社会貢献活動の原点
「企業の責任」について
元代表取締役社長 藤野 忠次郎
豊かさの時代には、人間の生き方について価値観に大きな変化が見られると同時に、成長経済時代のひずみがこれに拍車を掛け、企業の社会に対する責任ということについて、企業、特に大企業は、根本的に考え直さなければならない時に来たと考えられます。特に大企業のレゾンデートルは、期間損益の大小によって判断されるべきものではなく、長期的なダイナミズムあるいは長期的な視野に立って、情勢の変化に順応する柔軟な体質を持っているかどうかによって、その存在価値を判断されるべきであります。従って企業は、その企業活動を通じて(生ずる有形無形の)社会的コストをまず負担し、企業としての社会のserviceを提供した後に、利益を享受すべきであるということであります。
今後企業は、社会的コストをいかに負担し、住民の自由といかに合致して、住民あるいは個人を抑圧しない環境を整備するかというようなことについて、一般に公表すべきような形を取るべきではないかと考えます。
また、企業は本質的には利潤を追求してその上でもって生存していられるのでありますから、その社会的責任の果たし方も、単純な慈善事業を行うのであっては長続きすることではないと考えられ、企業は企業らしく、短期的に採算が取れなくても長期的にはあるいは採算の取れるかもしれぬといった採算分岐点上のプロジェクトに、積極的に立ち向かうべきであり、かかるプロジェクトが、住民の福祉に関連のある情報・技術・機器の開発であれば申し分のないこととなろうかと考えます。
- ※講演の内容を一部抜粋して掲載しています。