三菱商事

第6回 硅砂採掘事業

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第6回
硅砂採掘事業

世界で高まる硅砂需要に対応
自然との共生と地域貢献目指す

三菱商事グループが世界中で取り組む事業とそこで奮闘する社員を紹介するシリーズ。第6回はオーストラリア北部でガラスなどの原料となる硅砂(けいしゃ)を採掘しているケープフラッタリー・シリカ鉱山社(CFSM)にスポットを当てる。三菱商事の100%子会社の社長として赴任から約1年、世界屈指の品質と埋蔵量を誇るCFSM の新たな需要への対応と、地域への貢献に情熱を燃やす中谷太郎の挑戦を取材した。

岬の桟橋を起点に最大需要先のアジアへ

岬の桟橋を起点に最大需要先のアジアへ

採掘から輸送、販売に至る
一気通貫のサプライチェーンを構築

オーストラリアの北部、ケアンズ市からさらに220キロ北に位置するフラッタリー岬。ここ一帯に広がる白い大地が、ケープフラッタリー・シリカ鉱山だ。この鉱山から三菱商事が日本への硅砂の輸入を開始したのが1968年。77年に同社を買収して、80年代後半には専用の桟橋と出荷設備を設置した。以来、三菱商事の持つ物流・販売ネットワークを生かして採掘、精製から輸送、販売に至る一気通貫のサプライチェーンを構築。年間約300万トンの硅砂を、日本をはじめ、アジア各国に輸出している。

CFSMに2019年5月、社長として赴任したのが中谷だ。三菱商事入社から二十数年、主にコーヒー事業や投資業務を担当。中谷にとっては未知の分野だったが、鉱山の写真や動画を見るうち、採掘から精製、船積みまで、壮大な事業スケールに目がくぎ付けに。不安はやがてワクワク感に変わっていった。

「ガラスの原料となる硅砂は日常生活に欠かせない、三菱商事にとっても大切な商材。これまでの経験を生かして自分にできることはたくさんある」

着任以来、ケアンズのオフィスと鉱山の現場を飛行機で行き来しながら多忙な毎日を過ごす中谷。自身を「なんでも屋」と呼ぶように、社長としてこなすべき業務は多い。中でも注力しているのは、長期生産計画の策定だ。長期的な増産に向けた採掘計画を策定し、環境許認可の取得や生産効率化につながる設備投資を実行してきた。

もう一つが人員体制の整備。特に従業員にモチベーションを高めてもらうための意識改革に取り組んだ。社員への意識調査で現場の意見がなかなか聞き入れられないというコメントを見つければ、現場の意見を吸い上げるような改善策を考え、直ちに実行に移した。

赴任後すぐにこうした迅速な対応ができたのは、他の出資企業のいない三菱商事が100%出資している鉱山会社であることも大きい。「自分たちの創意工夫で会社を主体的にリードできる。責任が重い分、やりがいを感じる」と中谷は目を輝かす。

この砂が世界の人々の生活を豊かにする

ケアンズのオフィスでスタッフと打ち合わせ

上:この砂が世界の人々の生活を豊かにする
下:ケアンズのオフィスでスタッフと打ち合わせ

高純度の品質と豊富な埋蔵量
世界に誇る硅砂の安定供給拠点に

自動車用ガラスや建築資材など様々な製品に使用される硅砂。最近は太陽光パネルにも用いられ、再生可能エネルギーへの注目が高まる中、需要の伸びは急ピッチだ。とりわけCFSM の硅砂は良質なことで知られ、世界に誇る硅砂の安定供給拠点として、その存在感は他を凌駕(りょうが)する。

「世界最大級で、かつ品質の高い鉱山と、三菱商事の持つ物流・販売ネットワーク。この2つを円滑に機能させることで三菱商事の硅砂事業の強みが最大限に発揮できる。そのためには本社との密な連携が欠かせない。生産現場のトップとしてその橋渡し役を果たすことも重要な任務」と話す中谷。本社とはテレビ電話会議や出張を通じて、常日ごろからインタラクティブに情報共有を図っている。

鉱山を運営する上で自然環境の保全に努めることも重要な経営テーマだ。「オーストラリアの厳しい環境基準を守るのはもちろん、精製時に使用した水の再利用などにも積極的に取り組んでいる」と中谷。現在、ディーゼルによる自家発電の一部を風力に置き換え、化石燃料の消費を抑えることも検討中という。

さらに、中谷が情熱を傾けているのが地域との共生。先住民を従業員として積極的に雇用しているほか、地域への寄付や職業訓練の費用をサポートするといった地道な活動にも余念がない。

「この地域は、主だった産業がない。事業の発展を通じて、地域の発展に貢献したい」と常に語る。その言葉には、硅砂が生み出す様々な製品を通じて世界の一人ひとりの生活の質向上につなげたいという思いが込められている。

取材を終えて

降りやまないスコールの合間を見て小型機でケアンズを飛び立ち約1時間、ケープフラッタリーへ。頻繁に行き来する中谷さんと現場で働く人たちとはファーストネームで呼び合う仲だ。採掘現場こそ硅砂の白と青空の対比が印象的だが、周囲は緑地が広がり環境への配慮を実感する。ここから世界に送られる高品質な硅砂は生活に欠かせない多彩な製品に変わる。桟橋へ続く長いコンベヤーの先に多くの笑顔が見える気がした。

2020年3月27日 日本経済新聞掲載広告
企画・制作=日本経済新聞社イベント・企画ユニット

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