
豊かな明日への1マイル
MaaS(Mobility as a Service)
スマートフォンアプリなどを介して目的地までの最適な交通手段を切れ目なく提供するなど、「移動」そのものをひとつながりのサービスと捉える概念。
ラストワンマイル。空港や駅に到着した人が、最終目的地に至る「最後の1マイル」をどう移動するのか。これからの交通のあり方を考えるうえで、近ごろ重要なキーワードとなっている(1マイル=約1.6km)。
この課題といち早く向き合い、「MaaS」という概念を世界で最初に提唱したのは北欧フィンランドだ。移動手段として自家用車への依存度が高く、都市部では渋滞や環境問題、地方では運転免許を持たない人など交通弱者の移動手段をどう確保するか、といった日本とも共通する問題意識がMaaSの登場を後押しした。デジタル技術とデータを活用し課題解決をはかる方針を国が明確にし、法整備やスタートアップ支援を進めている。
専用のスマートフォンアプリで目的地を入力すると、コミュニティバスやタクシー、自転車シェアまでを含めたあらゆる移動手段が提示され、利用予約と決済までをアプリで済ませることができる。フィンランドをはじめ、ヨーロッパ各国ではこうしたサービスが拡大中で、日本でも、さまざまな企業・団体が導入に取り組み始めている。
たとえばAI(人工知能)による自動配車システムで利用者減と人手不足に対応する。あるいは電気自動車を共同利用する仕組みで環境にも配慮した移動を実現する。そうした新しい技術やアイデアと組み合わせることで、MaaSの可能性は大きく広がっていく。
100年に一度のモビリティ大変革の時代に、新しい技術でこれまでにない価値や楽しさを生み出したい。そんな発想が、持続可能な未来への「1マイル」をつないでくれるのかもしれない。
AI活用オンデマンドバス
大手交通事業者西日本鉄道と三菱商事は、合弁会社「ネクスト・モビリティ」を設立、Spare Labs社(カナダ)のシステムを用い、福岡市東区アイランドシティ地区においてオンデマンドバス「のるーと」の実証運行を開始しました。決まったダイヤはなく、利用者のリクエストに合わせてAIが柔軟にルートを変えながら運行。利用者減や人手不足にも対応できる仕組みの導入により、効率的で持続可能な公共交通サービスの構築をめざします。

2019年9月1日 朝日新聞「GLOBE」掲載
