

第5回
空港運営事業
モンゴルの魅力を世界へ
空港運営から国の発展を支える
三菱商事グループが世界中で取り組む事業とそこで奮闘する社員を紹介するシリーズ。第5回はモンゴルの首都ウランバートルで2020年夏の開業に向け、準備が進められている国際空港民営化プロジェクトにスポットを当てる。モンゴル国政府そして日本企業連合が新会社を設立し、それぞれの知見を生かし挑む空港運営。その中で新会社の立ち上げに尽力する社員の挑戦を取材した。
日蒙チームが挑む期待の新空港民営化プロジェクト
ウランバートルの中心部から南西に約50キロメートル、大草原の中にモンゴルの玄関口となる新空港が完成した。新ウランバートル国際空港。現在稼働中のチンギスハーン国際空港は地形の関係で天候の影響を受けやすく、遅延も頻発していたため、来夏から新空港への移転を予定している。新空港は、高まる航空需要に対応するため円借款により建設された、日本とモンゴル2国間協力の象徴だ。今年7月、三菱商事、成田国際空港、日本空港ビルデング、JALUXの4社が、新空港の15年にわたる運営事業権を獲得、来夏の開業に向け急ピッチで準備作業が進められている。
新空港を運営する新ウランバートル国際空港LLC社(NUBIA)のCFO(最高財務責任者)として着任した岸川。彼女は三菱商事に入社以来、インドの地下鉄事業、ミャンマー・マンダレー国際空港など、交通インフラ事業の入札・契約交渉を一貫して手がけてきた。その経験を生かし担当した本プロジェクトでは、入札から契約まで3年をかけてモンゴル国政府と日本連合間の交渉をまとめ上げ、新会社の運営業務にも携わることとなった。
「自分が携わった案件の運営をやってみたかった。入札から運営までプロジェクトの一連の流れが経験できるのは貴重。現場でのマネジメントは自分にとっては新たな挑戦で責任もあるが、現場で一緒に作り上げていくプロセスは楽しい」と岸川は胸を弾ませる。

社内公募したロゴ案をスタッフと共に選考
スタッフと一つひとつ作り上げる開業に向けた新会社の基盤整備
今、世界の空港で運営を民営化する機運が高まっている。民間活力を注入して安全・安心・高品質な空港サービスを提供、より多くのエアラインを誘致することで、ビジネスや観光促進の大きな原動力になるからだ。今回の首都空港移転にあたり、モンゴル国政府は日本企業連合をパートナーに迎えた。NUBIAの社長に就任した加藤丈雄は「首都空港の運営を国外企業に任せるケースはまだ少なく、モンゴルからの期待は大きい。それに応えられる魅力的な空港にする」と力を込める。
岸川が率いるアドミニストレーション部はNUBIAのコーポレート機能を担う。業務基盤をいち早く整え、開業に向け、人事制度からオフィス備品、新空港でのごみ処理方法まで、現地スタッフとともにあらゆる物事を決定しなければならない。「各部署と連携し、各部の仕事がスムーズに進むよう会社の制度や基盤を作るのが私の当面の目標」と岸川は言う。
現空港から異動するスタッフの多くは英語を話さず、日本語とモンゴル語が話せるスタッフが通訳を務める。岸川にとって初めての経験ばかりだ。「でも、それもまたチャレンジ」と語る表情は明るい。交渉段階で両国の文化の違いも感じていたという岸川。相手のやり方や文化は尊重しつつ、「報連相」による情報共有など日本の良さも広めながら信頼関係を築いていく方針だ。「社名ロゴデザインコンテストを行うなど一つひとつ手探りだが、メンバーも会社や新空港を良くしたい、という思いで取り組んでくれているのがうれしい」
そんな岸川に、加藤社長も「彼女にとっても新たな挑戦だが、交渉段階から関係者と誠実に向き合い進めてくれており、安心して任せている」と厚い信頼を寄せる。
開業準備が一段落したら次の目標は観光キャンペーンやエアライン誘致と岸川は語る。「モンゴルは自然豊かな国。ビジネス需要も伸びている。世界中からより多くの人が訪れる空港にしたい。空港がにぎわえば、経済の活性化につながる。この事業を通じて、モンゴルの魅力の発信や国の発展、人々の暮らしに少しでも貢献できれば」と滑走路のはるか先を見つめた。
取材を終えて
ウランバートル市街から高速道路で大草原を1時間。開業準備中の新空港にはまだ航空機や利用客の姿はない。ここに魂を吹き込むのが岸川さんの役割だ。「世界に誇れる空港にしたい」という総意の下、メンバーと連日ひざを突き合わせ、環境に配慮したごみの分別など、まだ同国にない新しいことを実現するために、活発に意見を交わす風景が印象的だった。まさに国境のないワンチームがそこにあった。

2019年11月29日 日本経済新聞掲載広告
企画・制作=日本経済新聞社イベント・企画ユニット
