One time, One meeting:「次世代につなぐ持続可能なバトン」アンモニアによる低・脱炭素社会への挑戦


低・脱炭素社会を目指す動きが世界で広がるいま、燃やしても二酸化炭素(CO₂)を出さないアンモニア(NH₃)に注目が集まっている。その可能性に着目し、日本での発電燃料としての導入を目指す岡崎敦さん。彼の原動力となった欧州での体験、人との出会いとは?
現在、私はアンモニアを発電燃料として日本に導入するプロジェクトに携わっています。燃やしてもCO₂を排出しないアンモニア。これを発電に利用すれば、CO₂を排出しない、いわゆる脱炭素社会の実現に大きく貢献できます。
世界に先がけて脱炭素社会を目指すヨーロッパでは、CO₂の排出量が多い石炭火力発電を廃止する動きが急速に広がっています。しかし、エネルギー自給率が低い日本や経済性が重視される新興国では、石炭火力発電からの一足飛びの脱却が難しいという現状もあります。こういった課題に対する解決方法の一つにアンモニアの活用があります。アンモニアを石炭に混ぜて燃焼することで、既存のインフラを使いながら、段階的に温室効果ガスの排出を削減することが可能になります。さらには、アンモニアを水素と窒素に分解し、そのまま発電燃料として活用したり、分解した水素を国内に供給したりすることに関する研究開発なども進んでいます。低・脱炭素社会へ移行していくうえで、燃料アンモニアには大きなポテンシャルがあると考えています。
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ロンドン駐在中のチームメンバー
環境に関わる事業に取り組むうえで糧となっているのが、入社6年目からのロンドン駐在経験です。現地でとくに感銘を受けたのは、欧州の人々の環境意識の高さです。また、欧州各国の政府も理想を掲げるだけでなく、CO₂排出量に応じた課金や環境対応型家電・住宅購入への補助金などの制度を策定しており、市民・企業に対する環境問題への意識付けのうまさを実感しました。駐在の後半には、欧州各地での次世代燃料に関する調査やヒアリング、評価などの事業開発にも携わりました。最先端の取り組みの知見が得られ、現在の脱炭素社会を読み解く軸として大いに役立っています。
先輩や上司からも多くのことを学びました。入社4年目、社内で指摘されたリスクを理由に新規案件を諦めようとして、「どっちを向いて仕事をしているんだ?」と上司から言われたことがあります。この案件が実現したら社会や環境にどんな意義があるのか、理想の未来を想像することなく、案件を進めていく際のハードルに目が行って安易に見送ろうとした姿勢を正されたのです。以来、私はどんな案件も社会的な意義や将来の可能性を考え、できない理由を探すのではなく、まずはチャレンジしようと思うようになりました。
アンモニアを発電燃料として使うには、まだコスト面や流通面など、まさに「ハードル」がいくつもあります。しかし、それを乗り越えた先には、新しい社会の姿があります。持続可能な地球環境を次世代につなぐ。そんな未来を見すえ、まずは目の前の仕事に着実に取り組む。そして自分の子どもが大きくなったとき、「これがお父さんの仕事だ」と胸を張って語れるような仕事をしたいと思っています。