Challenged Sports(障がい者スポーツ)
一人じゃない。だから限界も超えられる。
2015年7月19日 朝日新聞「GLOBE」掲載

一人じゃない。だから限界も超えられる。
「5秒前。5、4、3、2、1、ハイ!」
プールサイドに響くカウントダウンの掛け声に応じて、選手の体が水中に消えたかと思うと、次の瞬間、鍛えられた背中がふわりと水面に現れた。
一回、二回とストロークの数が増えるたびに、水を切って進むスピードも勢いづいてくる。
50メートルプールのゴールまであと5メートルになったときだった。コース上のコーチが1.5メートルほどの長さの棒で、選手の頭をポンとたたいた。理由を尋ねると、視覚に障がいのある選手にプールの壁が近いことを知らせる「タッピング」と呼ばれる合図だという。全力で泳ぐ選手が壁にぶつからないための安全策だ。
タッピングだけではない。身体などの障がいの程度によって「クラス分け」があるこの競技には、特別なルールが定められている。
スタート台から飛び込まなくてよいことや、バランス感覚に障がいがある選手には介助が許されていること。また競技中、視覚障がい者は、自分のコースを外れても違反にならないこともある。
こうした規定があることで健康維持や仲間づくりなど、生活を豊かにする「水泳」というスポーツに、より多くの障がいを持つ人が参加できるようになった。今、障がい者水泳の競技人口は、全国1,000人を超える。
その中に、昨年のアジア大会で4冠をつかんだアスリートがいる。2歳のときに視力を失い、母親の勧めで4歳から水泳を始めた木村敬一さんだ。記録に挑み続ける彼は、「水泳は、障がいを持っていても速く泳ぐことができる、高いレベルで戦えるという“人間の可能性”を表現できるスポーツなんです」と、魅力を語る。
筑波大学附属視覚特別支援学校で本格的に水泳を学び、中学3年生のときに初めて世界規模の大会の表彰台に立った。以来、世界大会の常連として、各国の強豪から一目置かれる存在に。誰もが成し遂げられることではない。
「多くの方の力で、貴重な体験にチャレンジさせてもらえることに感謝しています」(木村さん)
孤独な戦いに見える水泳競技の舞台裏に、コーチやスタッフ、企業、大学といった多くの人の支えがあることを知るアスリートならではの言葉だ。
7月にスコットランドのグラスゴーで行われた世界大会では、己の限界を超えようとひたむきに泳ぐ選手たちの雄姿に世界中が拍手した。もっと速く、もっと強く──挑戦は続く。
DREAM AS ONE. ~ともに一つになり、夢に向かって~
三菱商事は、東京YMCAとともに、スポーツ教室「DREAMクラス」を開催しています。この教室は障がいのある小学生を対象に子どもたちが自分のペースで、継続的にスポーツを楽しめるようになることを目指しています。私たちは、このような障がい者スポーツを支援するプロジェクト「DREAM AS ONE.~ともに一つになり、夢に向かって~」に取り組んでいます。




