三菱商事

The Next ~未来を創る人たち~

The Next ~未来を創る人たち~ 当社所属池崎選手による 雑誌「AERA」での対談企画「The Next ~未来を創る人たち~」 The Next ~未来を創る人たち~ 当社所属池崎選手による 雑誌「AERA」での対談企画「The Next ~未来を創る人たち~」

ウィルチェアー(車いす)ラグビーの日本代表選手である池崎大輔が
ゲストを迎えてさまざまなことを語り合う本企画。
今回は、宇宙飛行士の山崎直子さんを招いた。
聞き手:ウィルチェアーラグビー日本代表 池崎大輔さん ゲスト:宇宙飛行士 山崎直子さん

「迷っても、時間がかかっても、諦めない」

池崎山崎さんは宇宙飛行士になることが子どもの頃からの夢だったそうですが、本当に夢を実現するまでには相当のご苦労があったのでは?

山崎そうですね。最初に宇宙飛行士の試験に挑戦した時は、書類審査の段階で弾かれて試験にすら進めなかったんです。当時はちょうど米国留学中で、たまたま宇宙に携わっている女性たちの集まりがあったんですね。隣に座ってくださった70代のおばあちゃまが、「私、ヘリコプターのパイロットなのよ。操縦が楽しいの」とおっしゃった。いくつになっても頑張っている人がいるんだ、とその強烈な出会いが私を奮い立たせてくれました。

池崎刺激になりますね。

山崎ただやっと試験に受かって宇宙飛行士になっても、すぐには宇宙に行けなかったんです。トレーニングを始めてから宇宙に行くまでに11年かかりました。いつ飛べるかが決まるまでは目隠しをしながらマラソンをしているような感覚。ゴールがどこにあるのかわからない。正直、悩んだ時期はありました。

池崎僕は4年に一度のパラリンピックというチャンスがあるからこそ、厳しいトレーニングも頑張れる。でも、いつ飛べるかわからずに訓練するのは、精神的にもつらいですよね。

山崎えぇ。でも、訓練自体は苦ではなかったんです。宇宙船について学ぶこともすごく楽しかった。だから、宇宙に行けなかったらエンジニアの道に活かそうと、どこかで腹をくくってからは、瞬間瞬間を楽しもうという気持ちで取り組んでいました。

池崎すごいなぁ。僕は、練習は嫌いなんですが(笑)それ以上に負けたくない、という気持ちが原動力です。ところで、宇宙へ行くのはどのくらい前に決まるんですか。

山崎打ち上げの約1年半前にチームが結成されます。そこに入れるかどうかが第一歩です。

池崎どうやって知らせが来るんですか?

山崎何の予告もなく突然来ます。私が連絡を受けたのは、訓練のために日本に帰国する飛行機の中。成田空港に着いてNASA(アメリカ航空宇宙局)の室長から着信があったのでドキドキしました。結局、メールで先に連絡をいただいていたのですが(笑)。

池崎そんなに突然なんですね! でも、山崎さんのお話を伺っていると、夢を諦めないことが大事だなと改めて感じます。僕も大きな夢に向かって頑張ろうと、刺激になりました。

「宇宙でスポーツ大会を開けたらいいですね」

池崎僕も宇宙に興味があるんですが、宇宙に行くための実際の訓練とはどんなものなのでしょうか。

山崎例えば、ロッキー山脈でのチームビルディング訓練。私の時は10人のチームで10日間でした。共同生活を送るための訓練は結構あります。お互いの性格を知り、チームワークを磨く。野外で訓練する時は1日毎にリーダーを交替し、全員がリーダーを経験する。リーダーもフォロワーも両方できるようにしなさいというミッションですね。

池崎スポーツでもチームワークは必須ですが、宇宙飛行士のチームワークで大切なことは?

山崎1人で抱えこまないことです。自分から助けを求めることが大切だと。一緒に宇宙へ行った船長は海軍出身の屈強な方でしたが、みんながつらい時は真っ先に「肩こったなぁ」「筋肉痛だ」と言い出す。そう言われると私も弱音を吐きやすくなる。リーダーは時に弱みを見せることでチームを引っ張れるんだと学びました。

池崎1人ではできないことをみんなで補い合いながら一つにしていくのがチームですもんね。

山崎そう。そしてもう一つ大切なのは共有すること。ある時、課題が早く終わって喜んでいたら評価は低かったんです。理由はコミュニケーション不足。自分が今どんな作業をしているか説明しないと仲間が不安になると言われました。私としてはわざわざ口に出すことはないと思っていましたが、言わないと伝わらないと。

池崎それは日本人の性格もありそうですね。

山崎えぇ。黙っている=賛成ではなくて、意見を持たないに等しいと思われてしまう。いくら優れた技能を持ち、良いプレーをしても、それだけでは伝わらない。異文化ならなおさらコミュニケーションを取る必要があると痛感しました。

池崎なるほど。僕もアメリカでプレーをする中で意思疎通の難しさと大切さを感じているので勉強になります。僕も宇宙に行ってみたいなぁ。無重力だから車いすもいらないですよね?

山崎そうです! その代わり着替えるだけでも最初は大変ですよ(笑)。当たり前だと思っていたことがそうではないと気づかせてくれるのも宇宙旅行の醍醐味です。私の夢はだれもが宇宙に行ける時代になること。そして、宇宙でスポーツの世界大会ができたらいいですね。

池崎それはすごい! 僕も大賛成です。宇宙でウィルチェアーラグビー、やってみたいですね。

山崎 直子 / やまざき なおこ

1970年、千葉県生まれ。

96年より宇宙開発事業団(現JAXA)に勤務。

99年にISSに搭乗する宇宙飛行士候補に選定され、
2010年、スペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗。

11年にJAXAを退職後は宇宙政策委員会委員や大学客員教授などを務める。

©NASA
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池崎 大輔 / いけざき だいすけ

1978年、北海道函館市生まれ。

車いすバスケットボールから2008年、車いすラグビー(ウィルチェアーラグビー)に転向。10年4月、ウィルチェアーラグビー日本代表に選出。16年にリオパラリンピックに出場。

現在、三菱商事所属。

AERA 2018年2月5日・10日発売号 掲載

企画:朝日新聞社メディアビジネス局 制作:朝日新聞出版カスタム出版部 撮影協力:宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)

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