三菱商事

The Next ~未来を創る人たち~

The Next ~未来を創る人たち~ 当社所属池崎選手による 雑誌「AERA」での対談企画「The Next ~未来を創る人たち~」 The Next ~未来を創る人たち~ 当社所属池崎選手による 雑誌「AERA」での対談企画「The Next ~未来を創る人たち~」

ウィルチェアー(車いす)ラグビーの日本代表選手である池崎大輔が
ゲストを迎えて様々なことを語り合う本企画。
スポーツを通じ幅広い分野で活躍している増田明美さん、上原大祐さんを招いた。
聞き手:ウィルチェアーラグビー日本代表 池崎大輔さん ゲスト:社会起業家・元パラアイスホッケー日本代表 上原大祐さん スポーツジャーナリスト 増田明美さん

「パラスポーツはみんなで楽しめるもの」

ゲスト:スポーツジャーナリスト 増田明美

池崎今回は増田明美さんと上原大祐さんという、すごく身近に感じる元アスリートのお二人をお迎えできて嬉しいです。お二人ともパラスポーツの普及活動に尽力されているという点も大きな共通点です。増田さんは昨年6月に日本パラ陸連の会長に就任されたんですね。

増田パラ陸上の観客は車いすラグビーのように多くないんですよ。ヨーロッパの選手に聞くと、日本では観客が少ないからテンションが上がらないとおっしゃる。だから私は、選手の応援団長になるつもりで会長を引き受けました。選手の競技力向上でスポーツとしての魅力を高める、魅力を発信して顧客を増やす。この2本の柱で頑張っていきたい。

池崎僕自身選手の立場から結果を出すことにこだわっているので「競技力向上」というテーマに共感します。具体的なプランはありますか?

増田私が選手の時もそうでしたが、場数が重要だと考えています。選手にはもっと海外へ出て戦ってほしい。緊張もしますが、場数を踏むことでどんな状況になっても適応できる対応力が養われます。強いけれど諦めも早い選手が多いなど国柄による特徴を発見できたりもします。そういうところにレースの攻略策があることも。これは実際に経験して分かることです。海外での合宿やレースを通して環境に慣れることで、大舞台を恐れず、楽しいと思える、実力を出せる選手が増えればいいと思います。

池崎僕も年に数回、アメリカのチームでプレーをすることがあるのですが、世界で経験を積むことは大切だと実感しています。上原さんは「観客を増やす」という観点から、様々な取り組みをしていらっしゃいますね。

聞き手:ウィルチェアーラグビー日本代表 池崎大輔

上原僕がパラスポーツ推進でキーワードにしていることは「イベント化ではなく日常化」「他人事ではなく自分事」の2つです。パラアイスホッケーの現役選手だった時に、リンクを借りようと思ったら貸せないと言われたことがあった。その時、まずはパラスポーツが特別なものではないという環境を作らなければと思いました。そこで僕はいろんな自治体を回って、一緒に何かをしていこうと働きかけることにも力を入れています。今、手応えを感じているのは、保育園訪問です。

池崎子どもたちとのふれ合いとは、面白そうな取り組みですね。

上原以前、ある保育園を訪問した時、子どもたちが「パラアイスホッケーの他にパラスポーツにはどんな競技があるの?」と先生にどんどん質問していたんですよ。すると先生が一生懸命調べるから知識がつく。子どもたちはまた、家に帰るとお父さんとお母さんにも聞く。ご両親も一生懸命調べるから知識がつく。保育園の訪問は、子どもたちがいろんな知識を吸収するだけでなく、子どもたちの知りたいという思いが自然と大人たちを育てる。それが世の中全体への普及につながるのではないかと思っているんです。

増田素晴らしい発想! パラスポーツを「自分事」に、という面で上原さんは「パラ友」という活動もされていますね。

上原僕の体験でもあったんですが、自分にアスリートの友だちがいたら見に行くよね、友だちがやっている競技だったら興味を持つよね、という発想から始まりました。今はイベント開催などを通じて「パラ友」のつながりを増やす活動をしています。

「課題を見つけたときはチャンスだと考える」

ゲスト:社会起業家・元パラアイスホッケー日本代表 上原大祐

池崎上原さんは、いくつも肩書きをお持ちですよね。

上原NPOと企業でパラスポーツ推進を、一般社団法人では世の中にある障がいを変えようという活動をしています。この間はアパレルブランドとコラボして誰もが使いやすい洋服を作りました。障がい者×伝統文化=産業ということで石川県で着物のファッションショーもやりました。僕たちが着られるように羽織って穿いて、と最短10秒で着られる着物を作ったんです。もしかしたらこの着物は障がい者だけでなく海外の人にうけてインバウンド消費につながるかもしれないし、和食店などのスタッフが簡単に着られるので働き方改革にもつながるかもしれないですよね。そういう広がりも面白いなと。

池崎どこからそんな発想とエネルギーが湧いてくるんですか。

上原僕の人生のテーマに「課題を楽しむ」というのがあります。課題ってネガティブにとらえられがちですが、実は課題を見つけた時は自分が何かを変えるチャンスをもらった時だと思うんです。チャンスを生かそうと思うと楽しくなりますよね。

池崎スーパーポジティブマンだと聞いてはいましたが、今日その理由が分かりました(笑)。お二人は今度開催される「第4回 障がい者スポーツシンポジウム」へも参加されますね。そこへの抱負を伺えますか。

上原今まで1回も障がい者スポーツシンポジウムに参加したことがない人をどれだけ呼べるか、来てくれた人にインパクトを与え、その後も関心を持ち続けてもらえるか。それが一番かな。

増田確かにそうですね。

上原それで、僕は今、新しい「掛け算」を考えているんです。例えばサッカーやバスケットといった異なる競技とパラスポーツとのコラボレーションですとか、音楽とのコラボレーションという「掛け算」を。今までとは違う観客層をとらえられたら面白いかなって。

「魅力を伝え、次の世代につなげたい」

増田私も今盛り上がりをみせているパラスポーツの、その先が重要だということを伝えたいですね。一過性のブームで終わらせないことが私たちの共通認識。メディアで仕事をするという私の立場から、興味を持ってくれた人が競技を楽しく見続けられるようなことを発信していきたいと思っています。スポーツ観戦って、ルールを知らないと本当の面白さがよく分からないんです。自分自身色々な場に足を運んで体感し、ルールや見所をしっかり伝えられるようにしたいなと。

池崎僕はウィルチェアーラグビーがもっと一般的に知られるスポーツとなるよう発信していきたい。パラスポーツが当たり前のようにテレビで流れる世の中になってくれれば、もっともっと世の中は変わっていくだろうし。今はそこに辿り着く途中段階なんだろうなと思っています。

上原パラスポーツは「障がい者スポーツ」といわれるので健常者にはできないと思われがちですが、車いすバスケは健常者も車いすに乗れば参加できるんですよね。本来できる対象者が多いのはパラスポーツの方なんです。障がい者の人だけのものという固定観念をどう壊していくかも含めて活動していきたいです。

池崎とても精力的に活動されているお二人ですが、最後に、挫けたり問題にぶつかったりした時に、どうやって乗り越えているのかを教えてください。

上原スーパーポジティブの僕としては、この質問が一番困るんです(笑)。やりたくても叶えられないことがいくつかあっても、きちんと向き合ったり、見方を変えたりすることでマイナスは最高のプラスになると感じています。この道がダメだったら違う道を作ろうと。ゴールへの道は1つではないと思っています。

増田私が挫けた時に思うのが、「金継ぎ」という日本の技術です。陶磁器の割れやヒビ、欠けを漆で接着して修復する技法で、金継ぎによって割れたお皿が蘇るんですが、場合によっては、修復したものの方が芸術的な価値が上がるんです。私もちょくちょく割れるので、自分に漆を塗る気持ちで立て直します。前より良くなっていることを信じて。

池崎まだまだ、朝まででも話したいんですが(笑)、今日は同じ志を持つお二人と話せて楽しかったです。ありがとうございました。

上原 大祐 / うえはら だいすけ

1981年、長野県生まれ。

パラアイスホッケー日本代表選手として、2010年のバンクーバーパラリンピックで銀メダルを獲得。現在は社会起業家、NPO法人D-SHiPS32代表として多方面で活躍。

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増田 明美 / ますだ あけみ

1964年、千葉県生まれ。

82年にマラソンで日本最高記録を樹立。92年に引退するまでに日本最高記録12回、世界最高記録2回更新。現在はスポーツジャーナリストとして解説などに携わるほか多岐にわたり活躍。

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池崎 大輔 / いけざき だいすけ

1978年、北海道生まれ。

車いすバスケットボールから2008年、ウィルチェアーラグビーに転向。10年4月、日本代表に選出。16年、リオパラリンピック銅メダル。18年、世界選手権優勝。

三菱商事所属。

AERA 2019年1月12日発売号 掲載

企画:朝日新聞社メディアビジネス局 制作:朝日新聞出版カスタム出版部

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