サンゴ礁の危機
地球温暖化による海水温の上昇と白化現象
近年では、海水の温度上昇によると思われるサンゴの被害が大きな問題になっています。前述したように、サンゴの色は細胞内の褐虫藻の色によるもので、サンゴそのものに色はほとんどありません。
ところが、何かのストレスを受けることで褐虫藻が細胞内から逃げ出したり、あるいはサンゴ内で死滅したりすると、サンゴ本来の色(白色)になってしまうのです。これがサンゴの「白化現象」といわれるもの。地球温暖化による海水温の上昇が原因の一つとして指摘されています。
1998年の世界のサンゴ白化の分布図
サンゴの白化現象とは?
サンゴが色あせて白く見える現象。インド洋や紅海、カリブ海など世界のサンゴ礁で多発しており、日本でも、沖縄や鹿児島を中心に広がりを見せています。サンゴの生息に適した水温は25~29℃。サンゴの体内には、褐虫藻という単細胞の藻類が生息して光合成を行っていますが、海水温が2℃高くなるだけで、この褐虫藻が死滅することにより色が抜けます。褐虫藻からの有機物の供給が途絶えると、ほとんどのサンゴは死んでしまいます。1998年のエルニーニョに伴う高水温とそれによるサンゴの白化により、全世界の広範囲でサンゴ礁が失われました。
世界各地のサンゴ礁で発生し、大きな被害を与えている白化現象。しかし、そのメカニズムは完全に明らかになっておらず、根本的な防止策が確立していないのが現状です。
オニヒトデの異常発生による食害
サンゴの天敵であるオニヒトデは、体の表面に鋭い毒のあるトゲを持った、直径50センチにもなる大型のヒトデです。体の下側に口があり、そこから直接胃を出してサンゴに押し付け、体外でサンゴの表面のポリプを消化して吸収しています。オニヒトデが大量に発生しているという地域が今までに多く報告されています。
開発による土砂の流出や生活排水などによる海洋汚染
大量の砂がサンゴにかかった場合、サンゴは自分で取り除くことができず、摂食や呼吸ができなくなり、死んでしまう可能性があります。森林の伐採や開発による土砂の流出はサンゴにとって大きなダメージになるといえるでしょう。
生活排水などによる海洋汚染もサンゴに大きな被害を与えます。富栄養化によってプランクトンが急増し、海水の透明度が悪化することによって、サンゴまで太陽の光が届かなくなれば、サンゴはやがて死滅してしまう恐れがあります。