想定外のトラブルにも、柔軟な対応ができるわけ
玉川5人の社員の方々にインタビューをして印象深かったのが、まず、「想定外のトラブルや予測不能な出来事に対処する力」に非常にたけているということです。
例えば、第1回の西村昌之さんは、ノルウェーの出向先で自らの行動によって周囲の信頼を獲得し、自身のポジションを切り開いていった。第2回の岸川典子さんは、モンゴルの新空港開港の時期にコロナ禍に見舞われるも、様々な手を打って雇用を守り抜いた。目の前の困難な状況に柔軟に対応し、着実に成果を上げる。この見事な適応力というのは、どうやって磨かれているのでしょうか。
吉木若手のうちから現場に出て多種多様な経験を積んでいる、という点が大きいと思います。三菱商事では、入社後かなり早い段階で「まず、やってみて」と現場に送り込まれ、様々な業務を担当します。現状の課題は何であり、自分は何をするべきか、「自分の頭で考え行動する」ことが求められるのです。
とにかくやってみて、失敗から学ぶ。上司・先輩のアドバイスや、お客さまの言動から学ぶ──。それを繰り返すことで、自分なりの仕事の「やり方」「軸」が構築されていきます。日々の多様な業務に向き合いながら、社員それぞれがキャリアに応じて「軸」をブラッシュアップし続けているからこそ、想定外の事態に直面しても、柔軟に対応できるのだと思います。
玉川失敗してもいいからやってみる、というところから始まるのですね。
吉木はい。むしろ「何も言わない・行動しない」ことの方が、マイナスに受け止められるように思います。
玉川吉木さんご自身も、想定外のトラブルに見舞われたことはありますか。
吉木もちろん山ほどあります。私は2024年に人事部にくる前まで、宇宙航空事業に携わっていました。入社1年目にトレーディングを担当していた際、「海外メーカーのある部品の納期が遅れそう」という一報が入りました。三菱商事の納期が遅れれば、我々のお客さま、その先のお客さま、さらにその先のお客さまの納期にも影響しますし、信用問題に関わる。当然、莫大(ばくだい)な違約金も発生します。
玉川入社1年目でそんな事態に見舞われたら、私なら真っ青になってうろたえてしまいそうです(笑)。どう対処されたんですか。
吉木私も当時「大変なことになった……」と大きなプレッシャーを感じましたが、決して1人で対処したわけではないんです。上長や先輩も含めたチームの皆で原因究明を進め、知恵を絞って次の策を探りました。既存品で代替できるものはないか、サプライヤーを変えて対応できないか、出荷元が他国向けに準備していたものを日本向けに変更してもらえないか、等々。様々な手を打って、この時はなんとか納期に間に合わせることができました。
こうした新人時代を振り返ってみても、上司や先輩にはとても恵まれているなと思います。私の周りには、手取り足取り教えるというよりは、「背中で見せる」タイプの人が多かったですね。その姿を追いかけるようにして必死にやってきました。
強い「個」が集まってこそ、「組織」はさらに強くなる
玉川いまのお話とも関連しますが、「チームワーク・協働を重視し、複雑な問題も力を合わせて解決する」という姿勢も、社員の皆さんに共通する要素だと感じました。例えば、第4回の草野峻輔さんは、国も組織も超えた抜群のチームワークで、インドネシアでの大ヒット車の開発に成功しました。
吉木「組織の三菱」と形容される通り、チーム・組織として結果を出すという点は、三菱商事がとても大切にしていることの一つです。この言葉は時に、「個はそれほど強くないのでは」「トップダウンの組織でものが言いにくいのでは」などと誤解をされることがありますが、決してそうではありません。
一人ひとりのあらゆる意見を俎上(そじょう)に載せて議論し、組織として最適な方針を定めたうえでワンチームで動く、というイメージです。強い「個」が集まった「組織」だからこそ、総合力を発揮し、成果を上げることができるのだと思っています。
玉川社員の皆さんのたゆまぬ「チャレンジ精神」も印象的でした。それから、現場の方の裁量がとても大きいですよね。規模の大きな事業ですし、本店の判断をもっと仰ぐのかと思っていたので意外でした。
吉木前提として、「現場にいる社員が、一番のプロフェッショナルであり、主たるプレーヤーである」という認識が三菱商事にはあります。現場に近いほど、事業環境の変化を肌で感じるものですし、様々なステークホルダーの考え方も理解していますから、現場の社員が「どう考え・どう動くか」を重視しているのです。本店や各組織の上長は、方向性やビジョンを示す、必要に応じて軌道修正をしたり、異なる視点でインテリジェンスの提供をしたりするなど、現場とは違うところで大きな役割を果たしています。
玉川吉木さんご自身も「現場で大きな決断をくだす」という経験をされてきたのですか。
吉木例えば、米国ワシントンDCに駐在していた頃、日本と米国のメーカー間である契約締結に向けた条件交渉を担当したことがありました。ところが、期日まで2日を切った段階で交渉が決裂し、900億円規模の事業が白紙に戻りかねない、といった状況に。
タイムリーに進める必要があったため、東京と連携しながらも、現場の私の判断で、米国メーカーの部門トップの方にコンタクトを取り、一対一で交渉することにしました。きっと「なんだ、この若造は」と思われたでしょうが(笑)、この契約の重要性や条件の妥当性を必死に伝え、なんとか契約妥結。いま思い返しても本当にしびれる展開でしたが、各関係者の理解と努力、日頃の信頼関係があってこそ成し得た結果だと思います。
玉川以前、外務省の担当記者をしていたことがあるのですが、「優秀な外交官とはどんな人か」と聞いたことがあるんです。その答えは、「何か起こった際、本部に都度聞かずとも自走型でタイムリーヒットを打てる人」。グローバルな拠点で日々奮闘する三菱商事の社員の方にも、通じる話かもしれませんね。
「それは、世の中のためになるのか」を道しるべに
玉川第3回の星出遼さんは、脱炭素社会への移行期を支えるエネルギー、LNG(液化天然ガス)の事業で、カナダから東アジアへの壮大なバリューチェーン構築に尽力されていました。パートナー企業との合意形成を含め「多角的な視点でビジネスを構想する力」には感服しましたし、何より「この事業は世界のため・未来のために必要なのだ」という熱い使命感のようなものを感じました。
吉木三菱商事の社員は、世のため、人のため、という意識が非常に強いと感じます。私も含めて「三綱領」(*)に共感した人が入社しています。事業を通して世の中に良いインパクトを与え、社会課題の解決につなげていく、つまり「ビジネス」と「より良い社会の実現」を両輪として捉える企業姿勢です。
これは三菱商事の誇りであり、社員にも根付いていると感じています。例えば、ある事業開発を進めるべきかといった判断をする際も、「三綱領に照らして妥当か」「三菱商事としてやるべきことなのか」といった観点で議論をすることがよくあります。
玉川「三綱領」という道しるべがあってこそ、迷いが生じてもそこに立ち返って判断ができるというわけですね。複数の企業との利害調整、国や文化の違いを超えた信頼関係の構築など、一筋縄ではいかない難しい局面も、この価値観がベースにあることで、ブレることなくビジネスを前に進めていけるのだと感じました。
* 三綱領
三菱第4代社長・岩崎小彌太の訓諭をもとに制定された企業理念「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」。現代解釈では、それぞれ「事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する」「公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する」「全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る」の意。三綱領の理念は、社員一人一人がビジネスを展開する上で、また地球環境や社会への責任を果たす上でのよりどころとなっている。
「こんな仕事をしてみたい」キャリア形成は意欲的に
玉川皆さんのキャリアの変遷を伺っていると、異動がとても多いですよね。第5回の藤井絵里さんは、IT・DXという専門領域を軸にしながら、現在は医療ツーリズムの新規事業を手掛けていますし、第4回の草野峻輔さんは同じモビリティグループ内ながら、インドネシア・日本・ベトナムと、勤務地も役割も異なる働き方をされています。
吉木三菱商事の人事には「多様な仕事を経験して成長を」という方針があるので、ジョブローテーションが基本となります。それぞれの営業グループが対面する「産業・業界」はもちろんのこと、「勤務地」(国内外の各拠点や事業投資先)、「所属」(本店、国内外拠点、事業投資先など)、「業務」(トレーディング、事業開発、事業投資、事業経営など)の組み合わせ次第で、キャリアの幅は大いに広がります。
社員インタビューでも出てきた通り、求められる役割や立場、関わるステークホルダーなどが、異動によって大きく変わることも珍しくありません。葛藤や苦労も多い一方で、多様な考え方・価値観を身につけて成長する良い機会になっていると思います。
玉川皆さんのキャリア形成への意欲の高さといいますか、「自己変革の意識」を常に持っていることにも驚かされました。何か工夫されていることはありますか。
吉木社員と会社との定期的な対話の機会は、その一助になっているかもしれません。例えば、能力開発・キャリア開発に関して上司と対話する「成長対話」や、部門・営業グループ別のタレントマネジメント担当者との対話機会があり、それらの対話を通して適材適所が実現されていきます。その際、「今後こんなことをやってみたい」「あの部署で仕事がしたい」などと希望を伝えることで、それが反映されるケースもあります。
私自身、「コーポレートスタッフ部門を経験してキャリアの幅を広げたい」と希望し、いまの部署への異動がかないました。全社的な視点で「社員がより活躍できるようにするには」を追求する仕事は、勉強になることばかり。ここでしっかりと貢献するとともに、いずれ営業の現場に戻った際には、コーポレートでの経験・知見を存分に活かしていけたらと思っています。
多彩・多才な人材を、「活かし・育て・報いる」
玉川採用についても教えてください。第3回の星出遼さんは、MBA(経営学修士)留学や証券会社勤務を経て、36歳の時に入社されていました。こういったキャリア採用にも力を入れているのでしょうか。
吉木時代の変化を見据え、近年、キャリア採用も活発に行っています。三菱商事の外にいるからこそ得られた知見や経験を活かして、即戦力として「新しい風」を吹かせてもらえたらと、大いに期待しています。また、就業年数満3年以内の第二新卒の採用も実施しています。こうしたキャリア採用の方々がスムーズに業務に入れるよう、所属部署内のアドバイザーによる1on1のフォローアップに加え、AIや簿記などの各種スキルの研修、社内システムや業務フローについてのレクチャーなど、受け入れ側の体制も整えています。
玉川第5回の藤井絵里さんは、「配偶者の国内外転勤同行に伴う再雇用制度」を活用して、3年のブランクを経て再入社し、いまも活躍されていますね。企業の側としても、ライフイベントを理由に貴重な人材を失うのは損失でしょうし、藤井さん自身も復職を望んでいたとのこと。両者にメリットのある、柔軟で素晴らしい制度だと思いました。
吉木私の上長も、この再雇用制度を使って復帰し、いまは執行役員人事部長として働いています。ほかにも、出産や育児、介護や看病といった様々な事情に考慮し、キャリアとの両立を支える各種制度があります。
玉川事業環境の変化や人材の流動化も激しい中、人材マネジメントに関して新たに取り組んでいることはありますか。
吉木三菱商事ではいま、10年後を見据えた「MC HR Vision『DEAR』」を掲げ、取り組みを進めています。DEARとは、Diversity(多彩・多才な人材)、Energize(活かす)、Accelerate(育てる)、Reward(報いる)の頭文字をとったもの。性別や国籍、経歴などが多様な人材を獲得し、誰もがイキイキ・ワクワクとチャレンジしながら働ける環境を作り、成長を実感してもらえるように。そして社員の成長を会社の発展につなげていけるように、というビジョンです。
あらゆる階層で女性比率30%以上を目指す、重要度・難易度の高い職務を担い得る人材の可視化とキャリア開発を進めるなど、具体的な施策も進めているところです。
困難な局面ほど「楽しむべし」仲間とともにこれからも
玉川お話を聞いた皆さんは、バリバリと活躍されている一方で、サッカーに茶道、釣り、スキーなど、オフの時間も大いに楽しんでいるご様子でした。オンオフを上手に切り替えているのでしょうね。
吉木そうですね。「仕事をしっかりやる分、プライベートも全力で楽しむ」というマインドで、メリハリをつけている社員が多いと思います。私自身も、オフの時間は仕事のことは完全に忘れて、 家族とキャンプに行ったり、子どもが習っているバスケを一緒にしたり。それから毎朝、公園を5キロほどランニングするひとときもいいリフレッシュになっています。
玉川タフな局面も多いと思いますが、それを「乗り越える秘訣(ひけつ)」があれば教えてください。
吉木かつて先輩に言われていまも大事にしているのは、「仕事は楽しむべし!」ということです。実際のところ、厄介な問題もプレッシャーも多々ありますし、私自身、胃に穴が開くんじゃないか……と思ったことさえあります。
でも、そんな困難な状況すら「楽しもう」というマインドをもって一つずつ向き合う。失敗をも含めたすべての過程を次の挑戦に生かす──。それを繰り返すことで、粘り強く取り組んでやり抜く「胆力」が身について、成長できる。成長が実感できると自信がついて、さらに仕事が楽しくなる。その繰り返しでやって来られたのかなと思っています。
玉川大変な状況に陥っても、「一人」ではなく「チーム」で向き合えることも心強いですね。
吉木はい。5人のインタビューの最後に「Self-rating Sheet(自己評価シート)」が載っていますが、それぞれ凹凸がありますよね。完璧な人はいないので、当然、得意なことがあれば、苦手なこともあります。それを互いに補いながら、また、「お客さまの心をつかむのが上手」「緻密(ちみつ)な分析をするのが得意」といった各自の得意分野を活かしながら、ワンチームで結果を出していく。それが私たちの強みだと思っています。
玉川最後に、三菱商事に入社を希望する人に、メッセージをお願いします。
吉木いま、三菱商事の採用ホームページでは「世界を動かす、好奇心」というメッセージを打ち出しています。どんな壮大なビジネスも、その始まりは小さな「好奇心」です。世の中の様々な出来事に、好奇心を持って向き合い、「こんな社会を作ってみたい」「こんな風に世界を変えてみたい」と思い描いてみてください。その未来を自分の手で実現させたいという熱意のある方と、ぜひ一緒に仕事をできたらと思っています。