三菱商事

海外プロジェクト探検隊

Vol.2 冬休みタイ自動車プロジェクト体験ツアー

2006年3月6日 読売新聞掲載

日本の高校生8人が昨年12月、自動車産業で東南アジアをリードするタイを4泊5日で訪れた。三菱商事がタイで展開する自動車販売事業の最前線を取材し、ネットで紹介するためだ。現地の自動車販売店を始め、かれらは、米菓の製造工場を見学したり、地雷除去活動を行うNPOを訪ねたりと、商社が携わる多様な事業を体感。タイの文化や日本との密接な関わりを学んだ。

タイ自動車事業の最前線へ 商社マンの熱意に感動

タイの自動車生産台数は昨年、東南アジアで初めて100万台を突破、国内販売も好調だ。三菱商事は、いすゞ自動車と共同で「トリペッチいすゞセールス社(TIS)」(※注1)を1974年に設立。ピックアップトラックなどの販売を手がけ、同国でいすゞ車を商用車のトップブランドに育て上げた。

TISは8月~翌年5月のセールス期に、国内200店を超す各地の販売店で、大規模な販売促進イベント「いすゞショー」を展開している。高校生らは、バンコクの南約120km、ペッチャブリー県にある販売店で行われたショーを取材した。

会場には、車の性能を実体験できるように、悪路を再現した試乗コースが設置され、親子連れなどが乗車待ちの列をつくっていた。屋台が軒を連ね、人気歌手によるコンサートも開催、締めくくりには打ち上げ花火まで…。お祭り好きの国民性に合わせた内容は、いすゞ車のファン層拡大を狙ったものだが、この地域の一大イベントでもあり、1日で2万人を動員した。

東京家政学院高2年の藤野真莉佳(ふじのまりか)さん(17)は、「タイの人の気持ちをつかむために、工夫を重ねていることがわかった。利益を追求するだけでは考えつかない内容だ」と驚いた様子。

国立東京工業高専1年の江口洋丞(えぐちようすけ)君(16)も、「日本では見られない手法だけど、異文化の国に合わせた販売戦略を考えるのは、すごく面白そうだ」と話し、イベントを満喫していた。

高校生らは、バンコク市内にあるTIS本社も見学。併設された7階建ての整備工場内では、車の整備を待つユーザーがくつろげるよう、映画館も設置されていると知り、感嘆の声を上げていた。三菱商事から出向している蓮尾隆一副社長は、自動車の性能の良さと顧客満足度を重視した経営方針を丁寧に説明してくれた。

自動車の技術者になるのが夢だという同高専1年の小坂典嵩(こさかのりたか)君(16)は「商社マンはどこか優雅なイメージがあったが、技術者に負けないぐらいの熱意を感じた。その仕事をもっと知りたい」と興味津々の様子だった。

タイで出会った日本の味 米菓の製造ラインを見学

世界有数のコメの産地であるタイでは、米菓の製造もさかんだ。三菱商事と亀田製菓などが1990年に設立したSMTC社(※注2)は、年間4000トンのあられと、同1200トンのせんべいを製造。海苔巻きや「柿の種」などの輸出先は、日本を始め世界20か国以上に上る。近年はタイの庶民にも人気の菓子だ。

高校生らは、その製造ラインを見学。交代で働く1400人の従業員の衛生管理は厳しく、私物の持ち込みは制限されている。原料米や使用する水にも、探知機が異物の混入をチェック。排水は再利用するなど、環境保全にも配慮している。

北海道立札幌南高2年の稲澤真樹子(いなざわまきこ)さん(17)は「『生水は飲むな』と言われる国で、日本の消費者が求める安全な食品を作るには、大変な努力が必要とわかった」と感心していた。

SMTC社で製造された海苔巻きは、従業員が手作業で1枚ずつ巻き付けたものだ。品質の高さを維持するため、従業員教育には特に力を入れている。

立教池袋高2年の南遼(みなみりょう)君(17)は「日本的な基準を、なかなか理解してもらえないと聞いた。それでも、文化の違いを乗り越えて“日本の味”を作り出す仕事は格好いい」と話していた。

交流会、仏教体験、地雷問題… より深くタイを知るために

企業訪問に加え、高校生らはタイの学生との交流会にも参加。タイ料理に舌鼓を打ちながら、将来の夢や互いの国の印象を、片言の英語で語り合った。

クラーク記念国際高1年の細川恵里(ほそかわえり)さん(17)は、「笑顔がタイの象徴だと、ニコニコしながら教えてくれた。私も日本の文化や自然の豊かさを見せてあげたい」と話し、再会を誓った。

一行は、タイの人々の精神的基盤である仏教を知るため、バンコク市内にあるサム・ガーム寺院も訪問。厳しい戒律などへの興味は尽きず、住職との質疑応答は2時間に及んだ。

住職に袈裟を着せてもらった桐光学園高2年の足立圭(あだちけい)君(17)は「食事には制限があり、靴も履けない。戒律を守るには、精神的な強さが要るはずで、僧侶が尊敬される理由がわかる」と話し、感激した様子だった。

タイが抱える深刻な問題にも迫った。カンボジア国境地域では、カンボジア内戦時に埋設された地雷が、住民の生活を脅かし、地域振興を妨げている。高校生らは、同地域で地雷除去活動を行う日本のNPO「JAHDS(※注3)」のバンコク事務所で、タイ人隊員の話を聞く機会を得た。

隊員たちは、腹這いになって金属反応のあった地中に専門工具を突き刺す作業を再現。危険と隣り合わせの上、気温が40度を超すこともあり、精神的にも肉体的にもきつい任務だが、隊員は「古里のために活動している」と語る。

東京家政学院高2年の柳田由美(やなぎだゆみ)さん(17)は、「いつの日か、地雷があったことが信じられないような地域に生まれ変わって欲しい。私も彼らの努力を多くの人に伝えたい」と、真剣なまなざしで話していた。

  • 注1 TIS
    タイ国内におけるいすゞ自動車の販売・物流・アフターメンテナンス等を総合的に手がける企業。2002年からは、タイで現地製造したピックアップトラックの輸出事業も展開している。
  • 注2 SMTC社
    タイ国内で米菓の製造・販売および世界各国への輸出事業を行っている合弁会社。現在、日本で販売されている海苔巻き・あられ商品の30~40%は同社の製品。
  • 注3 JAHDS(ジャッズ)
    1998年、人道目的の地雷除去活動を支援するために結成された非営利団体。現在タイとカンボジアとの国境付近で展開中の「ピース・ロード・プロジェクト」に三菱商事が人材を派遣するなど、多数の日本企業が活動に協力している。

詳細情報参照

海外プロジェクト探検隊 Vol.2に参加した高校生のリポート

海外プロジェクト探検隊 Vol.2の動画

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