し、熱意をバトンタッチしていく。正解もなく、一人で決断できることではないからこそ、仲間を増やしていくことが重要だと感じました。並行して資料のブラッシュアップや伝え方にも創意工夫を重ね、約2カ月にわたる奮闘の末、投資決定にこぎ着けることができました。駐在員から託された想いを実現できたことは本当にうれしく、涙が出てきたことを覚えています。その時に掛けられた「君の情熱が伝わったね」という言葉は、私にとって忘れられない宝物となりました。
本音のコミュニケーションで
周囲を巻き込む
投資の決定までには正直「もう駄目だ」と心が折れかける瞬間もありました。しかし、想いを共有する仲間に幾度も助けられ、最後までやり遂げることができ、大きな成長につながりました。この経験で得た実行力や周囲を巻き込む力は、国内外問わず、どこにおいても大切なスキルだと感じています。
周囲を巻き込むには、熱意はもちろん、人間的な魅力も重要です。そのために、壁をつくらない、本音のコミュニケーションを心掛けています。仕事では意見の違いは当たり前ですが、より良い結果のため、という思いは同じ。軸をしっかり持ち、本音で意見をぶつけ合う中で自分の考えや人となりを知ってもらうことが、周囲を巻き込み、仲間を増やしていくことにつながるのだと信じています。
春からは中国・上海で、初めて事業現場での研修が始まります。出身地の上海は、1990~2000年代に急激な経済成長を遂げました。目覚ましい勢いで発展する街を目の当たりにし、自分も新興国が変わっていく力になる仕事がしたいと思うようになりました。日本への留学をきっかけに三菱商事に入社しましたが、人々の生活を豊かにしたいという目標に向けて仕事ができることに、大きなやりがいを感じています。
自動車は人々の生活に欠かせない移動手段であり、自動運転やオンデマンド交通などのモビリティサービスは、生活の利便性向上につながる新たな成長分野です。自動車という切り口でさまざまな事業に挑戦し、豊かで利便性の高い社会づくりに貢献していきたいと思っています。