Challenged Sports(障がい者スポーツ)
床の上のカーリング — 静けさと喝采と
2015年9月20日 朝日新聞「GLOBE」掲載

床の上のカーリング — 静けさと喝采と
バドミントンのものより縦の長さが1メートルほど狭いコートの中で、車いすの男性が赤いボールをビュン、と投げた。床を転がって白いボールの真横にピタリと止まると、集中する選手を気遣い、静まり返っていた体育館にどよめきがもれる。
次は隣の女性の番だ。車いすから身を乗り出すようにして青いボールを投げる。弧を描いたボールは、ボスッと鈍い音を立てて見事白いボールに命中。その衝撃で赤いボールは遠くに転がって行った。とたんに周りから拍手が沸く
──脳性まひなどの理由で、四肢に重度の障がいがある人のために、ヨーロッパで考案された「ボッチャ」というスポーツの一コマだ。
ボッチャとは、イタリア語で「ボール」の意味。「ジャック」と呼ばれる白いボール(目標球)に、ソフトボールよりやや小さい赤・青のボールを6球ずつ投げたり、転がしたりして、赤・青どちらのボールがより多く、ジャックに近づけることができるかを競う。自分で投球できないほどの障がいのある者でも「ランプ」というすべり台のような道具を用いて参加できる。
ボッチャが「誰でも楽しめるスポーツ」として、世界中で楽しまれているゆえんだ。
1996年に初めて日本にボッチャを普及した千葉ボッチャ協会、現会長の宮坂昇さんによると、現在、日本ボッチャ協会に登録している選手は約200人。
「99年から海外にも遠征し、大会で優勝できる選手も育ってきました。最近は福祉的にも注目を集めており、子どもから高齢者まで、競技人口は千人ほどになっています」(宮坂さん)
競技歴13年、日本代表として強化選手に選ばれている廣瀬隆喜選手はボッチャを「奥深い競技」と言う。一見すると“床の上のカーリングのような”競技だが、ボッチャの的はボールなので動く。
「相手のボールがたくさんジャックの近くに集まっていても、例えばジャックに自分のボールを当てて動かすことで戦況を変えることができる。どこを狙うか、どう投げるかで最後に逆転も夢じゃない、頭を使うスポーツなんです」(廣瀬さん)
勝負を左右するのは、文字通りボールだ。選手の多くが「マイボール」を持っており、周長270±8ミリ、重さ275±12グラムの規定サイズ内で中身のビーズの量を加減し、調整している。
廣瀬選手のボールは、革製のお手玉のような、ふにゃっとした感触。「衝撃を吸収し、弾かれにくくするため」と、あえて柔らかくしたという。
握り方も数年前、「人差し指を中指へ近づける」スタイルに変更。それまでは無意識だったが、緊張すると親指に力が入り、投げる際にボールに指が引っかかることがあった。親指と人差し指の距離をあければ、ボールが手離れしやすい。
最後に「ボッチャの最大の魅力は?」と尋ねると、廣瀬選手は「重い障がいのある者でも、世界の大舞台を目指せるところ」と、言い切った。
DREAM AS ONE. ~ともに一つになり、夢に向かって~
8月19日、三菱商事ビルで「ゴールボール」の体験会が行われました。参加した20組の小学生と保護者は、元日本代表の高田朋枝さんの指導を受け、目隠しをしてボール内の鈴の音を聞いてプレーする競技の面白さと奥深さを存分に味わいました。三菱商事は社会とともに歩む企業として、これからも障がい者スポーツの認知度・理解度を高める活動に取り組んでいきます。




