World Beat ~明日への鼓動~
ダイナミックに動き続ける世界で
2016年5月2日 朝日新聞「GLOBE」掲載

ダイナミックに動き続ける世界で
あと40年もすれば地球から石油がなくなる。子どものころにそんな話を聞かされた人もいるだろう。「あと40年」が話題になったのは、1970年代オイルショックのころ。その後に続けてこうも言ったものだ。そしてその頃には、石油に代わる新しいエネルギーが主流になっているだろう、と。
しかし21世紀を迎えた今も、石油がその座を明け渡す気配はない。近年の新たな油田の発見や採掘技術の進歩により、少なくとも資源の枯渇によって供給が止まるという事態は、当面心配しなくて良さそうだ。一方で新興国の台頭などもあり、需要はさらに伸びている。
新興国だけではない。OECD加盟国の豪州もそのひとつ。世界で唯一、ひとつの大陸がまるごと国土というこの国で、物流の主役は何といってもトラックだ。しかし、豪州では今、伸びる需要の一方で軽油供給能力の低下が徐々に問題になりつつある。施設の老朽化や厳しい価格競争のため、製油所の閉鎖が相次いでいるからだ。仮にトラック燃料の軽油が不足すれば、この国の経済全体に影響しかねない。
この春、三菱商事が豪州サウスオーストラリア州(SA)に開設した軽油事業の拠点が稼働を始める。アデレードの北西、ボナイゾン港に建設した輸入ターミナルで、東南アジアや日本から軽油を集め、豪州国内への供給に貢献する。3基のタンクは計8万1千キロリットルの貯蔵が可能で、この1カ所でSAの需要の3~5割をまかなえるという。
「無事にここまで来てホッとした気持ちもありますが、正念場はこれからです。正直まだまだ緊張や危機感のほうが強いですね。このチャレンジを何としても成功させたいので」
施設の計画段階から関わった、同社エネルギー事業グループ石油事業本部の塩月晋弥さんは表情を引き締める。軽油は、今も昔も石油の主要産品であり、世界の経済成長を支える産業の血液としての役割は大きい。世界は鼓動し続けている。その鼓動を聞き逃してはならないと、塩月さんは感じている。
-“つぎ”を創る力




