三菱商事

プレスルーム

2021年1月4日
三菱商事株式会社

2021年 社長年頭挨拶

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本朝、三菱商事本社(東京・丸の内)にて行われました、当社社長 垣内威彦 による「2021年年頭挨拶」を下記の通りご報告致します。 


 
皆さん、明けましておめでとうございます。
昨年は新型コロナウイルス一色の年となりました。国内でも第三波が深刻化しつつある中、普段の年末年始とは違った過ごし方であったのではと思います。
 
昨年の2月末から6月末迄、国内は在宅勤務を原則とする体制としましたが、一部の社員には企業維持の為に出社をお願いせざるを得ないケースもありました。また、海外駐在員についても、現地に留まってもらった社員、緊急一時帰国した社員、今も現地に着任できず遠隔で業務に携わっている社員など、それぞれの状況に応じての対応となりました。
 
ご家族のストレスや生活設計も含め、大変困難な状況の中で仕事を続ける為に歯を食いしばって協力頂いた皆さんに改めて感謝したいと思います。
 
幸いにも、一部の国ではワクチンの接種が始まりました。世界各地で広く使用されるまでには、今暫く時間がかかりますが、人々が感染の恐怖から解放され、社会・経済活動が早く正常化することを心から望んでいます。
 
本日は3つのテーマで話をしたいと思います。
 
まず1つ目は地政学リスクについてです。
 
コロナ感染における世界の様相は、まるでタイムスリップをして10年先の世界を見せられている様な気になってきました。世界中で中国のみがコロナ禍からいち早く抜け出し、順調にGDPを拡大させていることにより、国際的なプレゼンスが増しています。2030年頃には中国が米国を経済力、軍事力の両面で凌駕し、世界の覇権国となる未来を予言しているのかもしれません。
しかし、現実は2030年まであと10年弱あります。その間、米国は中国にいかに対応していくのか。そして中国の隣国に位置する日本はどうあるべきなのか。2021年の新年にあたり、地政学リスクの最難解テーマはまさにそこにあるのだと再認識致しました。
 
中国のコロナ封じ込めに関する一連の報道が正しいとすれば、感染対策における中国の優位性は3つあると思います。
  1. デジタル化によって、国民の全ての行動を容易に掌握できる為、感染拡大を完璧に防ぐことができる事。
  2. 国家による計画経済によって、マスク・医療機器・治療薬・ワクチンなどの自国での生産体制が完備されている事。
  3. 個人データの積み上げから消費動向を解析出来る為、全てのサプライチェーンを最適化するシステムを作ることによって計画的に自国経済をコントロール出来る事。
 
もちろん、中国以外の国々もデジタル化によるコロナ対策は技術的には可能ですが、解決すべき問題として、個人データの収集・分析に関わる人権問題への対応や、その秘匿性についての判断が必要となります。特に民主主義国家においては、個人データを誰が収集、保有、使用できるかのルール作り無しに国家がデータを乱用する事は考えられません。
 
少し話が逸れますが、私は、民主主義は更に進化する必要があるものの、その基本理念においては、今なお大変良い政治体制だと思っています。特に、選挙を通じ、政治、経済が定期的に新陳代謝され、次世代の若い人達へとバトンを繋いでいける政治プロセスには、人類が繁栄していく為の本能的な強みがあると思えるからです。「何でも言える自由な環境の中で、自立した一人ひとりの人間が、一所懸命に勉強し研究し、創意工夫する事によって、イノベーションは生み出される」と言う民主主義の定説を、私は信じたいと思います。
 
2つ目は脱炭素の奔流についてです。
 
日本は昨年の10月に菅首相自ら「2050年迄に温室効果ガスの排出実質ゼロ(ネットゼロ)を目指す事」を宣言しました。時同じくして、中国も2060年の時間軸で同様の目標を掲げました。バイデン新大統領もパリ協定への復帰に関連して、就任1期目の4年間で2兆ドルの国家予算を投じる公約を掲げて当選しました。ヨーロッパに端を発した脱炭素の動きが、日・米・中へと世界中に浸透し、この流れは不可逆であることが鮮明になりました。
長年に亘り、エネルギーの安定供給の責務を担ってきた三菱商事としては、いっそうの責任と覚悟を持ってこの流れに適応していく必要があります。三綱領の精神の下、「経済」「社会」「環境」の三価値同時実現を、三菱商事の事業戦略として具体化していく事を改めて約束したいと思います。
 
3つ目は三菱商事の最重要戦略である2つのX(Transformation)としたDXとEXについてです。
 
昨年は「DX」に加え「EX」という言葉を使って、今三菱商事が検討すべき事を端的に示しました。昨年の年頭挨拶では、「DXを導入するパワーはマグマのごとく強い」と申しましたが、今や「EX」ももう一つのマグマとして、ともに産業界に地殻変動をもたらそうとしています。
 
全社DXタスクフォースでは案件の具体化を着々と進めており、いくつかの案件は近々公表できる段階にあります。全社でも60を超えるDX案件が動いており、各現場ではその実現に向けて邁進しています。
DXの実行に当たっては、「強い意志」が求められます。DXの本質は、過去のやり方を否定して、効率化・省力化を目指して業態そのものを変革する事にあります。課題を解決する為には各業界の関係者に真摯に向き合い、理解が得られるまで対話する「強い意志」が成功の鍵となります。
 
「EX」については、昨年エネルギー関連事業を管轄する3つのグループCEOで構成する「エネルギー委員会」を立ち上げました。その後7ヶ月で20回近くも議論を重ね、2050年ネットゼロの世界観を踏まえた三菱商事の戦略を練っています。
 
そこでは、再生可能エネルギー拡大による脱炭素化、火力発電の更なる低炭素化、その先には将来的な水素社会の到来も見据えています。三菱商事の温室効果ガス削減に留まることなく、欧州の先行事例を他地域へ展開することや、電動車や蓄電池を組み合わせ、産業を超えた取組みを目指します。エネルギーは、産業のみならず、人々の生活にエッセンシャルなものです。その安定供給という責任を全うしながら、並行してCO2の削減という社会課題も解決していく為の「最適解」を検討しており、21年度中にはこれを公表する予定です。
 
「DX」も「EX」も、その裾野は広く、決して特定の業界に限ったものではありません。例えば、「DX」の取組みにおいて小売りの需要を把握し製造プロセスや物流の効率化につなげていくことは、自動車から排出されるCO2や食料の廃棄ロスの削減にも貢献する事になります。また、スマートシティの開発でも、都市運営のデジタル化に地産地消の再生可能エネルギーを導入することで、消費者のニーズや意識に応えた付加価値の高い取組みにつながっていきます。まさに「DX」と「EX」は一体となって実現していくことになります。
 
単にデジタル化や脱炭素の潮流に「対応」するだけではなく、これをビジネスチャンスと捉え、最終的には消費者にどのようなサービスや価値を提供していくかまで構想を深めることで、初めて三菱商事らしい「DX・EXの一体戦略」と成るのです。
 
三菱商事はこれまで、三綱領の理念に基づき、様々な産業分野で、Transformationを為すことによって、社会課題を解決しながら成長してきました。今、まさに皆さん一人ひとりの周りにその機会があると確信しています。「食」や「エネルギー」など、あらゆる産業でサプライチェーンをつないでいって、最終的には個人消費のデータと連携して適時適量の需給調整ができるシステムが出来ればと考えています。これこそが我々の真骨頂であり、このDNAを改めて発揮する絶好のチャンスだと思います。
 
最後になりますが、これから皆さんが色々な仕事を推進していくに当たって、どうしても相手に理解して貰いたい場面があるかと思います。自分の話を相手に理解して貰いたい時の心構えについて話しておきます。
 
先ずはその話の内容が論理的であることが大前提です。しかし論理的なだけでは相手はついて来てくれません。一番大事なことは「信頼」です。相手からの「信頼」を得て初めて聞く耳を持って貰えるからです。その上で、情熱を持って「共感」を得ることで、漸く理解し合えたことになります。これは古代ギリシャの紀元前4世紀に活躍した哲学者アリストテレスの、「人を説得する為の3要素」です。
敢えて重要な順でいうと、信頼、共感、論理という事になります。2400年続いている人間の極めて本質的なコミュニケーションの要諦、永遠に不滅の真理と言えます。是非参考にして下さい。
 
昨年は社員の皆さんへのメッセージを発信することや社員の方々との対話に、多くの時間を割くことが出来ました。今年も引き続き社内外での議論を重ねた上で、全社一丸となって、次世代にふさわしい新たな三菱商事へと進化を続ける一年にしたいと思います。
首都圏をはじめ、多くの感染者が出ていることが連日のように報道され、気の抜けない日々が続いています。くれぐれも健康に留意しつつ、ともに頑張っていきましょう。

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