Connecting to the future:ビジネスは「成功」するとは限らない でも、多様な経験が「成長」につながる
多彩・多才な人材が未来をつくる vol.3
ビジネスは「成功」するとは限らない
でも、多様な経験が「成長」につながる
—金属資源グループ座談会[後編]—
三菱商事・金属資源グループの社員による座談会の後編。コロナ下に入社した若手社員の胸の内は。子育て中の社員はどのように仕事と育児を両立しているのか。多様なバックグラウンドの社員がのびのびと働くことのできる理由は。仕事を通じて実現したい夢や目標についても語り合った。(聞き手=GLOBE+編集長・関根和弘)
- [ 座談会参加者 ]
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菅野 健太郎 氏(三菱商事 金属資源トレーディング本部 RtM事業室長)
猪俣 雄介 氏(三菱商事 金属資源本部 アルミ部 次長)
鄧 抒 氏(三菱商事 金属資源グループCEOオフィス ビジネスインキュベーションユニット 次長)
藤井 美穂 氏(三菱商事RtMジャパン 電池・モビリティ事業本部 次長/三菱商事から出向)
蒲池 晃子 氏(三菱商事 金属資源本部 ベースメタル部 課長)
蒔苗 知紀 氏(三菱商事 金属資源本部 MDP事業部 経営総括チーム兼原料炭チーム)
※本文は敬称略 - [ 聞き手 ]
- 関根 和弘(GLOBE+編集長)
強い「組織」をつくる、多様な「個」
—— 座談会の前編では、社内外を含めたビジネスパートナーとの良好なチームワークが印象的でした。皆さん自身はどう感じていますか。
鄧 私たち金属資源グループは、グローバルな資源開発・投資を行っているため、関わる人員の数は膨大ですし、拠点もチリやオーストラリア、ロンドンをはじめ世界各地にあります。さらに、財務、法律、エンジニアリング、地質学など、必要とされる専門分野も多岐にわたります。 ですから、色々な国・地域の人、多様な文化的背景やキャリアを持っている人と一体となって仕事をすることは、私たちにとっては当たり前のことなんです。金属資源グループの仕事の本質は「チームワーク」であるとも思っています。 猪俣 そうですね。資源ビジネスの仕事って、自分だけで完結できることはほぼなくて、「専門性の集合体」で勝負するものです。この人に聞けば大丈夫、というような各分野のスペシャリストがいること、それを互いに活用し合う柔軟な雰囲気が、私たちの強みになっていると思います。 よく「組織の三菱」という言い方をされますが、「安定した高いクオリティを出せる組織」は、金太郎あめのように均一な人材がそろっていても形成できません。「多彩・多才な個性、多様な専門性」が有機的に絡み合っているからこそ、その相乗効果で組織として高いパフォーマンスを発揮できるのだと考えています。
子育てとの両立を「楽しく」できる理由は
—— 藤井さんは、育休などを経て4年前に職場復帰されたとのことですが、仕事との両立の状況はいかがですか。
藤井 職場の理解やサポートのありがたさを日々感じています。いま9歳と6歳の2人を子育て中なので、まだ保育園や学童へのお迎えなども必要ですし、明日から急きょ出張に行くといった対応は難しく、出張に行く際には事前に調整が必要です。ただ、こうした柔軟な働き方を上司も同僚も理解してくれており、そのことに後ろめたさを感じることなく仕事ができているのは、時代の変化とともに、会社として「多様性の受容と強化」に取り組んでいることもあると思います。 またコロナ以降に在宅ワークが浸透したことで、仕事と育児の両立のしやすさは格段に向上しました。こうした職場の多様で柔軟な働き方の受容に加え、家族の協力体制、そしてベビーシッターなどのサービスもフル活用することで、楽しく、営業現場でやりがいを感じる仕事に携わることができています。仕事をするママを応援してくれる子ども達に感謝しつつ、とにかく無理をしないかたちで自分に合った仕事と家庭のマネジメントスタイルを見出すことが大事だと思っています。 在籍している三菱商事RtMジャパンの部署には、私のほかにも子育て中の社員もいますし、性別や国籍、バックグラウンドも多様です。三菱商事が打ち出している「Diversity, Equity & Inclusion*」をまさに体現している組織の一つだと思っています。 *Diversity, Equity & Inclusion:多様性、公平性、受容性。すべての人に公正な機会を与えることで、人々が不当に偏った状況におかれることなく、多様な背景を受容できる社会の実現を指す。 菅野 多様なバックグラウンドの人材が集まっている組織だからこそ、「しっかりとパフォーマンスしてくれるならOK」という柔軟な考え方になるのかもしれないですね。上司が残っているうちは帰れない、といった昔ながらの日本企業の不文律みたいなものは一切ないですしね。
——菅野さんが担当されている金属資源トレーディング事業には国内外に約600人の社員がいらっしゃいますが、社員がイキイキ・ワクワク働けるように、心掛けていることはありますか。
菅野 三菱商事は、時代に合わせたマネジメントの研修をはじめ、海外経験を積むグローバル研修、IT・リテラシー向上、キャリア自律など、様々な人材育成プログラムに取り組んでいます。 個人的には、自分が若い頃に不条理だと思っていたことをいまの若者には感じさせたくないなと思っています。それから最近意識しているのは「直接会って話をする」ということ。金属資源トレーディング事業は、東京のみならず、シンガポール、ニューヨーク、ロンドン、上海、インドなど世界中に駐在員や現地スタッフがいるので、出張などで顔を合わせられる時は、なるべく1対1で話す時間をとり、悩み事や考えていることを聞くようにしています。良い話には一緒に喜んで、悪い話には一緒に悩む。直属の上司や近くにいる同僚だけではなく、たまに会う相手だからこそ話せること、それにアドバイスできることもあると思うんですよね。
——国籍も年代も超えて信頼を得るというのは、簡単なことではないですよね。
菅野 若手の頃に鉄鋼製品の仕事をしていた時、自分の親世代の問屋の方々には昼も夜も鍛えていただきました。金属資源の業務に移ってからは、資源メジャー(主導権を握る国際資本)や弁護士・会計士・投資銀行といったばりばりのビジネスパーソン、オーストラリアの現場たたき上げの炭鉱労働者、インドのオーナー企業の社長さん、中国の国有企業幹部など、国も文化も生い立ちも全く違う人たちと仕事をしてきました。その結果、わかったのは、国籍とか立場とかバックグラウンドとかは人と人が心を開いて信頼関係を作る過程において関係ないということです。 その方法ですか? まずは、家族やスポーツなど仕事に関係ないこと、あるいはお馬鹿な話も含めていろんな話をして仲良くなることですね。インド駐在時はクリケットのことを一生懸命勉強しましたよ。時には自分の悩みを後輩に相談することもあります。そうやって仕事とは離れた「素の自分」をまず知ってもらうことが、人と人のつながりを築く第一歩かなと思っています。
若手がのびやかに力を発揮できる組織風土
——この中では入社4年目の蒔苗さんが最若手ですが、働きやすさはいかがですか。
蒔苗 私はコロナ下の2020年4月に入社しました。当時は出社ができない状況だったので、指導をしてくれるインストラクターとのコミュニケーションも、ビデオ会議やチャットだけ。同じチームの人全員と顔合わせできたのも入社して半年ほど経ってからでした。そのため、どうしても自分から周囲に声をかけるのを遠慮してしまうことがありました。 そんな日々が1カ月ほど続いたある日、先輩から「思っていることは蒔苗くんから発信してくれないと困る」と言われました。これが結構グサッときたというか、意気揚々と三菱商事に入社したはずなのに、こんな自分ではいけないなと。「難しいから」「新入社員だから」という理由でその場で静かに座っているだけではいけないと痛感しました。その後は、疑問に感じたことや自分の考えをどんどん積極的に伝えるようになりましたし、それができる環境だと思います。 いま意識しているのは、自分にできうる最大限のバリューを提供すること。ITに強いとか、英語が得意とか、それこそエクセルの使い方が上手といったささいなことでもいいと思うんです。そして、任せられた仕事は100%でなく、そこからさらに自分ならではの付加価値をつけてアウトプットするという気持ちで取り組むようにしています。
——経験豊富な先輩たちに圧倒されてものが言えない、みたいなことはないんですか。
蒔苗 それはないですね。会議などでも上司が「君はどう思うの?」とよく問いかけてくれますし、そこでの発言から新たな議論に発展したり、「その発想は自分たちの世代にはなかった」と興味を示してくれたりすることも。そういう雰囲気だからこそ、常に「自分の考え」を持つクセもつきました。せっかくの場で何も発言できなかったら悔しいですから。 藤井 私は2006年入社ですが、思い起こせば私が若手の頃も、ある程度仕事を任せてもらい、のびのびと働いていました。当時、「貴金属のリサイクルビジネスを立ち上げたい」と考えた私は、解体業者を訪ねて交渉したり、製錬プロセスを有するパートナーと一緒に新規事業を構想したりと必死でした。小規模ながら、自分の意思でビジネスを作っていくのは楽しいなと思えた経験でした。 猪俣 仕事の能力は、年次に比例するわけじゃないですからね。蒔苗くんをはじめとする最近の若手社員を見ていても、私が気づかなかった視点でのコメントをくれたり、自分には到底習得できないようなスキルを持っていたりしますしね。 ですから年次に関係なく、発言してくれたことやアウトプットしてくれたことはしっかり受け止めます。それが成果に結びつけば、組織にプラスになりますし、若手社員にとっては成功体験となり自信が深まります。それを積み重ねていくことが、個の成長、ひいては組織の成長につながっていくと思っています。
——就職活動中の皆さんに向けて、あらためて三菱商事で働く面白さを教えてください。
蒔苗 座談会の前編で話題に出ていた「海外で働けるチャンスが多い」という点はもちろんありますし、三菱商事ならではの「スケールの壮大さ」は大きな魅力だと思います。金属資源グループでいえば、ある意味地図に残る仕事だと思っていて、資源開発によってそれまではなかった新たな村や街ができることもありますし、一つの案件に億単位の金額が動くことも珍しくありませんから。 猪俣 スケールの大きさは、まさに三菱商事で働くことの醍醐味(だいごみ)ですよね。三菱商事の知見やネットワーク、人脈、資金を使って実現できることは、1人でベンチャーを起業してできることの何十倍も何百倍も大きいはずですから。 また、「経営人材になりたい」という応募者さんも少なくないと思いますが、必ずしも社長やCFO(最高財務責任者)という肩書でなくても、経営者のマインドで仕事をすべき局面は海外の出向先をはじめ多数ありますので、そんなモチベーションを持っている人にとっても面白い環境だと思います。
難しい局面にも、臆せず立ち向かってほしい
—— 最後に、仕事を通じて成し遂げたい目標や今後の夢を教えてください。
猪俣 就職活動をしていた時から夢は変わっていないのですが、私は「ビジネスの力で世界の豊かさに貢献したい」という思いを持って仕事をしています。 豊かさの指標には色々ありますが、その一つが「オプショナリティー(選択できること)」だと思っています。例えば、衣食住の選択肢があること、教育や仕事の選択肢があること。これを一過性の「支援」で実現するのは限界があります。その地域に暮らす人々が働き、収益を地域に還元する持続的な循環が必要であり、それを実現できるのが「ビジネス」だと思うのです。 資源ビジネスを通して、そんなオプショナリティーを提供し「世界の豊かさ」を作っていきたい、また、日々の仕事を通して私自身も成長するとともに、チームの力を最大化していきたいと思っています。 藤井 私は小学校と高校時代を海外で過ごした影響からか、就職活動の時から「日本の産業のために、世界と仕事がしたい」と言っていました。いまは、「日本と世界の産業のために」とその対象が広がっていますが、多様な顧客ニーズに対応し、付加価値の高い資源を安定的に供給するというトレーディングの仕事を通して、その思いを実現できていると思っています。 また、いま取り扱っている「リチウム」は、EV(電気自動車)のリチウムイオン電池をはじめ、脱炭素化・電化に欠かせない重要な商材です。今後も日々の業務を通して、EX(エネルギー・トランスフォーメーション)の推進に寄与できればと思っています。
蒲池 実は私も就職活動時から思いは一貫しており、「新興国と日本にとってwin-winのビジネスを作ることで世界経済の発展に貢献する」という夢を持っています。 私がいま担当している「銅」は、新興国をはじめとする世界各地の経済発展に伴い、今後さらに需要が高まると見られています。さらに、電化による電線需要の高まりやEVの広がりなど、脱炭素社会の実現にも不可欠な商材です。 私たちが事業参画している銅鉱山は、チリのエスコンディダをはじめ、いずれも世界最大級の銅山で、世界の需要の大部分を占めています。今後の需要拡大を支えるためには、我々の鉱山で持続的かつ安定的な供給をいかに確保できるかが大事であり、非常に大きな責任を担っていることを日々実感しています。 また、三菱商事全体で考えると、銅の採掘から製錬を経て多様な製品に利用し、使用後はリサイクルするという一連の流れに携わっているわけですから、バリューチェーン全体としてより良いwin-winの関係を築いていくために、社内の連動を深めさらなるビジネスの可能性を探っていきたいです。そのことが、新興国や日本を含めた世界の発展にもつながっていくと思っています。
蒔苗 私は「蒔苗がいてよかった、三菱商事に頼んでよかった」と思っていただけるような仕事をできる人材になりたいと思っています。三菱商事は、色々な専門分野を持った「個」が集まった結果、力強い組織になっていることを実感していますが、私も自分ならではのバリューを発揮できるプロフェッショナルになれるよう、努力を重ねていきたいと思います。 鄧 私は、「世界を舞台にキャリアを築いていく」という目標があり、新卒で外資の会社を選びました。その後、三菱商事に転職したのも、「グローバルな土俵で、ビジネスアイデアやビジネスセンスで勝負できる」数少ない会社だと思ったからです。そんな環境で自分が何を成し遂げていくかという次なる夢は、いまも探している最中です。 菅野 これまでのキャリアを振り返ってみると、いくつもの「修羅場」をくぐり抜けてきたなと思います。大型の資産買収案件で競合相手にギリギリのところで競り負けたり、取引先が倒産しそうになって債権回収に奔走したりといったドラマチックなこともありました。ビジネスには修羅場がつきものです。 自分自身、厳しい状況に追い込まれて必ずしも毎回「成功」したわけではなくて、むしろ失敗したほうが多かったんですが、いま思えば、修羅場経験は確実に自分の「成長」につながりました。いまの若手・中堅の社員にも難しい局面にも臆せず立ち向かえるような人材になってほしいし、多くの失敗を重ねたうえでいくつかの成功体験を掴んでほしいです。そのために僕はしっかりとサポートし、次の世代に良いかたちでバトンをつないでいけたらと思っています。
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金属資源グループ座談会[後編]