三菱商事

Connecting to the future:イノベーションは「融合」から生まれる信念を持ってエネルギーの未来創造を

Connecting to the future 思いをつなぎ、未来をつくる Connecting to the future 思いをつなぎ、未来をつくる

次世代エネルギーのいまと未来 vol.3 イノベーションは「融合」から生まれる
信念を持ってエネルギーの未来創造を

「社会・経済活動の低・脱炭素化」と「エネルギー・資源の安定供給」の両立を実現するために、この春、三菱商事に新設された「次世代エネルギー部門」。そのビジョンや取り組みなどを紹介するシリーズの第3回は、この組織を率いる三菱商事常務執行役員・次世代エネルギー部門長の齊藤勝氏が、長年エネルギー事業を担ってきた企業としての使命感や新部門設立の狙いについて語った。(聞き手=GLOBE+編集長・関根和弘)

第1回「次世代エネルギーの現状・課題」はこちら>>

第2回「次世代エネルギー部門の社員による座談会」はこちら>>

カーボンニュートラル社会に向けて果たすべき役割

三菱商事常務執行役員・次世代エネルギー部門長の齊藤勝氏

——カーボンニュートラル社会に向けて、いまは次世代エネルギーへの移行期にあります。エネルギー事業を担う当事者として、現状と果たすべき役割をどう捉えていますか。

低・脱炭素化の動きは不可逆的なものですが、かといって一足飛びにエネルギーシステムを転換できるわけではありません。「明日からすべてのエネルギーを次世代エネルギーに変えましょう」だなんて、安定供給や国民の皆さんのコスト負担の面から考えて不可能ですよね。 現実的にいま我々に求められているのは、既存エネルギーの「安定供給」を守りながら、既存サプライチェーン(供給網)の環境負荷を徐々に下げて「低・脱炭素化」を図ること。そして経済性を確保しつつ、次世代エネルギーを主体としたエネルギーミックスのあり方を提示・実行し、カーボンニュートラルを段階的に実現していくことだと思っています。 ただし、それは容易なことではありません。安定供給と低・脱炭素化を両立させる技術面の難しさに加え、エネルギーの移行期は、新エネルギー導入の時間軸、制度設計、コストなどに関して見通しが立たない不確実な状況が続くからです。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻の影響によるガス価格の高騰からも分かるように、国際社会の多軸化や地政学リスクの高まりも、エネルギー情勢に複雑な影響を及ぼします。 2050年のカーボンニュートラル社会に向けて、エネルギー業界はいま、非常に複雑かつ不確実な状況に対応することが求められているのです。 日本の1次エネルギーは、石炭から石油へ、そしてLNG(液化天然ガス)へと、エネルギー源の多様化が図られてきました。我々三菱商事は、それぞれの時代の要請に応え、エネルギー転換と安定供給に少なからず貢献してきたという自負があります。 今日の次世代エネルギーへの転換においても、三菱商事ならではの多様な産業との接地面、パートナーと築き上げてきた信頼関係、そしてグローバルな知見も活用し、その使命を果たしていくつもりです。サプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)し、低・脱炭素化と安定供給をしっかりと両立させること、さらに、カーボンニュートラル社会における産業競争力の向上や新たな産業の創出を通じた地域創生につなげることも、我々の担うべき役割だと考えています。

人・事業の「融合」から生まれるイノベーションに期待

GLOBE+編集長の関根和弘(右)とともに

—— 2023年4月に始動した「次世代エネルギー部門」について、設立の背景をあらためて教えてください。

この部門を設立する前から、バイオ燃料や水素、カーボンクレジット、アンモニアなど、次世代エネルギーに関連する事業に各グループが取り組んでいました。また、「EX(エネルギー・トランスフォーメーション)タスクフォース」という全社横断型組織で、次世代エネルギーに関して産業構造全体を俯瞰した戦略立案に取り組んできました。 三菱商事は、中期経営戦略2024で示している通り、社会課題の解決を通じてスケールのある「MC Shared Value(共創価値)」を創出することを目指しています。その柱の一つであるEXをより本格的な実行のステージへと進めるために、各グループやタスクフォースに分散していた人や知見を集約し、次世代エネルギーに関する事業を一元化したのが「次世代エネルギー部門」です。

—— これまで分散していた人・知見を結集することで、どのような効果を期待していますか。

人や事業の「融合」は、イノベーションの創出をもたらします。多様な経験・産業知見を持ったスペシャリストが有機的につながることで、次世代エネルギーの領域にこれまでにない新たな発想が生まれると期待しています。 共創の一例として、水素の利活用を挙げると、我々は再生可能エネルギー(再エネ)で水を電気分解して製造した水素(グリーン水素)にCO2を反応させて合成メタン(e-methane)を作り、液化して日本に輸送し、都市ガスとして利用することを目指しています。このようなバリューチェーンを構築するにあたって、再エネ、水素、天然ガスなどの各分野に精通したスペシャリストが「ワンチーム」で動けることは、他社にはない大きな強みになると思っています。

—— 石油製品を取り扱うリファイナリー事業部を次世代エネルギー部門に設置した理由は何ですか。

石油事業といういわば既存のビジネスと、次世代エネルギーという新しい領域のビジネスを一つの部門に「融合」したことにも狙いがあります。 まず、新旧の事業の融合は、新たな事業開発につながる可能性を持っています。例えば、愛媛の波方ターミナルでは、LPG(液化石油ガス)の既存インフラを活用して、様々な使用用途で注目されるアンモニアの供給拠点へと転換するための検討を始めています。既存インフラの活用はコストの面からも重要ですし、地域の特性を生かしたカーボンニュートラル産業の創出は、地域創生にも資するものと期待しています。 また、低・脱炭素化の現実的なソリューションを導き出すという点においても意味があります。次世代エネルギーに関するニーズや関心度、低・脱炭素化の進捗は、産業や企業によって大きく異なります。多様な業界の需要家の生の声を適切に把握することも、今後の事業展開にあたっては非常に重要です。

イキイキ・ワクワクしながら、エネルギーの未来創造を

—— 第2回の座談会では、SAF(持続可能な航空燃料)やSPERA水素TM※の活用など、具体的な取り組みをいくつも伺い、それぞれの領域で着実に低・脱炭素化が進んでいる印象を持ちました。

2050年のカーボンニュートラル社会への道のりは、実際のところ、完成されたシナリオがあるわけではありません。というのも、例えば技術革新は日進月歩ですから、水素の製造方法は今後大きく変わるかもしれませんし、二酸化炭素除去(CDR)の新たな技術が生まれる可能性もあります。また、各国政府や国際機関による制度設計もいまだにばらつきがあり、必ずしも明確な道筋が示されているとはいえません。 しかし、だからといって、どこかの誰かが解決してくれるまで手をこまねいているわけにはいきません。半歩でも一歩でも先に歩を進め、解決策を提示し次世代エネルギーの実装に貢献していく。その責任が我々にはあると思っています。 そのために三菱商事は、ご指摘いただいたように、それぞれの領域で「小さな成功」を積み重ねていく方法を実践しています。まずは技術の成熟度やコスト面など、確度が高い領域で小さく着手し、具体的な課題や知見を蓄積していく。その繰り返しによって次第に顧客、産業が広がっていき、いずれは規模感のあるトランジション(移行)の達成にもつながっていくと考えています。 ※「SPERA水素TM」とは、貯蔵・輸送のためにトルエンと水素を結びつけたMCH(メチルシクロヘキサン)のこと。

—— 最後に、次世代エネルギー部門を率いる意気込みをお聞かせください。

次世代エネルギーの社会実装までの道のりは決して容易なものではないと思います。その中でビジネスを推し進める源泉となるものは、やはり携わっている人たちの「信念」であろうと思います。エネルギーの未来はこうなっていくだろう、未来の日本や世界はこんな社会になっているだろうと、イキイキ・ワクワクしながら想像し、考え、実践する。その力こそが、カーボンニュートラル社会を実現させていくのだと信じています。 今後も、三菱商事グループの有する産業接地面、インテリジェンス、多様な人材を生かして、社会課題の解決に資する事業を展開していけるよう、一丸となって邁進(まいしん)していきます。

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