三菱商事

プレスルーム

2019年4月1日
三菱商事株式会社

2019年度新入社員への社長メッセージについて

本日、当社は130名(スタッフ(総合職)123名、ビジネスサポートスタッフ(一般職)7名)の新入社員を迎え入社式を行いました。社長の垣内 威彦より新入社員に対するメッセージがありましたので、以下の通り内容をご案内申し上げます。
 
新入社員向けメッセージ
 
【はじめに】
皆さん、三菱商事への入社おめでとうございます。三菱商事を選んでくれてありがとう。
こうして皆さんと私がこの場でお会いできたことも天文学的な確率の何かの縁であり、また、皆さん全員を前にしてお話をさせて頂くのも、これが最後かもしれません。毎年、どんな人たちが入社してくれたのかなと、私はこの日を楽しみにしており、こうして見渡すと、しっかりとしたやる気に満ち溢れた皆さんの目を確認できたので、心から嬉しく思います。
 
三菱商事は創業以来、社員が会社を切り盛りし、会社の行く末も全て社員で決めてきた会社であり、社員の成長が会社の成長と一体化している典型的な会社と言えます。その意味で、皆さんの人となりや潜在的な能力に大いに期待しています。
 
経営としては、その能力を引き出せる場を提供しますので、皆さんには益々成長して、三菱商事を引っ張ってもらい、そして世の為、人の為に貢献して頂ければと思います。本日、新元号が発表となりますが、皆さんはそういった節目に入社され、何かの縁や運を持った方々だと思います。前途洋々の未来が待っていることを信じて止みません。
 
【外部環境と世界経済】
当社は昨年11月に「中期経営戦略2021」を発表しています。まず、どういった時代認識や考え方で中経策定に至ったのかお話しします。
 
人類誕生以来、1700年代近くまでは産業化を推し進めるほどの動力も機械もない状態でしたので、生活のリズムやスタイル、価値観は途方もない時間を掛けて形作られてきました。1700年代中盤以降に蒸気機関を発見したことで、それ以前に人の力でモノを動かし、自分の力で歩いていたものが、蒸気の力を使って機械化を達成しました。同時に、社会の仕組み・価値観、そして人間がやるべきことが急速に変化しました。それをターニングポイントとして、歴史的に「産業革命」と称している訳です。
 
その後、19世紀半ばの電力の発見や20世紀後半にはコンピューターの発明により、自動化を成し遂げています。そして今、デジタル化、人工知能を駆使するようになり、人間の能力を上回る可能性すら出てきており、これを第4次産業革命と呼んでいる訳です。
 
その影響も受け、シェールガスやシェールオイルがアメリカで登場し、エネルギーの生産国と需要国が逆転するようなエネルギー革命も起こっています。環境面でも省エネ、再生エネルギー(風力やソーラー等)が生まれ非常に短期間で成長しています。スマートフォンは登場してたった12年の間に人間の生活スタイルや価値観を急速に変化させました。
 
この第4次産業革命、すなわちデジタル化やAI/IoT等により、様々な産業でビジネスモデルのイノベーションが起こっています。携帯・通信・デジタル分野やモビリティ分野(自動運転・電気自動車等)、バイオテクノロジー分野、スマートシティと言われる複合都市開発等、が挙げられます。様々なところでダイナミックなイノベーションが起こって、産業間の壁がなくなり、まったく別の多様化した産業が急速に登場しています。産業界が沸騰したようなイノベーションの真っ只中にあり、且つベーシックなファンダメンタルズは原則強く、当面は大きく世界経済が下振れしたり、大変な状況に陥る可能性は少ないと見ています。
 
一方、このデジタル化には「光と陰」があり、そうした陰の部分を改めて分析する必要があると考えています。
例えば、若者を中心に、起きている間ずっとスマートフォンを使用している人が増えている。これは人間の習性・習慣からすれば、有史以来初めてのことであり、何かネガティブなファクターが出てくる可能性はないのでしょうか。また、個人情報の取扱いについては、個人情報は誰に帰属するのかという社会的課題が議論されていることに加え、SNS等を通じた偏った情報が提供されることによって、本来人間が持っている価値観はどのような影響を受けるのでしょうか。さらには、AIにより、自分がサポートする意見ばかりが入ってきて、反対する意見が入ってこなくなり、意見が両極に偏って分布する。結果的に、中庸、即ち中間層がいなくなって、個人の考え方も極端になる。自問自答をしながら、一定のところに収斂する、という民主主義の根幹である選挙の結果が右から左に大きく振れるような現象をどう考えるべきでしょうか。
 
【米中関係について】
総括しますと、技術革新、即ち産業革命はその時代の価値観や常識を破壊して、新たな社会規範を創造することに他なりません。過去の産業革命で、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカといった国々が技術革新をリードし、軍事的優位性も担保しながら、世界をリードしてきました。そして第四次産業革命を巡って最先端技術を競っているのが、今話題になっている米中と思わざるを得ません。
 
これまでの技術革新の原動力はイノベーションですが、それは民主主義、資本主義下で個人の創意工夫により起こってきました。それではなぜ一党体制の中国でイノベーションが起こっているのでしょうか。それは恐らく中国は技術革新が国を繁栄させる有効な手段だということを理解し、この20年来、民間企業をサポートしたり、世界中に留学生を多数派遣したり、といった手を打ってきたのだと思います。また、共産党は13億人の中国人の代表として、大学の成績優秀者で構成される約8千万人の開かれたエリート集団だともいえます。そういう意味では、技術革新を促進するような体制に、政治的にも経済的にも、相応に意図して少しずつ進化していると考えるべきです。
 
一方、米国を中心とした自由主義、民主主義の国の中には、今の体制のままで本当に正しい政治ができるかどうか、そういう政治体制の中でイノベーションをこれからも積極的に展開できるかという懸念のある国もあります。
 
何れにしても、技術革新をリードする国には、先述の技術革新による「陰」の部分を是非克服してもらいたいと思います。米中の競争の決着には時間がかかるということは間違いないと思われ、両国の長所を融合する形で共存しうるような仕組みが出来ることを切望しています。
 
【中期経営戦略2021】
三菱商事には創業以来、三綱領というものがあります。これに加え、経済・環境・社会の三価値の同時実現も経営上の大きなテーマです。これまでの環境認識をふまえた今後の経営方針として「中期経営戦略2021」を策定しました。
 
まず1点目が、「事業ポートフォリオ戦略」です。当社の強みを活かし、時代の変化を捉え、その時代に相応しい事業ポートフォリオを自らの意思で構成していくことを戦略の一番に掲げました。次に攻めるべき分野や入替えを進める分野等を検討し、向こう3年間で生み出される予定の3兆円の原資をどうマネージするかが、最大のテーマとなります。何を選び、何を選ばないかは、三綱領や三価値同時実現という理念に基づいて判断しています。当社の今があるのは、創業以来、その判断の拠り処とする信念・理念やしっかりした仕組みを持ってきたからだと考えています。
 
2点目は、「成長のメカニズム」です。当社に強みがない事業分野は他社に譲ることも含めて事業の入替えを行なう一方で、当社の総合力を通じて事業機会を俯瞰、成長の芽を発掘し、構想力を駆使して事業価値を向上させ、収益の柱にしていきます。
 
3点目は、「組織改編」です。AI/IoTの影響もあり、それぞれの事業分野間で連携の機会が非常に多くなっています。長い期間、グループの括りを維持してきましたが、新たなビジネスモデルを作る時代に入ってきたので、従来の壁を破るという観点でグループを再編しました。新グループのどれをとっても、いままでと同じ名前のものはありません。
 
最後に「人事制度の改革」も行いました。20年程度時間をかけて一人前としていたところ、10年もあればある分野でプロになって、その後は経営的な能力を蓄えながら、様々な分野で活躍してもらうような仕組みにしました。
 
【三菱商事の求める人材像】
三菱商事の人材はどういう人材であるべきかという点ですが、4つあります。
 
1つ目は、「高い倫理観」。三菱商事の社員が関連会社のCEO、CFOとして赴くケースが多くありますが、その為には高い倫理観を持って欲しいと思います。経営能力を持った人材とは、コンプライアンスの遵守は当然で、組織を動かす為に、自分がその鑑となり、包容力を持って謙虚で、誠実な人となりであるべきと思います。
 
2つ目は、「真贋を見分ける眼」。AIが選別した情報が溢れる中で、何が正しいのかということを見極めるようなものの見方をしてください。自分の考えをしっかり持って、自分の言葉で説明できる人になってください。
 
3つ目は、「チームプレー」。会社は一人ではなく組織単位で行動しているので、For the Teamということを学んでもらいたいと思います。Teamのメンバーと、喜びも、悲しみも共有することを体感してもらいたいと思います。
 
最後に、「強い心」。これから、様々な困難が訪れるかもしれませんが、是非強い心を持って頑張ってもらいたいと思います。これから皆さんがビジネスに関わる中で、きっと「ここ一番の勝負」というタイミングが来ると思います。そのようなときに、皆さんの全人格が問われます。どれだけ論理的であっても、どれだけ正しいことを言っても、最後は信頼されることが大事です。
 
さて、今日の午後に配属先が発表されます。お伝えしておきたいことは、今存在している当社の「収益の柱」と呼ばれる事業が、かつては小さな成長の芽であったということです。それらが三菱商事の成長のメカニズムの中で成長し、現在の当社のポートフォリオのコアになっています。配属先がどこであったとしても良し悪しはありません。まずは配属された分野でプロになることで、是非頑張ってもらいたいと思います。
 
また、コーポレートに配属される方々も同様です。人事・総務・法務・財務等に強みを持つ人は経営者になる近道であると捉え、当面は配属された部局で自らの強みを強化するという思いで頑張ってもらえればと思います。
 
【結びのことば】
最後にふたつのメッセージをお伝えします。
 
1つ目ですが、私はかつて先輩から「我慢を伴う行為は、より高度な思想的、認識的な成熟、即ち成長をもたらす」と言われました。時に我慢することによって人間はより成長する、という意味です。
 
2つ目は、「至誠にして動かざるものは、未だこれ有らざるなり」。自分が正しいと思って一生懸命努力すれば、それを理解しない人はいない、という言葉です。
 
皆さんの成長は会社の成長に直結します。
皆さんの能力に大いに期待しています。経営はその能力を活かせる機会を作っていきます。
是非頑張ってもらいたいと思います。
 
※参考情報: 2019年度新卒採用実績
 
スタッフ(総合職)
文系
理系
院卒
学部卒
院卒
学部卒
9(3)
86(22)
17(2)
11(4)
小計
95(25)
28(6)
ビジネスサポートスタッフ(一般職)
7(7)
合計
130(38)
 
※( )は女性数
※ 4月末時点の数値に一部更新しております。
以 上

ニュースリリースに関するお問い合わせ先

三菱商事株式会社 広報部 報道チーム
TEL:03-3210-2171 / FAX:03-5252-7705
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