三菱商事

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2020年1月6日
三菱商事株式会社

2020年 社長年頭挨拶

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本朝、三菱商事本社(東京・丸の内)にて行われました、当社社長 垣内威彦 による「2020年年頭挨拶」を下記の通りご報告致します。 
 
 
記 
 
【はじめに】
あけましておめでとうございます。
皆さんそれぞれに新しい希望や思いをもって新年を迎えられたことと思います。
何よりもこうして皆さんと2020年という新しい時代を迎えることが出来たことを心から感謝しています。
 
【昨年の振り返り】
昨年の年頭挨拶で、「亥年だからといって猪突猛進するのではなく、むしろじっくり考える思索の年にしたい」と申し上げたことを今、思い返しています。
まさに昨年は三菱商事にとって困難な年でありました。シンガポールの子会社で大きな損失が発生したことに対しては、私自身、結果責任を負う当事者として重く受け止めています。この様な損失が二度と起こらない様に、気を引き締めて経営に全力を尽くしていきます。
また、デジタル化があらゆる産業で既存のビジネスモデルを崩壊させ、環境問題がエネルギーのみならず全ての産業に大きな変化を求めています。こういった世の中の既存の仕組みや価値観に修正が求められる状況に三菱商事がいかに対応すべきかということに、極めて強い危機感を持っています。中期経営戦略2021で逆L字戦略を打ち出し、長らく続いていた組織・人事制度の改定を決断した背景には、この強い危機感があったことは言うまでもありません。
 
昨年来、中経の趣旨を社員全員の皆さんに理解してもらうべく、経営陣一同全力を尽くしてきましたが、一年間だけでは全ての社員の皆さんまで行き届いていなかったのではないかと思います。引続き説明会や対話、あるいはメッセージを通して、出来得る限り共通の認識が社内に行き渡る様に努力していきたいと思います。
 
今年は鼠年ですが、鼠の様にせわしなく動くのではなく、役職員全員の叡智を集めて、事業構想したプロジェクトを確信を持って実行・実現する一年にしたいと思います。
 
【外部環境の認識】
外部環境に対する認識について3つのテーマで話をしたいと思います。
その前に、直近の米国とイランの緊張について、まずコメントさせて頂きます。そもそも米国は、シェールオイル、シェールガス等、エネルギー政策の転換の中で、中東におけるプレゼンスを減少させていく方向にあります。自国の司令官が殺害されたことによる反米感情の高まりからイランが報復に出る可能性は否定できませんが、一方、米国は大統領選挙を控えている事情がありつつも、イランの体制を変えるところまで言及してはいません。本件が中東地域における本格的な戦争に発展することなく、収束の方向で整理されていくことを心から望んでいます。
 
外部環境の第一のテーマは「米中の分断」についてです。貿易上は何らかの合意ができたとしても、米中間の問題は基本的な政治・経済体制やイデオロギーの違いに起因するものであり、中長期にわたり不安定な状態が続く可能性が高いと考えております。「トゥキディデスの罠」を回避し、米中それぞれが現在のデジタル化時代にふさわしい政治・経済体制に修正していく過程で、お互いの体制を容認し合える様になることを期待したいと思います。ちなみにデジタル化の基となるAI/IoT技術は、やがて国家そのものを合理的、安定的に運営するために不可欠なものになってくると思われます。国民及び企業の情報を一元的に管理できる中国にとって、プラスに作用する可能性が極めて高いことは留意しておく必要があります。
 
二つ目のテーマは「環境問題」です。先のCOP25でも日本のことを取り上げる報道が相次ぎました。パリ協定や気候変動の議論が今後どうなっていくのか注目しています。気候変動の取組みは、今後の産業や社会の在り方をどうするべきかという問題に密接に関係している議論であり、簡単に答えが出る問題ではありません。特にエネルギーの関連では、各国は安定供給という社会的責任を負っている中で、環境問題のみならず、社会の安定、自国経済の発展をいかにして同時実現するかというテーマに向き合うことになります。三菱商事としては、将来の安定を、また将来の変化を見極めるために、あらゆることを想定した上で、柔軟に対応できる明確な道筋を見出しておくことが大切だと考えています。
 
三つ目は、デジタル化によって既存のビジネスモデルが破壊される、文字通り「デジタルディスラプション」についてです。デジタル化の進行によって、デジタル武装した企業は、武装できていない既存のビジネスモデルを破壊してしまうので、一見ネガティブに捉えられますが、一方でポジティブな面としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進むことです。破壊されていく企業と、進化していく企業とに、二極化していくことになり、これこそ、デジタル化による破壊と創造であり、第四次産業革命の中心、中核の実態です。ある企業は崩壊し破壊され、ある企業は新しく創造され、あるいは強化される。こういうことが色々な所で動いています。今この瞬間のみならず、これからも中長期にわたってこの状態が続くと考えています。今日の混沌とした状態における、各企業の生死を賭けたDXを導入するパワーはマグマのごとく強く、なかなか世界の実体経済は下振れしないと思っています。ちなみに昨年の世界のDX市場規模は130兆円、2025年には390兆円になるとの予測もあります。従って、今回のデジタル化による産業革命は、まだまだ続くと思われます。
一方、残念なことに、日本は良し悪しは別として、年功序列、終身雇用の問題もあって、先進国の中ではDXが最も遅れている国の一つです。今後、全ての産業でDXが導入され、生産性の向上を目指す必要があります。
 
2020年にあたって】
次に2020年にあたり、皆さんに改めてお願いしたいことがあります。
現在担当している業務は非常に大切であり、引き続き頑張って頂くことを前提としつつも、それに加え、仮にDXを導入すればどうなるのかを、夫々の立場で深く考えて欲しいと思います。
昨年11月にオランダEneco社の買収の優先交渉権を獲得しました。また年末にNTTとDXに関して業務提携しました。第一弾として位置情報システムサービスに強みを持つHEREに共同出資することも発表しました。これで、これまで三菱商事に不足していたピースが揃いつつあります。いよいよ実業の中でこれらを繋げて、新しいビジネスモデルを本気で作り上げる段階に入ることになります。
特に、昨年末に発表したNTTとの業務提携は、今後の三菱商事の行く末を決める大きな転換点になると考えています。三菱商事の産業知見と、NTTのデジタル知見や技術のそれぞれを活かして、産業のDX化を推進し、旧態依然とした日本の産業の生産性を飛躍的に高めようという取組みです。
先ずは、三菱商事が圧倒的に強い基盤を持つ食品流通や産業素材流通業界を対象にDX化に取り組んでいきますが、あくまで産業レベルでの変革を推進することを意図しており、三菱商事の事業効率化・生産性向上に留まるつもりはありません。
その業界で共通化できる商品コード、受発注や入出金の手続き、倉庫管理・発送や物流等をAI/IoTを通じて相乗りさせることで、飛躍的な効果を達成できることになります。共有できる部分はデジタルプラットフォームを共有し、本来自らで競争すべき部分、例えば、メーカーであれば商品開発・品質改善に経営資源を集中できることになります。もはや、商品という名の特定の有形物に限定して物事を考える時代は終わったのではないかと思います。あらゆる産業に関与している三菱商事の産業知見をベースに、顧客や様々な業界との間の業務プロセスを見直し、各産業でのDX 化を担うデファクトスタンダード、すなわちデジタルプラットフォームを構築することで、今までとは異なる形での、業界再編も含めた大きな変革を起こせると確信しています。ある業界で創ったデジタルプラットフォームを、他の業界へ次々にコネクトしていくことも可能です。社員の皆さんが関与・対面している業界を改めて客観的に見て、デジタル化が遅れているという認識であれば、今のままで未来はあるのか、考えてみて欲しいと思います。それぞれの事業の現場で何を変えていくべきか、当事者意識をもって議論し、産業やデジタルの知見・技術を最大限活用してもらいたいと思います。
今回のEneco、HERE、NTTとの業務提携に代表される様な、グループを超えた構想を具体化する動きが、色々な部局で生まれ始め、また今後の方向性が明確な状態になりつつあります。その実行速度を加速させるために、それらのプロジェクトを強力に推進する組織を作りたいと思います。自ら構想し、組織を作り実行する、これを実現するために、グループを超えた異動がどんどん起こる。そういったことが、普通となる三菱商事になればと期待しています。
 
最後になりますが、今年は、三菱グループ創業150周年にあたる年です。偉大な先人たちは、それぞれの時代認識を正確に捉え、自ら事業を構想し、産業を興してきました。今を生きる我々も、我々なりの自覚をもって社会に貢献できる様、2020年を三菱グループ創業150周年の門出の年にしたいと思います。
 
 
 
以 上
 

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