
笑顔を育てる種をまこう
トレーサビリティ
製品の原材料(食品の場合は栽培や飼育の段階)から加工・製造・流通などの過程をさかのぼって追跡できる仕組み。
日本でも今やすっかり定着したカフェや、幅広い世代に親しまれているチョコレート。しかしその楽しさを届けてくれる原材料が、どこでどのように生産されているか考えたことはあるだろうか。もしかするとそのカカオを摘み取ったのは、チョコを手にする子どもたち同様、幼い手だったかもしれない──。
FAO(国連食糧農業機関)は、現在の食料生産方法は環境にマイナスの影響を与えることが多いとして、健康的で栄養価の高い食料を提供し、環境も保全する「アグロエコロジー」への転換を訴えている。
過重な労働が農村に生きる人たちの教育や自立の機会を奪っていないか。収穫量を増やそうと、環境に過度な負荷をかけていないか。自分たちが口にするものがどこでどのように育てられ、加工され、運ばれてくるのか知ろうとする動きは、消費者の間に近年広がっている。こうした中で、生産者とメーカーをつなぐ農産物事業会社が、デジタル技術を活用して産地やそこでの取り組みを「見える化」している例もある。集約化と効率化を進めるだけでなく質的転換を目指す動きは確実に始まっている。
近ごろは店頭に並ぶ食品パッケージを注意深く見ると、環境や働く人たちに配慮した原材料を使用していることを示す認証マークなどを目にすることが増えてきた。そうした商品を選んで購入する人が増えれば、産地に笑顔が増え農業を持続可能にすることもできるだろう。日々何を飲み、食べ、使うのか。私たちの選択一つひとつが、未来を育てる種となっていく。
持続可能なおいしさを世界に
消費者が環境や人権に配慮した商品を求める傾向は強まっており、食品メーカーはそうした基準に適合した原材料の調達を進めています。三菱商事は、サステナブルな食品原料の取り扱いに強みを有する農産物事業会社Olam社との業務提携を2015年に開始。食のサステナビリティに対応した原料調達の拡大に取り組んでいます。

2019年10月6日 朝日新聞「GLOBE」掲載
