三菱商事

AERA編集長レポート

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MC Digitalは課題を解決するためのプロフェッショナル集団 リアルとデジタルの世界を融合しあらゆる産業に変革をもたらす MC Digitalは課題を解決するためのプロフェッショナル集団 リアルとデジタルの世界を融合しあらゆる産業に変革をもたらす

三菱商事グループのデジタル戦略の中核を担う存在として、2019年9月、MCデジタルは設立された。最先端のテクノロジーを活用し、さまざまな産業でビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していく。同社の具体的な戦略について、平栗拓也CEO(最高経営責任者)に聞いた。

  • 平栗 拓也

    代表取締役社長兼CEO

    1970年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、三菱商事入社。国際戦略研究所、ブラジル現地法人、経営企画部などを経て、2019年4月、デジタル戦略部長。同年9月からMC Digital代表取締役兼CEOを兼任。

  • 横山 遼

    DATA SCIENTIST

    1998年生まれ。大学ではデータセンター環境におけるマイクロサービスアーキテクチャー性能向上に関する研究を行い、国内の学会で最優秀若手発表賞を受賞。2020年4月入社。

  • 熊崎 剛生

    SOFTWARE ENGINEER

    1995年生まれ。高校時代は競技プログラミングに傾倒し、国際情報オリンピックで金メダル。大学・大学院ではコンピューターサイエンスを専攻。2020年4月入社。

  • 中谷 大輔

    SOFTWARE ENGINEER

    大学卒業後、大手ウェブポータルサイト運営企業や外資系コンサルティングファーム(営業・マーケティング戦略策定などに従事)に勤務。2020年7月入社。

片桐圭子
AERA 編集長

片桐会社のホームページには円錐や円柱が動き回る不思議な映像が流れています。これはどのようなイメージを表しているのでしょう。

平栗「産業構造が絶え間なく変わっていく」ことを表現しています。

片桐デジタルトランスフォーメーション(以下DX)という言葉はまだ社会に広く浸透していないように思います。具体的に説明していただけますか。

平栗ビジネスモデルを変革するための「エンジン」をつくり出します。

デジタル化との違いはビジネスモデルを変えられるかどうかです。ビジネスモデルとはお金の稼ぎ方ですが、そのお金の稼ぎ方を変えるツールとして最先端のデジタル技術を活用する。それがDXです。ただ、お金の稼ぎ方を変えるには、既存のビジネス手法を自己否定し、新しい仕事のやり方を導入していただかなくてはならない。変革を推進するエンジンを新しいビジネスモデルに搭載することで、他社との差異化が可能になります。クライアントの方々と一緒にそのエンジンをつくり上げる。それが当社の大きな使命です。

三菱商事ではDXを進めるための方策について議論を進めてきた。コンサルタント会社などに委託する方法も検討されたが、最終的には、コアとなる技術、情報、開発に関する機能をグループ内に持つことにこだわった。

- 流通業界の構造を根本から変える -

片桐三菱商事は世界中のさまざまな産業でビジネスを展開しています。そのなかでいま、具体的に御社がDXを手掛けているプロジェクトについて教えてください。

平栗一つは流通業界です。日本の流通はメーカー、卸、小売の三層構造になっています。卸が小売からの注文に応じてメーカーから商品を調達、供給する。卸は売値と仕入れ値の差額をマージンとして得る。これが基本的なビジネスモデルで、最も重要なのが在庫管理。そこでメーカーや小売が持つ情報、消費者行動に関するデータをAIで解析、小売の売り上げ増につながる最適な在庫管理のシステムを構築していきます。

日本の流通業の生産性は米国などに比べると低い。店舗における品ぞろえが豊富で、商品の改廃スピードが速いことなどがその要因となっている。ビジネスモデルを変革できれば、日本の流通業の生産性を米国並みに引き上げることが可能だ。現在、三菱商事傘下の三菱食品、コンビニエンスストアのローソン、スーパーのライフなどとともにプロジェクトを推進している。来年にも食品流通の分野の課題解決や効率化・発展のためにDXを活用していく。

- 付加価値の高い仕事で能力を発揮する時代に -

片桐社員のみなさまは、データサイエンティストなど専門人材ばかり。こうした人材をめぐっては世界的な獲得競争が起きています。

平栗ヘッドハンターを活用したり、専門の求人サイトで募集したりしました。そのなかでCTO(最高技術責任者)として入社してくれた久保長礼の存在が大きかったですね。IT業界で有名な彼を慕って優秀な人材が集まってくれました。データサイエンティストの仕事には理論や概念の実現可能性を探る概念実証がありますが、実際に動いているビジネスで、クライアントに直接向き合って仕事をする機会は少ない。そこに魅力を感じてくれているようです。

片桐さまざまなプロジェクトが実現したとき、ビジネスの新しい地平が広がっているような気がします。そのとき世の中はどのように変わっているとお考えですか。

平栗高付加価値の仕事がたくさん生まれていると思います。AIに任せられる仕事はAIに置き換え、付加価値の高い分野で個人の能力を発揮していくべきです。そのためのキャリアを磨いて、30代、40代で、それまでとはまったく違う仕事に就く。能力や才能を転換するケーパビリティーチェンジの発想が重要です。

コワーキングスペースであるWeWork KANDA SQUARE内にあるMCデジタルのオフィスでは現在17人の社員が働く。そのほとんどが、データサイエンティストやソフトウェアエンジニアといったスペシャリスト。平栗拓也CEOは「優秀な人材ばかりが集まった」と胸を張る。2020年入社の熊崎剛生さん、横山遼さん、中谷大輔さんの3人に、ここで働く醍醐味を聞いた。

片桐熊崎さんは高校時代、国際情報オリンピックで金メダルを獲得するなど、世界のどこでも働けそうな感じがします。なぜ、このMCデジタルだったのでしょうか。

熊崎もともと大規模なデータの処理に興味がありました。MCデジタルは幅広い産業の実際のデータを扱う会社。希望がかなうと思いました。

片桐横山さんはデータサイエンティストですね。AERAでも特集記事を組んだことがありますが、いま引っ張りだこの職種です。

横山AmazonやGoogleでもできない仕事がここにはある。

去年の11月ごろまでは大学院に進学する予定でした。偶然、この会社の求人広告を見て、『三菱商事が面白そうなことをやろうとしている』と思ったんです。大学で学んだ情報技術は高い普遍性を持つ大きな武器だと考えています。三菱商事が世界の多様な産業で展開するビジネスのために、自分の武器を生かすことができる。AmazonやGoogleでもできない仕事だと思います。MCデジタルへ入社するという進路を選んで正解でした。

片桐三菱商事グループとはいえ、MCデジタルはまだ誰もが知っている会社ではありません。中谷さんの場合はどうでしたか。

中谷テクノロジーにはもともと魅力を感じていました。採用面接ではCEOの平栗を含め、何人かの社員と話をしました。優秀で、なおかつ柔軟性のある人ばかりで、単純に『この人たちと一緒に働いてみたい』と思いました。

WeWork KANDA SQUAREにて。左から熊崎さん、横山さん、平栗さん、中谷さん、片桐(AERA編集長)

- ポジティブな文化を入社以来強く感じる -

片桐「成功するか不安になるようなチャレンジ」が会社の一つのキーワードになっています。

中谷ビジネスにおけるチャレンジでは、成功と失敗のバランスをとることが大事です。もちろん、失敗を回避するのは当然のことですが、『まずはチャレンジしてみよう、リスクはみんなで乗り越えよう』。当社にはそんなポジティブな文化があることを入社以来、強く感じています。

片桐いま、携わっている仕事について聞かせてください。

横山実際に動いている食品流通に関するプロジェクトに加わっています。さまざまなデータを解析し、流通全体を効率化しようとするもので、最終的には欠品の解消や食品ロスの削減につなげていきます。

熊崎実業の世界のデータを扱う仕事には緊張感がある。

社内の技術部門は大きくデータサイエンスチームとエンジニアチームに分かれています。私はエンジニアチームの一員として、データサイエンスチームが書いた実験コードの品質を高め、実際の業務システムに落とし込めるようにします。食品流通の案件では、実際にコンビニの店舗で売られている商品データを扱うので、リアルなデータを扱っているんだという緊張感があります。

中谷プロジェクトが実現したときの変革の大きさにワクワクする。

私はプロジェクトマネジャーの仕事も担当しています。ある事業体の業務自体を刷新する、かなり大規模なプロジェクトが間もなく動き出します。当社の持つテクノロジーと事業体側のニーズをすり合わせ、プロジェクト全体を前に進めていくことが私の仕事になります。私たちが手掛けているものは、まだ世に出ていないものばかり。それが実現できたときの変革のインパクトを考えると、いまからワクワクします。

片桐将来、やってみたい仕事はありますか。

横山各産業のプロフェッショナルな方と仕事をするなかで感じるのは、彼らのニーズを正しく理解し、最新技術と結びつけていくためにはコミュニケーションが重要だということです。各産業と情報技術のインターフェースの役割を果たしていきたいですね。

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