三菱商事

海外プロジェクト探検隊

Vol.5 夏休み「カナダ製紙原料プロジェクト」体験ツアー

2007年9月24日 読売新聞掲載

広大な森林や石炭などの豊富な天然資源を持ち、環境保護の先進国でもあるカナダを今年8月、日本の高校生8人が訪問した。カナダ西部の中心都市バンクーバーに拠点を置くカナダ三菱商事では、資源輸出に深くかかわる商社の仕事を学び、アルバータ州では、紙の主原料のパルプを厳格な森林管理の下で作る工場を見学。現地の歴史や文化にも触れ、充実した時間を過ごした。

カナダ三菱商事を訪問 先を見越した事業展開

ブリティッシュ・コロンビア州の中心都市のバンクーバーは、日本を含む東アジア向けエネルギー・鉱物資源や食糧の供給基地である。ここにオフィスを構えるのがカナダ三菱商事だ。

高校生たちは、小和瀬(こわせ)真司社長の出迎えを受けた後、石炭や銅などの資源部門、道路の凍結を防ぐための塩などを扱う化学品部門、燃料電池や有機野菜栽培などの新事業部門のそれぞれの責任者から事業内容の説明を受けた。

説明が終わると、聖心女子学院高等科3年の五十嵐真理さん(18)が「埋蔵量に限りがある石炭などの資源は長期的な視点で開発していますか?」と早速質問した。八田(はった)修明(のぶあき)石炭・金属資源部長は「石炭は200年分以上の埋蔵量がありますが、代替資源としてカナダでウラン鉱石の開発にも取り組んでいます」と答え、先を見越したビジネスの大切さを強調した。

また、頌栄女子学院高校1年の小槻瑞木さん(15)が「商社の仕事は、主に資源などを日本に持ってくるための仲介をするのですか?」と質問したのに対し、小和瀬社長は「自分たち自身で新しい事業に投資したり、会社を作ったりすることもあります。いろんな地域といろんな事業が密接に結びついて商社の仕事が成り立っているんですよ」と説明。8人はそれぞれ商社の仕事に対するイメージをふくらませた。

その後、小和瀬社長らとともにバンクーバー市内の有名チャイニーズレストランに出かけた高校生は、現地での暮らしぶりなど興味深い話を聞きながら、緯度が高いために夜9時をすぎてもまだ明るいバンクーバーの夜を楽しんだ。

製紙原料工場を取材 環境保全の大切さ実感

アルバータ州に入った高校生は、州都のエドモントンからバスで北に2時間ほど走り、アサバスカという街に到着した。

アサバスカでの最初の訪問先は、バイソンを飼育する牧場だ。どこまでも続く牧草地を車でしばらく走ると、体重が1トンを超すこともあるというバイソンの群れが目の前に姿を現した。高校生は恐る恐るバイソンに近づきながら、大迫力の巨体を何枚も写真に収めた。

次に高校生は、三菱商事と王子製紙が共同で運営する製紙原料工場のアルパック社に向かった。木の繊維分を取り出したパルプを年間63万トン生産し、アメリカや日本などの製紙会社に販売している。北米で最大規模のパルプ工場だ。

アルパックは、州政府との取り決めで、韓国とほぼ同じ広さの森林の伐採権を持っている。特色は木の伐採方法だ。できるだけ自然な状態に近づけるため、山火事が起きた後に木が残るのと同じように木を残す。鳥が木に巣を作ることができ、木が枯れて倒れても動物の住みかとして活用できるからだ。アルパックは、世界の森林管理のモデルケースだという。

アルパック・斎藤純社長の案内で、整理整頓が行き届いた工場を視察。大きな釜で煮られたパルプをひしゃくですくって手に取ったり、中央制御室などを見学した。豊島岡女子学園高校1年の大谷香織さん(16)は「自分が社長だったらこんな大きな工場をどうやって動かすだろう」と驚いた様子。工場では、木屑(きくず)などを燃やしてバイオマス発電を行っており、福岡大学付属大濠高校3年の行徳圭太郎君(19)は「商社の仕事は知っているつもりだったけれど、ここまで環境に気を使っているとは」と感心していた。

二酸化炭素の排出を抑えているアルパックは植林にも力を入れており、年間の二酸化炭素排出量と植林木などによる吸収量が同じなのだという。植林体験をした開成高校1年の小宮友輔君(15)は「無数の木が植えられ、小さな積み重ねが環境保全につながるんだと実感しました」と話した。その後、高校生は、アルパックで働く生物学者の案内で森の中を歩き、自然と人間の共生の大切さをかみしめた。

現地学生と文化交流 先住民の暮らしに学ぶ

アルパック訪問を終えた8人は、近くにあるキャンプ場で、夏休みを利用してアルパックで働いている地元の高校生や大学生とのバーベキュー交流会に臨んだ。それぞれが英語で自己紹介をした後、地元特産のソーセージを炭火で焼き、パンにはさんでほおばった。始めは遠慮がちだった高校生も、次第にうち解けた雰囲気になり、お互いの学生生活などについて現地の学生と会話を弾ませた。富山県立呉羽高校3年でサッカー部に所属する谷圭菜さん(18)は「同じポジションの女の子と仲良くなれて、お別れの時にはハイタッチもできた」と満足そうだった。

バンクーバーに戻った高校生は、郊外にある観光地のキャピラノ渓谷を訪れ、ダム建設で川を上れなくなったサケが卵を産めるように作られた国立の孵化(ふか)場を見学した。現地のガイドからは、先住民が木の皮で衣服やかごなどを作っていたため、木をとても大切にし、先住民の思想がカナダの環境保護政策に影響を与えたことも学んだ。

体験ツアーを終え、早稲田大学高等学院2年の加藤利幸君(17)は「環境保全に自信を持っているためか、アルパックでは社員が誇りを持って働いていた」と振り返り、福岡県立筑紫丘高校2年の大庭直也君(17)は「カナダでは、環境問題をみんなが自分の問題としてとらえている」と実感をこめて話した。

“海外プロジェクト探検隊” 三菱商事の海外事業や現地の文化を体験しよう

“海外プロジェクト探検隊”とは

このプロジェクトは、一般から公募した高校生をリポーターとして海外に派遣し、現地で体験した内容をヨミウリ・オンラインで発表してもらうシリーズ企画。

現地では、三菱商事が海外で展開しているプロジェクトの現場を訪問するほか、現地の学生との国際交流や生活文化など、さまざまなプログラムを体験。未来の日本を担う高校生たちに、総合商社の仕事や異文化への理解を促し、今後社会で活躍するための糧としてもらうことを目指している。

現在までに「ブルネイLNGプロジェクト」「タイ自動車プロジェクト」「中国繊維・物流プロジェクト」「オーストラリア石炭採掘プロジェクト」の“探検隊”を実施しており、今回の「カナダ製紙原料プロジェクト」は5回目となる。

次回は、春休みに実施する予定。詳細が決定し次第、読売新聞の紙面で高校生リポーターを募集する。

体験ツアー報告会

9月15日、「カナダ製紙原料プロジェクト」体験ツアーの報告会が開催された。ツアーに参加した高校生たちは、体験したプログラムのツアーリポートを作成。カナダで展開する三菱商事のプロジェクトを中心に、現地で学んだことや感じたことなどを発表しあった。

続いて行われた懇談会には、“探検隊”Vol.1~Vol.4に参加したメンバーも合流。自己紹介や近況報告、自分が参加した際の体験談、今回のリポートの感想などについて話が弾んだ。

詳細情報参照

海外プロジェクト探検隊 Vol.5に参加した高校生のリポート

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