三菱商事

AERA編集長レポート

AERA 編集長レポート AERA 編集長レポート
中部電力ミライズ×三菱商事で暮らし全般サービスDXに挑む データからニーズを探り地域と企業と人をつなぐ中部電力ミライズコネクト 中部電力ミライズ×三菱商事で暮らし全般サービスDXに挑む データからニーズを探り地域と企業と人をつなぐ中部電力ミライズコネクト

中部電力ミライズコネクトは、中部電力のエネルギー販売子会社「中部電力ミライズ」が51%、三菱商事が49%出資して、2021年4月に設立されたベンチャー企業だ。中部電力ミライズの持つ顧客基盤と三菱商事が持つ産業ネットワークや小売り・物流の知見を掛け合わせ、新たな成長を実現していくという。
新会社設立の背景や手がける新サービスなどについて、秋山光輝社長、マーケティング本部の平岡武志さん、事業開発本部の平野恵梨さん、関貴之さんの4人に聞いた。

  • 秋山光輝

    代表取締役社長
    地域の顧客が相対する社会課題に向き合い、DXで的確なソリューションを。

  • 平岡武志

    マーケティング本部
    マーケティング部課長(企画・運営統括)

    データを探りライフイベントに応じた課題解決へ。

  • 平野恵梨

    事業開発本部リテイル事業部課長
    子育て世代の食事の利便性を高める旗振り役に。

  • 関貴之

    事業開発本部ライフケア事業部主任
    煮詰まったら、顧客の声を聞くことが大事。

片桐圭子
AERA 編集長

片桐中部電力ミライズコネクトは何をするために設立されたのでしょうか。

秋山事業基盤は地域のエネルギーを支えてきた中部電力の顧客基盤です。人口減少やエネルギーシフトが起きていくなかで、電力会社の事業環境の変化も生じている。将来の成長をどう取り込んでいくか。地域の顧客に役立つことを何かもっと提供できないか。三菱商事と組むことでより加速度的にサービスを作って提供できないか、というところから、このパートナーシップは生まれています。電気・ガスを提供する関係を起点・基盤として、地域に住む方々に寄り添い、より快適に、幸せな人生を歩んでいけるような暮らし全般のサービスを提供していきたい。社名のコネクトには我社のそうした思いを強く込めています。まだ手探り状態ですが、顧客についてもっと知る基盤を整えるところから始めています。

片桐暮らし全般サービスはすでに他社でもやっていそうですが、どう差別化するのでしょうか。

秋山中部電力の顧客データを活用します。中部電力は地元での知名度も高く信頼も厚い。その名前が社名に入っているので、信頼を得やすいと考えます。いろいろなサービスを提供して使ってもらい、そこからフィードバックされたデータを蓄積、IoT技術などを使って見える化し、さらに必要な分析を加えることで潜在的なニーズも見えてくる。そうした検証サイクルを何度も繰り返しながら顧客のニーズを着実に具現化させていくことで、いま必要なサービスだけでなく、5年後、10年後に必要なものを先回りしてご提案させていただく。すでに、ライフデザインサービスや保険商品の仲介など金融関連サービスは始めていますが、顧客に寄り添い、ライフイベントに合わせて、家計の見直しや資産形成に最適なご提案をしていく。それによって、中部電力や中部電力ミライズの付加価値にもつながっていくものを提供していきたいですね。

暮らしの多様化・高度化が進むなかで、中部電力ミライズコネクトが取り組むのは、地域の高齢者の見守りや子育て支援、食や健康などをテーマに、家族の絆やつながりを育むサービスだ。DX(デジタルトランスフォーメーション)をキーワードに、最新のデジタル技術を駆使して顧客に生涯寄り添う。目指すは「新しいサービスとDX・マーケティングとの融合」。設立時に重点分野に掲げた「金融」「見守り」「リテール(小売り)」のうち、「見守り」「リテール」サービスを2022年春からスタートさせる。

片桐「DX・マーケティングとの融合」とは具体的にどういうことですか。

平岡我々がいま目指しているのは、電気・ガスの使用を通じてフィードバックされた情報から、デジタル技術によって、顧客が必要としているニーズを探り、ライフイベントに応じた最適なサービスの構築・提案をするというものです。中部電力ミライズでは、電気・ガス契約者に、家庭向けWEB会員サービス「カテエネ」を提供しています。会員は使用量の見える化やポイント付与、会員限定の優待が受けられる。我々はここから得られる情報と家庭の電気・ガスの使用量のデータとを掛け合わせて、顧客の状況を理解します。たとえば、子育て世帯や共働き、単身などの世帯情報のほか、使用量の変化に応じて、ライフイベントなどの変化までが、世帯の推計モデルから把握できます。今後、世帯の変化のタイミングでサービスを提案することができれば、課題解決にもつながるのでは、と考えています。

電力使用パターンから
高齢者の異変を感知

片桐春から見守りと買い物代行事業の新サービスがスタートしますね。

見守りサービスは、通信機能を持った次世代電力計「スマートメーター」を設置し、見守りたい高齢者宅の電気使用量に異変が生じたときに、離れて暮らす家族などに知らせるサービスです。いつでもスマートフォンのアプリから、高齢者に異変がないかを確認できます。電力メーターは朝起きて電気をつけ、電気ケトルでお湯を沸かす、といったことも感知できます。

片桐日々の電力使用のパターンから、状況の変化がわかるのですね。

はい。しかも、カメラやセンサーといった追加の機器の設置もいりません。ですから、高齢者側の心理的なハードルも低い。この見守りサービスを活用して、離れて暮らしているご家族同士のコミュニケーションを促進できるようなサービスも考えています。かなり実証なども進んできていますが、オフィスで考えていても埒があかないことも多いです。実際に使っていただく顧客の声をいかに集めることができるか。「煮詰まったら、顧客の声を聞く」というのが大事ですね。

平岡マーケティングの側面からも、データだけでは顧客の顔は見えないです。データだと相関関係は見えても、因果関係は生の声を聞かないとわからない。仮説を立てた内容が合っているか、アンケートやインタビューなどでできるだけ顧客の生の声を聞くよう心がけています。

ネットリテイルサービスは
コストコ人気商品から

片桐買い物代行事業のスタートは会員制倉庫型店「コストコ」から。

平野専用アプリからご注文いただいた商品をお客様のお宅にお届けする買い物代行サービスですが、コストコでもとくに人気のあるお惣菜や生鮮食品を含めた幅広い商品を取り扱う予定です。どなたでもご利用可能で、メリットとしては人気の商品が買えることや、大きい商品、重い商品なども運ぶ手間がないこと。商品の配送はまずはコストコ岐阜羽島倉庫店から行います。コストコ倉庫店でのお買物の楽しさをご自宅にいながらアプリ上で体験してもらえたらと思います。

片桐このサービスは中部電力ミライズの顧客限定ですか?

平野徐々に配送エリアを広げていく予定ですが、配送エリアにお住まいの方ならどなたでもお使いいただけます。ただ、カテエネ会員には、会員限定のクーポンの発行やポイント付与などでメリットを感じてもらえる設計にしていきたいです。

秋山コストコ買い物代行事業は多くの方に利用していただいてサービスのボリュームを上げていきたいので、使いやすさを重視しています。地域の皆さまの買い物の不便を解消したい。東海地区のほかのスーパーや地元小売店にも事業を広げ、他にはない地域密着型サービスを作っていきたいと考えています。

出身は違ってもフラットに議論
共通目標は「暮らしに役立つ」

新会社が設立してまもなく1年。文化も環境も違う2社から集まったさまざまなバックグラウンドや経験を持つ若手社員たちが活躍中だ。新会社として、コロナ時代の柔軟で新しい働き方も実践中という。オフィスの雰囲気や働き方などについても聞いた。

片桐働く場所として、中部電力ミライズコネクトはいかがですか?

平野すごくオープンな会社だな、と思います。常にいろいろな人が出入りしていますし、事業部間の打ち合わせなどで基本的にいつも賑やかですね。コロナ禍以降はリモート会議が増え、自宅や移動先から参加が可能になりました。いまは子どもが体調を崩しても、自宅からリモートで参加できるのですごくありがたいです。

片桐最若手の関さんはいかがですか。

非常に働きやすいです。新規事業なので、チームでのディスカッションも多いのですが、若手でも自由に意見しやすい。会社としての規模もまだ小さいので、プロジェクトの縦割りもなく、社長や取締役とも関係が近いですね。

平岡誰ともフラットに話ができますよね。「暮らしに役立つ」というのは、部署に関係なく、我々の共通の目標。同じベクトルに向かって闊達に話ができるところがいいなと思います。

〝顧客に寄り添う会社〞
地域に不可欠な価値あるインフラ事業を

若者や女性目線の
情報収集も必要

片桐皆さん、出身母体はあまり意識されないですか。

平岡意識していないですね。出身に関係なく、意見を言い合えているな、と思います。

出身母体に関係なく、日々どんどん議論して、考えながら動き続けなければならないので、失敗を恐れている暇もないです。懐の深い上司ばかりなので、そこもとても感謝しています。

秋山コロナ禍で懇親会などができず、お互いの距離を縮めることができずにきてしまったので、そこがいまの課題かもしれません。

平岡いつも似たようなメンバーで集まると、男性目線の偏ったサービスになりがち。若い人たちが使っているアプリや、女性の目線からの意見は非常に参考になります。そうした意味でも昼間のミーティングだけではなく、懇親会等での情報収集も必要かなと思っています。

顧客に寄り添い続け
地域密着サービスを追求

片桐若手の皆さんで、将来やってみたいことなどはありますか?

最近はマンション居住者も増えて、収納場所がなくて困っている人も多いですよね。個人的には中部電力グループのアセットを活用したトランクルームのサービスも面白いかなと思っています。

平野ワーキングマザーとしては、子育て世代の食事の利便性を高めたいですね。私自身、いかに家族とのコミュニケーションをとりながら、罪悪感なく手間を省いておいしい料理が作れるかが日々の課題です。たとえばコストコの半調理品は、少し手を加えるだけで食卓が華やかになる品が多くあります。食を通じて、子育て世代の課題解決の旗振り役になりたいです。

片桐半調理品は便利ですよね。家庭の味にどうカスタマイズするかが課題でしょうか。

平野そうですね。どこまで省いて、どこから手を加えたいかは、人によって違うかもしれません。

秋山世代によっても違いますよね。私も東京から名古屋に来て9カ月ですが、八丁味噌に魅了され、味噌煮込みうどん、土手煮などもうまいなあ、と。半調理品に家庭の味を求めるなら、地域の味噌を使うなどの一手間を加えた商品開発もいいかもしれません。

片桐10~20年後の御社のイメージはいかがでしょうか。

秋山事業基盤である中部電力は地元からの信頼も厚い、地域密着型企業です。おそらく100 年後もこの地域から離れることなく、地域に貢献していくでしょう。当社としても、地域の顧客に寄り添って、必要不可欠な、価値あるサービスを作っていきたい。中部電力の社員にとっての「インフラ」、三菱商事の社員にとっての「事業」は特別な言葉です。地域のインフラとなる事業を作って展開していく。それが将来のイメージですね。将来的には、ここでのビジネスモデルを他の地域とシェアしていければと考えています。

今回、座談会にご参加頂いた皆さん。写真左から関貴之さん、平野恵梨さん、平岡武志さん、秋山光輝さん。
ページ上部へ