CSEOメッセージ

資本市場に対する振り返り

2023年4月のCSEO就任以来、株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまとの対話を質・量ともに高めていくことを常に意識してきました。成長のための取り組みについて当社から説明することだけではなく、皆さまからの厳しい声にも耳を傾け、いただいたご評価やアドバイスを適切に経営に反映することは、継続的な企業価値向上に不可欠だと考えています。
過去を振り返ると、循環型成長モデルの実践により強靭なポートフォリオの構築が進み、稼ぐ力が伸長した結果、当社の1株当たり利益(EPS)は、中経2018期間の100円台から中経2024期間の200円台に成長しました(図1参照)。

  • TOPIX平均の増減推移を指数化比較したもの

株主還元については、2016年度に累進配当を導入して以降、利益伸長や市場期待を踏まえて着実に増配を行ってきたこと(1株当たり配当は、2016年度の27円に対して、2025年度は110円)に加え、投資パイプラインおよび財務健全性を踏まえた上での機動的な自己株式取得を都度実施(2022年度に3,700億円、2023年度に6,000億円実施。2025年度は1兆円実施予定)してきました。着実な利益成長および積極的な株主還元は株主総利回り(TSR)(図2参照)の成長にも表れていますが、当社の株主還元の姿勢については、資本市場から一定程度の評価を頂くことができているのではないかと考えています。
一方、足元の状況に目を向けると、不透明かつ厳しい事業環境により当社の主力事業に一時的な影響が出ており、現在回復の途上にあります。また、前中経期間中に掲げた「MCSV創出」の具体案件の実現にはまだ至っておりません。経営戦略2027でお示しした、当社の目指す姿、および定量目標については一定程度皆さまにご理解いただけたのではないかと考えていますが、2027年度に向けた大幅な増益をけん引する、既存事業における「磨く(Enhance)」の具体的な取り組み内容や、前中経における取り組みとの差異が分かりにくいといったご指摘もいただいており、こうした部分に関する解像度を高めていく必要があることを認識しています。

さらなる企業価値向上に向けて

足元の事業環境において企業価値をさらに高めていくためには、経営戦略2027で掲げた価値創造メカニズムを着実に実行し、既存事業を中心に、地道に収益性および成長性を引き上げていくことが最重要だと考えています。CSEOとしては、こうした当社の成長の取り組みの解像度を上げ、株主・投資家の皆さまの確信度を高めること、ひいてはPERを向上させることに注力していきたいと考えています(図3参照)。
昨今、海外投資家や個人投資家の皆さまをはじめとして、新たに当社への投資を検討いただく機会も増えていると認識しています。総合商社という業態は日本特有のものである上、ポートフォリオも多様かつ複雑なため、当社になじみのない皆さまにとって分かりにくい側面も大いにあると考えています。こうした皆さまの視点を十分に踏まえたエンゲージメントを心掛けており、経営戦略2027期間においては特に、当社の有するユニークな投資機会、および再現性も含めた成長の取り組みについてしっかりとお示しすること、また、皆さまにとって評価がしやすい切り口での分かりやすい開示を行うことを考えています。
例えば、天然ガス、金属資源、自動車、サーモン養殖等の当社のコア事業については、MCSV Creation Forumなどを通じて、一段解像度を高める取り組みを行っておりますが、足元の中小規模にとどまる事業や、MCSV案件等のセグメントを超えた取り組みの開示については、まだ改善の余地があると認識しています。コングロマリットとして多様な事業を展開する中で、全ての事業を個々に細かく開示することでは当社の戦略方向性や競争優位性を正しく伝え切れないため、バリューチェーンによる成長やコングロマリットバリューについてより明確に訴求できるように、例えば成長戦略について、セグメント横断かつある程度まとめた単位で一定の定量情報と共に開示できないかなど、検討を行っています。また、統合報告書のみならず動画も含め、各媒体の特性を活かした開示・発信も継続的に強化していきたいと思います。
当社がこれまで以上に成長していくためには、社会や時代の要請に合わせ、常に変化する企業であり続けなければならないと考えています。今年、新たに拝命した金融アライアンス担当は、金融プレイヤーやベンチャー企業との連携をてこに、社外から「変化」のきっかけを取り込み、経営に反映させていく役割を担っています。経営戦略2027で当社が取り組む「変革する(Reshape)」のスピード感・規模感を引き上げるアクセル役となることで、さらなる企業価値向上を目指していく所存です。

  • ※1
    「PER」は、期末終値(東証株価)に、基本的1株当たり当期純利益(純損失)(当社の所有者に帰属)を除して計算している。
  • ※2
    2015年3月期から2024年3月期の株価については、株式分割後の最高株価、最低株価を記載している。

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