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第4回
人事ソリューション

多様な人材が活躍する強い組織へ
成長続ける地域の“人事”を支援

三菱商事グループが世界中で取り組む事業とそこで奮闘する社員を紹介するシリーズ。第4回は経済発展著しいアジア・大洋州地域の三菱商事の拠点や事業会社に人事ソリューションサービスを提供するヒューマンリンク・アジア(HLA、在シンガポール)にスポットを当てる。家庭では2人の子どもを育てながら、人事のプロフェッショナルとして成長を目指す社員の挑戦を取材した。

担当する会社で打ち合わせ。出張も多いという

様々な経験を生かしグループ各社に寄り添う

シンガポールのタワービルを朝日が照らす8時半。2人の子どもを見送り、まだ人けのないHLAのオフィスに岩崎は現れた。アジア各地の拠点や事業会社などから届く相談や連絡メールのチェックから多忙な1日が始まる。

大学院時代に環境政策を学ぶ中で資源ビジネスに興味を持ち、三菱商事を志望したという岩崎。入社後はエネルギー管理部での実務研修を振り出しに、キャリアの大半を広報部で過ごす。その間、第1子を出産し、1年の育児休暇を取得。2014年に夫の海外転勤のため一度退職するが、復職制度を利用して3年後に復職、人事部配属に。翌年HLA出向が決まり、シンガポール駐在となった。

赴任した当初は人事の経験が浅く不安もあったが、上司から受けた「人事は総合力」との言葉に背中を押されたと言う。「人事は多様な経験、人間力が生きる仕事。経理や広報、育児での経験もきっと役に立つ」。後は持ち前のポジティブ思考で仕事を覚え、今ではアジア・大洋州域内の拠点および事業会社の人事コンサルティング、研修の企画運営、人事実務や駐在員からの日々の相談といった幅広い人事業務を精力的にこなす。

「アジアの事業会社は立ち上げ間もない会社が多く、専任の人事担当者がいなかったり、人手が足りていないケースもあるので、各社の『もう一つの人事部門』として制度の設計・変更から運用などの細かな日々の相談まで一緒に悩みながらやっている」。身内として頼ってもらえるよう、信頼関係を大切にしているという岩崎。その真摯な姿勢で早くも支援先からの人望も厚い。

アジア・オセアニア地域の事業会社数

変化を取り込み失敗恐れず走りながらチャレンジ

世界で事業を展開する三菱商事。もともと貿易主体だったビジネスモデルは大きく変化してきた。事業会社に出資、人材を派遣し、経営に積極的に関与する「事業経営」モデルが活発化。事業会社数は約1400社、国内外各社に派遣する社員の数は2000人を超える。国内においては、事業会社に総合的な人事支援を行うヒューマンリンクを1996年に設立。アジア・大洋州地域をカバーするHLAを2016年、シンガポールに設立した。

「特にアジア市場では、この8年で事業会社数、派遣社員数ともに倍増している。成長著しいアジア・大洋州地域で幅広い事業を展開する事業会社に対し、人事面から経営をサポートすることがわれわれの重要なミッション」とHLAの濱健一郎社長は語る。

その一翼を担う岩崎。経営に携わる人材の育成ニーズが高まる中、今力を入れていることの一つが研修の企画運営だ。今年1月には、岩崎を中心に三菱商事グループ各社の幹部層向けの研修を新設。現地法律事務所や大学などから講師を招き、コーポレートガバナンス(企業統治)や、取締役の法的義務、コンプライアンス(法令順守)などの6科目をカバーするプログラムを実施した。初の試みだったが、ふたを開けてみれば13カ国から出向者・現地採用社員含め計60人が参加。手応えは十分だった。

もう一つ注目しているのがRPA(ロボットによる業務自動化)や人工知能(AI)など新しいテクノロジーを人事に活用する「HRテック」の導入だ。現在、モバイル端末を使ったオンライン学習システムの開発を、現地ベンチャー企業と共同で進めている。

「ファイナンスやリスク管理といった固い内容を、いかに楽しみながら学んでもらうかが課題。各社に共通するビジネススキルを高めるツールとして活用してもらいたい」と言う岩崎。動画やクイズなど様々な要素を盛り込み、ゲーム感覚で学習できる新コンテンツづくりに取り組む。

「現場のニーズを聞くと、それに応えたいという気持ちがぐっと高まる。100%でなくてもいいからまずやってみることを心がけている」

周囲に気配りしながら、しかしひたむきに突き進む岩崎の姿勢には濱も信頼を寄せている。「猛スピードで進化するアジアのビジネス環境ではちゅうちょしている時間はない。走りながら調整していけばいい。今後も失敗を恐れず、新しいことに果敢にチャレンジしてほしい」

休日は育児に専念

価値観融合して高付加価値生む魅力的な組織づくりをサポート

ワーキングマザーが多く、シンガポールは女性が働きやすい社会と岩崎は言う。周囲にも子連れで駐在する女性社員は多い。「ここでの生活も2年目。まだまだ学ぶことばかりで自分一人でできることには限界があるが、その分同僚との情報交換を密にしたり、チームプレーを常に意識している。チームの力を最大化する潤滑油になれれば」と岩崎。上司や同僚、家族など周りの理解と協力にも支えられ、恵まれた環境に自分が生かされていることを改めて実感している様子だ。

「担当地域の支援先には文化、世代、ジェンダーを超えて多様な価値観を持つ人々が集まっている。それぞれが最大限の力を発揮して融合することで、企業はさらに高い価値を生み出せる。魅力的で強い組織づくりをサポートすることが、今の私の目標」

岩崎の目がさらに輝きを増した。

取材を終えて

マリーナベイ・サンズなどシンガポールの人気スポットに程近い高層ビルに入るHLAのオフィス。岩崎さんを含め10人ほどのオフィスのメンバーがテレビ会議をしたり、客先に出向いたり精力的に動き回る。同僚たちとのランチでは、リラックスした雰囲気の中、情報交換をしたり、子どもの話で盛り上がる場面も。仕事も子育ても全力というメリハリのあるワーキングライフが、岩崎さんの笑顔と活力を生み出していた。

2019年3月27日 日本経済新聞掲載広告
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