三菱商事

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2009年1月5日

2009年 社長年頭挨拶

新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。
さて、本朝、三菱商事丸の内オフィスにて行われました、当社社長 小島順彦による「2009年 年頭挨拶」を下記の通りご報告します。
 
 
皆さん、あけましておめでとうございます。
例年よりも長い年末年始でゆっくり休息を取られたことと思います。
 
【外部環境の認識】
 
さて、昨年の年初、私はこの場で、「2008年は不確実性が高まる一年になるだろう」と、お話したかと思います。
実際にはその予測を遥かに超える変化が生じ、あっという間に大きな金融・経済の危機が世界を飲み込んでしまいました。
 
いわゆる「デカップリング」論は影を潜め、米国経済の悪化が、欧州のみならず新興国にも波及して、世界同時不況の波が押し寄せたわけであります。この波を受けて、米国では、長らく企業経営モデルの先駆者でもあったような有力企業が次々に苦境に陥り、米国型の資本主義社会のあり方にも波紋を投げかけるに至っています。
 
通常では起こりえないこと、あるいは理論的にも考えにくいことが、次々に起きています。これが、今回の経済環境の変化が百年に一度と言われるゆえんであり、世界経済は、ある意味では深い霧の中で前が見えない、といった状況に陥っていると思っています。
 
このような中で、今年2009年がどういう経済環境になるのかについても、正直なところ大変予想しにくいというのが、現状です。
 
世の中においても、各国政府の景気対策が功を奏し、経済環境は短期的に底を打って反転するという「楽観論」と、米国経済の収縮がさらに進むことで景気後退は深刻化するという「悲観論」とに、分かれていますが、それだけ見通しが立てにくい経済環境になっているということだと思います。
 
景気回復の鍵は、言うまでもなく、米国経済の動向、とくに、ニューディール政策の再現を目指すオバマ新政権の景気対策の効果が、どこでどう現れてくるかにかかっています。また、中国を中心とする新興国の経済減速がどこまで進むのか、そして、どこで食い止められるのか、によるところも大きいと思っています。
 
ただ、景気対策そのものが従来の枠組みではとらえにくくなっている上、必ずしも理屈通りに経済が動かなくなってきている実態の中では、これらを予測することがそう簡単なことではない、と考える次第です。
 
このような環境の急変に対し、わが社も昨年10月、私がリーダーとなり「金融危機対応タスクフォース」を立ち上げて、着実に手を打ってきています。昨年の拡大経営連絡会でもお話したとおり、わが社としても、こういう先行き不透明な環境に対応する為の緊急施策を打ち出し、健全性を最優先事項として経営に当たることを決めました。皆さんには、その趣旨をよくご理解頂いて、しっかりと対応して頂いていると思っています。
 
【新年における思い】
 
さて、2009年という年を迎えるに当たって、皆さんにお伝えしたいことは基本的にはひとつだけです。
 
それは、「原点に戻れ」ということであります。
 
混迷の世の中でこそ「原点に戻るべきである」ということであります。
 
わが社は、幸いにも、この5年間、資源価格の高騰にも支えられて、好業績を享受してきました。ただ、この好業績の中でわが社に心の緩みがなかったのか、資源価格の高騰の陰で、甘えがなかったのか、わが社が将来に向けて目指したこと、成すべきことに対して、着実に手を打ってきたのかどうか、原点に戻って、この機会にもう一度、真摯に見直して貰いたいということであります。
 
皆さんには、まず「イノベーションとは何か」、「新・産業イノベーターとは何だったか」ということを、もう一度よく考えて貰いたいと思います。
 
2009年は、「イノベーション2009」の最終年度であり、すなわちジャンプ期間の最終年度であります。言い換えれば、イノベーション2007で開始した、「新・産業イノベーター」をビジョンとする、6カ年計画の総仕上げの年でもあります。そもそも、このビジョンは、環境が大きく変化する中で、高い志をもって、新しい流れを創造していきたいという意味を込めて打ち出したものです。
 
その「新・産業イノベーター」の役割として、市場ニーズから産業を捉え直すことで、新しい仕組みを提案・創出したり、わが国の将来を担うような新しい産業を開拓することを、定めました。
 
この5年間で、このわが社の使命を本当に果たすことが出来たのかどうか。ビジョンに合致するようなアクションがとれたのかどうか。資金的な余裕が生まれる中で、どちらかと言えば、規模の拡大に走ることに注力し、ビジネスモデルの革新による将来に向けての質的な変革を怠っていたということはなかったかどうか。そして、実現していない点があるとすれば、今後、どうすればよいのか。それを、ここでもう一度、原点に返って見つめなおして欲しいと思います。
 
次に、「商社としての原点」も忘れてはいけません。
 
顧客との信頼関係をしっかり築き、市場のニーズを的確に読み取り、知恵と創造性を駆使して、ソリューションを提供する。いわゆる「商人(あきんど)の志」であります。この志を忘れないことがわが社の強みにも繋がるのです。
 
こういう時代だからこそ、ビジネス感度を鋭くし、知恵を絞り、汗を流し、ひとつひとつの打ち手を確実に重ねていくことが大事であると思っています。好業績の中で、わが社に驕りはなかったのかどうか、顧客との信頼関係は磐石かどうか。マーケットニーズを誰よりも早く、且つ、的確にキャッチしているのかどうか。こういった点、即ち「商人(あきんど)の志」という原点をもう一度、冷静に振り返って欲しいのです。
 
また、「原点に戻る」ということは、所謂「ゼロベース思考」が求められる、ということでもあります。
 
パラダイムの転換が起こり、新しい秩序が形成されるということは、これまでの常識が通用しなくなることを意味します。これまでの常識をいったん捨て去り、新しい眼で、そして新しい発想で、業界慣行や取引をグローバルに総点検してみてください。
 
過去の歴史を振り返ってみれば、大きなイノベーションは、大きな景気後退の時期にまさに起きている、という指摘もあります。社会が産業構造に大きな変革を求めるときが、産業社会にとってイノベーションのチャンスであることは間違いありません。
 
とくに、「失われた10年」を経験し事業の選択と集中を進めてきた日本企業には財務基盤の強い企業が多く、米国企業の相対的優位性が低下する中で、わが国がリーダーシップを発揮できる産業分野が生まれてくると思っています。
 
米国では、オバマ新大統領の「グリーン・ニュー・ディール政策」を背景に、インフラ需要への期待感が浮上してきていますし、原油価格と環境という地球規模の課題への解決策として、省エネ技術、そして新エネルギーへの関心も急速に高まりつつあります。
 
一方では、グローバルなベースで業界再編が行われ、世界規模で企業の勢力地図が塗り変わる可能性も出てきます。
 
こういった中で、わが国がリーダーシップを発揮できる場面、わが社が「新・産業イノベーター」の本領を発揮するチャンスが、必ずや生じてくるものと思っています。こうしたチャンスをつかみ取る開拓者精神こそが、わが社の原点ではないでしょうか。
 
 
【最後に】
 
常日頃言っていることですが、最後に「コンプライアンスの遵守」「将来に向けての人材育成」という点に改めて触れておきたいと思います。
 
コンプライアンスの遵守とは、単に法律を守れば良いということに留まりません。三菱商事グループは、社会的な責任を認識し、社会の期待にしっかりと応えて常に信頼される企業グループであり続けること、これこそが「コンプライアンスの遵守」という意味であります。こういう時代だからこそ、さらにわが社に求められる基準は高いと考えてください。
 
次に人材育成ですが、このような不透明な時期こそ将来のわが社を担うグローバルな人材育成が、まさに必要であることを肝に銘じておいて欲しいのです。
 
 
現在の大きな変化は、未来から振り返ると、産業史上の大きな分岐点だったということが分かると思います。われわれは、その大きな歴史の転換点に立っているのです。
 
われわれの会社人生の中で、このような産業史の転換点に遭遇すること自体、ある意味、奇跡的なことでもあります。
 
皆さんは百年に一度のタイミングに、まさにビジネスの現場にいるのです。このチャンスをわが社の将来に繋げることが出来るよう、足元をしっかり見つめ、着実に、そして細心にして大胆に、取り組んでいきましょう。
 
繰り返します。まずはしっかり原点に立ち返り、新・産業イノベーターとしての志を真摯に磨いて下さい。そしてこの厳しい経済環境の中で、中長期的に新しいビジネスモデルを創造する、即ち「変化を捉えて未来を拓く」、その大きな一年にしようではありませんか
 
三菱商事グループ全員で、一体感を持って頑張りましょう。
 
今年一年、皆さんの健康と益々の活躍を祈念して年頭の挨拶と致します。
 
以上
 
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