インベスターデイ


2024年6月にMCSV Creation Forumを開催し、67名の機関投資家・アナリストの皆さまにご参加いただきました。
当社のMCSV創出に関するトラックレコードや価値創出の源泉となるマネジメント力、オペレーション力について、および新設された地球環境エネルギーグループ、S.L.C.グループの成長戦略についてご説明・対話をさせていただいたほか、社外取締役との対談を行い、モニタリングの観点でのMCSV創出について、率直な意見交換をさせていただきました。

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個別案件におけるMCSV創出事例ーEneco社
幅広い産業接地面、産業ネットワークとインテリジェンス、深い事業知見、柔軟なビジネスモデルといった当社の総合力を活かし、価値を向上させたトラックレコードとして、Eneco社の事例についてご紹介します。
Eneco社は、電力・ガス・熱供給を主な事業内容とし、発電、トレーディング、小売り部門を有する総合エネルギー企業です。当社買収前の株主は複数のオランダ自治体から構成される企業でした。2020年に中部電力(株)と共同で買収して以降、Eneco社の地産地消・クリーン・現場力といった電力事業者としての強みを最大限に伸ばしつつ、幅広い事業知見を有する当社の人材を多数派遣し、財務・コーポレート機能の提供、企業文化・事業マインドの変革、多様な顧客基盤の提供、サステナブルな価値創造などについてEneco社と共に取り組んできました。結果、同社の当期純利益は買収時1.2億ユーロから、足元では2.5~3.5億ユーロまで拡大しており、買収時に目指していたEBITDAベースでの年平均成長率10%を達成しました。
今後のさらなる可能性として、中期的には、当社のモビリティ事業知見を掛け合わせ、EV向け電力供給や、EVを利用したVirtual Power Plant事業、リテイル事業を掛け合わせたBtoC事業の拡大などを検討しています。また、長期的にはグリーン水素や派生商品製造事業、水素需要家への総合的アプローチなど、Eneco社の発電力をてこにしたPower to X事業との掛け合わせも見据えています。これらの取り組みは、Eneco社の成長のみならず、当社の成長加速、総合力の強化にもつながるものと考えています。
最適なエネルギーソリューションの提供に向けて
地球環境エネルギーグループ
当グループは、LNG・石油・LPG事業を主要事業として展開しています。同事業を通じて培ったネットワーク・事業開発力・販売力を活かし、次世代エネルギー事業の選別的な開発にも取り組んでおり、多様な業界のエネルギー・脱炭素ニーズに応え、社会が必要とする最適なエネルギーソリューションを提供することをグループミッションとしています。また、次世代エネルギーの原料などは他グループが深く関与・強みを有している領域もあるため、グループ間での強みを掛け合わせ、MCSVの創出も目指しています。

Leaderʼs Profile
入社以来石油・天然ガス事業に従事。事業分野への深い知見を保有。トレーディングから経営管理・新規案件開発まで広く経験。次世代エネルギー事業の責任者としてEX戦略を推進。天然ガス/次世代エネルギー/石油の経験・知見を通じたシナジーを新グループでも追求。
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よりよい暮らし(Smart-Life)の創造に向けて
S.L.C.グループ
S.L.C.は「Smart-Life Creation」、「よりよい暮らしの創造」を意味し、当グループの事業領域は、リテイル、アパレル、食品流通・物流、ヘルスケア、金融、デジタルソリューションと多岐にわたります。社会課題の解決を通じて「MCSVを創出」し続けるという中期経営戦略2024のコンセプトの下、生活者に最も近い事業領域を担うグループとして、「C2B
」起点で、社会課題や生活者ニーズに応じた魅力的な事業を複数立ち上げ、モビリティソリューションや天然ガス、再生可能エネルギー、都市開発など、当社が強みを持つ他の事業領域におけるB2B事業とも密に連携することで、当社らしい総合力を活かしたSmart-Life経済圏の構築に向けて取り組んでいきます。Leaderʼs Profile
入社以来LNG事業に従事。事業分野への深い知見を基に、顧客ニーズに応じた事業開発を推進。LNGカナダプロジェクトを主導。ヒューストン支店長を通じて、北米マーケット、エネルギー・インフラ産業から素材産業等まで幅広く精通。経営企画部長として中経2024を策定・推進。生活者起点の発想で「よりよい暮らし」を追求していく。

- ※当社では、あらゆるモノやサービスがあふれる昨今の社会において選択肢を持つのは生活者であるという考え方の下、生活者ニーズを起点に成長戦略を策定。
生活者ニーズへ向き合う「マーケットイン」の発想を重視するため、いわゆる「B2C」事業もあえて「C2B」事業と定義・使用しています。
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投資家・アナリストからの質疑応答
今後、MCSVを創出していくのはどのような案件か。Eneco社のようなプラットフォーム事業の獲得によってMCSV創出を目指すのか。
中西:MCSV創出に当たっては既存事業基盤を活用し新規事業をどう上乗せていくかという点が重要だと考えている。例えば、Eneco社の総合エネルギー会社としての顧客基盤を活用しながら、欧州で普及している電気自動車(EV)のリース需要、車載バッテリーの活用、グリーン電力の活用等を組み合わせた事業を行うことでMCSVの創出につなげることができると考えている。昨今、半導体やその関連事業、デジタル事業等におけるエネルギー需要が増加しており、日本政府としてエネルギー政策を検討しているが、日本のみならず、欧州・米国でもエネルギーへの注目度はさらに増しており、Eneco社のような総合エネルギー事業会社を活用するチャンスが、さまざまな地域に存在している。今後の展開としては、即時に規模感を求めるのではなく、PoC(Proof of Concept)を行いながら事業の拡大を図っていけるように、案件を仕込んでいきたい。
次世代エネルギー事業では三菱商事ならではの特色・特徴、強みをどのように活かすのか。
齊藤:当社は米国でクリーンアンモニアやe-メタンの製造事業のスタディを行っており、将来的には、日本のお客さまに供給することを検討している。これら次世代エネルギー事業とLNGにおけるビジネスモデルは類似しており、LNG事業を通じて培ってきたプロジェクトコーディネーション能力を活かし、次世代エネルギーのプロジェクトを推進していく。
S.L.C.グループでは日本に大きな資産を保有している中、海外でのSmart-Life経済圏を構築していくとのことだが、このような事業を三菱商事が手掛ける意味や勝機は。
近藤:MCSV創出とは、総合力により社会課題を解決しながら持続的に成長を果たすことであり、社会課題に国境はない。当グループの資産は9割が日本にあるが、三菱商事全体で、過去から築き上げてきたASEAN主要国におけるローカルのコングロマリット企業との強力なネットワーク、リレーションシップがある。これらを活用し、彼らと一緒にビジネスをつくり上げる。当社が創り出せる価値の一例として、小売りのLAWSONを海外に持ち込むなど、Win-Winを目指す。
社外取締役の観点から、MCSVの解像度や浸透度、MCSVに向けた三菱商事の力をどのように見ているか。
鷺谷:中経2024策定当初は、営業グループ間のシナジーにより総合力を発揮し、当社ならではの大きなプロジェクトで収益性を上げていくという概念の議論が中心であったが、その後具体的な方策につき現場レベルで検討が進められ、その結果、現在はMCSVに関する数多くのアイデアが俎上に載せられている。DXの観点では、PoCを実践し、マーケットの反応を見て、取り組むか否かを決めるというサイクルのスピードが速まっている。推進体制においても、タスクフォースの設置や組織改編等を通じて、組織間の壁を越えた連携が強く構築されていると感じている。
秋山:例えば、強いIPを持つコングロマリットメーカーの場合は、IPが複数の事業分野に横串を刺し、それがB/Sにも表れ、コングロマリットバリューを生み出すものとして見えやすい。一方、当社はモノを作り出す立場ではなく、時代の流れに合わせてバリューチェーンをバージョンアップさせてきた軌跡をたどっており、IPのように見えやすいものがない点で説明しづらい。ただ、それに匹敵するものとして、当社はさまざまなチャレンジをする中で、成功の確率・再現性を高めるために、失敗からの学びを次に活かす、組織の力があると見ている。多様な視点から、精度の高い情報を収集し、世界の中で最も高いクオリティはどこにあり、どうすればリーチできるかを探るべく、それらの情報をマクロ的・定量的に絶えずチェックし、情報の確度が高いものであれば大胆な決断をしている。他方、先の見通しが立たないときにはこのまま進むべきか否かを見極めるという状況判断の作法も確立されている。どのような取り組みであっても成功の確率を一定以上に保つ再現性を高める仕組みこそが当社の強みであると思う。
中期経営戦略2024で掲げた「循環型成長モデル」や「MCSV」を社外取締役としてどのように受け止められ、現在の取り組みをどのように評価しているか。
秋山:中経2024は社外役員も関与し共同作業で策定したものであり、それゆえ策定直後から深いモニタリングができていると感じている。現在の取り組みに関しては、実績として見えにくい部分も含めて着々と進んでいる、との実感がある。見えない部分、例えば「未実行だがコミット済みの投資」や「仕込み中の投資」といったものを株主やマーケットにどう示すか、が重要と考える。
鷺谷:循環型成長モデルは、中経2024以前から推進しており、取締役会としても数字で実績を確認できている。社外取締役就任当初は、歴史や思い入れがある事業から撤退すること自体、社内で抵抗があるのではと想像していたが、いずれの営業グループにおいても論理的・客観的に議論の上、循環型成長レビューが運用されており、進捗状況は取締役会にも報告され、モニタリングができている。MCSVについては、継続的・定点的に対話を重ねる中で私自身は理解が深まっている。検討を進める中で、違うと思うものは中断し、新しいことを取り入れてさらなる検討が進んでいる。また、投資の是非・タイミングについては、適切なタイミングで投資実行ができるよう、常時準備が進められていると感じる。
- (注)MCSV Creation Forumの講演内容を基に再構成しています。