One time, One meeting:「誇り」と「使命感」を胸に、あらゆる家族の食を支えたい

One time, One meeting From 三菱商事 Princes Limited 取締役 末松一仁 One time, One meeting From 三菱商事 Princes Limited 取締役 末松一仁

三菱商事が1989年に買収したイギリスの老舗食品・飲料メーカーに出向する末松一仁さん。経営改革や新しい挑戦に励む彼が考える、新しい価値とは?

「誇り」と「使命感」を胸に、あらゆる家族の食を支えたい 「誇り」と「使命感」を胸に、あらゆる家族の食を支えたい

Princes社(以下、プリンセス)は140年の歴史とブランド力をもとに欧州で食品飲料事業を展開するメーカーです。私は2016年に三菱商事から出向後、2018年より取締役に就任しました。

プリンセスは三菱商事グループとなった1989年以降、順調に業容を拡大してきました。しかし2015年頃よりその規模ゆえに機動性を失い、変化する消費者ニーズへの対応が後手にまわり、業績にも陰りが見え始め、私が着任した頃から消費者ニーズへの対応力を向上させるべくビジネスモデルの変革をスタートしました。

組織の刷新や工場の統廃合など経営の健全化を進めるも、社員の不安は日に日に強くなっているように感じました。そこで社員が自信と誇りを取り戻して働ける施策を検討していく中で、三菱商事の企業理念「三綱領」の精神が社員の心を一つにするよりどころになっていることに気づきました。事業を通じて豊かな社会の実現に寄与するという、一見当たり前ですが大切なこの理念に立ち返り、社内で新しいビジョンの策定に着手。多くの社員と共にプリンセスが目指す姿について議論を重ね、新ビジョン“Proudly helping families to eat well without costing the earth”、すなわち社員が誇りを持って「健康でおいしい食の提供」と「環境・社会的価値へコミット」する会社になることを掲げました。「プリンセスの存在意義とは?」という根源的な課題を、社員一人ひとりが自分事として深く考え、議論を深めることができたのは私にとって大きな喜びでした。

  • 新コーポレートビジョン策定時の取締役会にて

イギリスは2020年3月、新型コロナウイルスの影響でロックダウンに入り、最低限の日常品しか買いに行けない日々が続きました。サプライチェーンの混乱、欠員数の増加や工場でのソーシャルディスタンスの導入など、プリンセスも大きな影響を受けました。しかし、ロックダウン中の各家庭のニーズに応えたい、いまこそ供給を止めないのだと、社員一人ひとりが人々の大切な食を支えていることに使命を感じ、「社会に貢献する」という強い思いで取り組んでいます。また、医療従事者やフードバンクへの寄付、感染リスクの高い方への生活必需品無償託送など、食品メーカーならではの支援活動にも取り組んでいます。コロナ禍で、社員のこのような使命感を改めて目の当たりにし、プリンセスで働くことに自信と誇りを取り戻していることを強く実感できました。

私はプリンセスに着任する前にもいくつかの会社に出向し、様々な国や業界に携わらせてもらいました。こうした経験から、事業を通じて、社会課題の解決策を提案することができる、その輪が様々な国や業界で広がれば大きな力になると考えるようになりました。今はプリンセス社内で輪を広げているところですが、これからも社会のために当たり前に正しいことを続けるという同じ理念を持つ仲間と共に、「経済・社会・環境の三価値同時実現」に向けて変化を成長につなげることを実現していきたいと思います。