2025年 社長年頭挨拶

2025年1月6日
三菱商事株式会社

本年もよろしくお願い申し上げます。
本朝、当社本社(東京・丸の内)にて行われました、社長 中西勝也 による「2025年 年頭挨拶」を下記の通りご報告致します。


2025年の年頭に当たり新年のご挨拶を申し上げます。
今年は例年より長めの年末年始休暇となりました。皆さん、それぞれ英気を養い、新年への希望や抱負を胸に、本日の仕事初めを迎えられたことと思います。私自身もゆっくり、リラックスした時間を過ごすことが出来ました。こうやって、皆さんと共に新たな年をスタートできることを嬉しく思います。

加速する変化
さて、昨年の年頭挨拶で、2024年は70ヶ国以上で選挙が行われるなど地政学リスクにより不確実性が増す、また技術の更なる進化でディスラプションが進むなど「変化の年」になるだろう、と申し上げました。1年を振り返ってみますと想定以上のスピードであらゆるところで「変化」が起きていると実感されているのではないでしょうか。

例えば3年近くが経過するロシア・ウクライナ紛争に目を向けると、西洋圏は制裁を科している一方、ロシアを非難はするものの制裁に参加していない国もあります。西洋圏が自ら科している制裁そのものによって政治・経済共にダメージを受けており、混迷の度合いを深めています。

経済情勢では、コロナ後の世界の中で需要の回復があるものの、一方で紛争によるエネルギー・食糧供給の不安定化などの影響もあり、インフレ率の大幅な上昇、そして金利が世界的に上昇し、その結果として為替相場もボラティリティを増しています。米中貿易対立の激化に伴い、その影響は二国間だけに留まらず地理的にも拡大、貿易を巡る対立に巻き込まれる国が増え、グローバライゼーションから保護主義・自国主義的な通商政策への移行など、今後更なるサプライチェーン上の変化も見られるでしょう。


また、それに加えて世界の一大市場である中国では不動産不況などにより国内需要が予想以上に低迷しており、経済の成長を内需ではなく外需に求める、即ち中国にとって最大の輸出国であるアメリカ以外の海外市場に積極的に事業展開するなど、アジアに利益の源泉を持つ当社事業にも大きな影響を及ぼしています。

一方、技術革新という点でも、想定を上回るスピードで進化するAIは、社会・経済のあり方に革新的なインパクトをもたらしています。特に、スタートアップや新規事業者がAIを切り口にこれまでの発想を超えた新たなビジネスモデルを生み出すなど、異業種プレイヤーによる既存産業の「ディスラプション」が急速に進んでいます。

日本に目を転じても、日本市場に対する海外の見方が変化してきています。日本企業のPBRは改善傾向にはありますが、円安もあって割安感が出ている中、海外ファンドによる買収事例が増えており、日本を代表する会社を対象とした大規模な買収提案も起きています。

このような複雑な状況を踏まえると、我々が持つ世界ベースのネットワークから得られるインテリジェンスを最大限駆使して、半歩先、一歩先の取組みを通じて企業価値を向上させ続ける不断の努力がいつにも増して重要になっていると感じています。

変化をチャンスに
このような状況下で迎えた2025年、アメリカでトランプ大統領の二期目がスタートします。どういった政策を打ち出していくか予断を許しませんが、一つ言えることは、アメリカで起きる変化によって世界の様々な変化のスピードが加速し、その振れ幅も大きくなっていくのではないでしょうか。我々も待ったなしで迫り来る変化に覚悟をもって備えなければなりません。変化に対する対応力と柔軟性。それらが今まさに求められているのであります。

そんな変化の時代だからこそ、中経2024で掲げたMCSV、MC Creating Shared Valueの必要性がますます高まっていると感じています。

業際をまたぐ変化が各所で進行している中、あらゆる産業で事業展開をしている当社には、変化をチャンスにできる選択肢が豊富にあります。

一つ例を挙げます。昨年、最先端の自動運転車に試乗する機会を得ました。自動運転というソフトウェアが車そのもの・ハードウェアを超え、自動車を再定義する-Software Defined Vehicle-SDV、その現実を肌で感じた経験でした。

これまで自動車OEMが得意としてきたエンジン技術から、AIやソフトウェアへ差別化要因が移行しているなど、業界構造が大幅に変わってきています。
こうした自動車産業の構造変化に対しても、当社は、モビリティという切り口のみならず、エネルギー、素材、半導体、電池資源、AIユースケースなど、様々なアプローチで変化をむしろチャンスに切り替えられるポテンシャルを有しています。

この他、例えばクリーンなエネルギーとして期待される航空燃料のSAFについても、当社はエネルギー分野だけでなく、原料となる大豆など、バリューチェーン上の複数の切り口からもマネタイズポイントを探ることが可能です。


つまり、当社は、あらゆる産業接地面を持つ多様な事業ポートフォリオを有し、更に事業のオペレーションに深く関与していることによって、生きた情報を全社で共有し、様々な角度から将来を見通していくことができるのです。これは、三菱商事のユニークな強みと言えます。当社の「総合力」強化による更なる共創価値、すなわちMCSVの創出は、他社に比して決定的な競争優位を構築する打ち手になると確信しています。

ただ、こうした強みは、変化を敏感に察知し、連想し、力を結集して事業に仕立てることに挑んでこそ発揮されるものです。足下だけ見ていても変化にはなかなか気づきません。

常に先を見据え、総合力を活かして、変化を乗り越えて強い成長を実現する。
皆さんと共に、当社をそんな会社にしていければと強く思っています。


当社の原点
今年度が中経2024の最終年です。皆さんの努力で22年度・23年度も1兆円近い利益が出て、達成感を感じているかもしれませんが、逆に慢心状態に陥ってはいないでしょうか。

法令や規制に関するリスク、地政学リスク、カントリーリスクなど、我々の周りにはさまざまな「落とし穴」が潜んでいます。

会社としても、リスク管理体制を再整備していきますが、何よりも大切なのは、社員一人一人の情熱と現場主義です。現場に足を運び、顧客・パートナーを知り、業界を知り、国を知り、そしてリスクを察知する。たとえどんなに社会や環境が変わり、事業の形が変わろうとも、それらは我々が堅持すべき三菱商事パーソンとしての基本動作です。

常に謙虚、奢らず。また何事にも貪欲であって欲しいと心より願っています。

ビジネス現場の最前線で、わずかな変化を見逃さず、貪欲に新たな事業創造に繋げていく。
そうした社員一人ひとりの情熱と挑戦意欲によって、成長の種を見つけ、それを芽として育て上げ、三菱商事の将来を形づくっていきたいと思っています。

役職員一同、改めて気を緩めることなく日々の業務に取り組んでいきましょう。

疾走感のある一年に
最後に、本年の干支は「乙巳(きのとみ)」です。これは、蛇が脱皮を繰り返しながら成長していく様子を表し、「変革を重ねながら新たな発展の段階へ進む」という意味が込められているそうです。まさに、新たな経営戦略をスタートするにふさわしい一年と言えます。

新年からCMも一新しました。打ち出したメッセージは「アドベンチャースピリット」。社員一人ひとりの内に秘める情熱が創り出す新しい三菱商事像を社内外に示すことが狙いです。変化の波を恐れることなく、むしろそれを挑戦と成長の機会として捉え、新たな価値創造に挑戦する。そんな疾走感のある1年にしていきたいと思います。

中経2024の締めくくり、次期経営戦略のスタートダッシュに向けて、皆さんと今日からまた走り出したいと思います。全社一丸となって、三菱商事の将来を切り拓く年にしていきましょう。

以 上


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