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3カ月で挑んだ現場改革 熟練工を動かしたデータ分析と熱意

3カ月で挑んだ現場改革
熟練工を動かしたデータ分析と熱意

鄭 在皓鄭 在皓

2015年入社。総合素材グループ 素材事業開発部所属。

幅広い産業と対面しスケールの大きな事業に携わりたいと三菱商事に入社。入社後は、炭素素材のトレーディング業務や自社船のオペレーション業務などを担当。2019年のインドでのグローバル研修を経て、帰国後は韓国の事業会社を担当し、今後出向予定。

注:新型コロナウイルス感染対策のため、密を避け、換気などに十分配慮して取材撮影しています。

エラーはなぜ起きるのか、
データ分析で実態に迫る

エラーはなぜ起きるのか、データ分析で実態に迫るエラーはなぜ起きるのか、データ分析で実態に迫る

 
 

2019年、グローバル研修生(*)として、インドにある事業会社に3カ月間派遣されました。同社は、日本の技術を取り入れ、建設機械向けの鋼板を加工、販売しており、建設需要が拡大するインドで高い競争力を持っています。ものづくりの現場に入り込むのは初めての経験でしたが、3カ月間という短期間で、派遣された社員ならではの新鮮な視点で現場改革の提言をするという目標を掲げ、日々挑戦を重ねました。

ものづくりの現場では、どれだけ気を付けていても一定の頻度で品質不良が発生します。そこで、現場で蓄積されたデータを定量的に分析すれば解決の糸口がつかめるのではないかと考え、検証に取り組みました。特に注目したのは、ヒューマンエラーの解消です。これまでに発生したエラーをカテゴリーごとに分類し、そこに現場社員の熟練度を掛け合わせて分析してみたところ、両者の相関性が見えてきたのです。

データ分析で導き出された仮説を検証すべく、作業員、中でも特に熟練工に直接話を聞いて回りました。東京から来た現場も知らない社員だということもあり、最初はなかなか耳を貸してもらえませんでしたが、毎日工場に通い、一緒に食事をし、事業に貢献したいという熱意を伝えることで、徐々に気持ちが通じるように。詳しく話を聞いてみると、現場でもヒューマンエラーに対する問題意識を持っていたことが分かり、分析結果を説明する中で検証への理解も広がっていきました。熟練工自らアイデアを出してくれたり、「仕事の向き合い方に対する見直しにつながった」と評価してくれたりと、現場を巻き込むことで、徐々に取り組みが前進し始めたのです。

3カ月間にわたる派遣期間の最後には、頻発事例を基にしたケーススタディーの実施や、エラーにつながり得る外的要因の排除など、熟練度とエラー傾向の相関性を踏まえた提言を行いました。提言の実現には時間がかかりますが、私の帰国後も、データの追加分析やケーススタディーの事例拡充など、同社では今も取り組みが続いています。私がきっかけとなって始まった取り組みが、その場限りで終わらず、さらに良い形で継続されていることは本当にうれしく、大きな達成感を感じています。

(*)グローバル研修生…若手社員を対象に、海外での実務研修、海外のビジネススクールへの派遣、世界各国の文化と言語を習得するための語学研修を実施。年間100人前後を派遣。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/resource/training.html

鄭 在皓鄭 在皓

「ファミリー」として共に取り組み成果を生む「ファミリー」として共に取り組み成果を生む

「ファミリー」として
共に取り組み成果を生む

周囲を巻き込んで検証に取り組む中、短期のグローバル研修生だからとお客さま扱いされるのではなく、同社のファミリーとして受け入れていただいたことは、非常に貴重な経験になりました。当初は思うように協力が得られず、正直悩みました。しかし上司が「全然懐に入り込めていないぞ」と警鐘を鳴らしてくれ、現地の方々との向き合い方を考え直すきっかけとなりました。もし自分一人でデータを検証するだけだったら、どんな優れた分析結果であっても周囲には響かなかったと思います。相手の話に直接耳を傾け、想いや悩みを共有したからこそ、成果につながったのです。

私が所属する総合素材グループは、さまざまなメーカーと対面して事業を行っています。インドでのグローバル研修を通して現場の最前線を知り、品質管理や安全意識といった製造業を貫く大切な軸を体感できたことは、大きな学びになりました。今後は、化学技術を駆使し、電気自動車(EV)などに使用するリチウムイオン電池の原料をコールタールから製造する韓国の事業会社に出向します。韓国でも、インドで学んだ製造業における軸を忘れず、出向先の一員として、主体的に仕事に取り組み、信頼を築いていきたいと考えています。

このような技術は、豊かな暮らしや脱炭素社会を実現する上で欠かせません。しかし、先進国と新興国の間には、まだまだ大きな技術格差が存在することも事実です。今後、さまざまな国で事業に携わる中で、こうした格差の解消にも挑戦していきたいと思っています。