1954年~ 第7話 新規分野への積極的な進出 ~ブルネイLNGプロジェクトなど、海外への投資を本格化
今日のMCグループのLNGビジネスが大きく花開いた原点とも言えるブルネイLNGプロジェクトをはじめとする、1970年代前半の新分野への積極的な展開について振り返ります。
1969年12月、藤野忠次郎社長はシェルと三菱商事が45%ずつ、ブルネイ政府が10%を出資する「ブルネイLNG」設立の合弁契約書にサインをしました。「失敗したら三菱商事が三つつぶれる」とまで言われた、1億2500万ドル、為替レート換算で450億円、当時の三菱商事の資本金をはるかに上回る巨額プロジェクトへの参画という大きな決断。商社の海外投資は極めてわずかだったこの時代に、新たな歴史が刻まれた瞬間でした。
60年代以降、高度成長および重化学工業化に伴い、日本では大量の原材料が必要とされていました。中でも天然ガスは硫黄分がほとんどなく、一酸化炭素を含まないクリーンエネルギーで熱量も高いという特長があり、その天然ガスを日本へ輸送するための液化事業について三菱商事は早くから注目していました。68年にシェルからブルネイでのLNG開発の共同出資を持ち掛けられてから、三菱商事のプロジェクトチームが慎重に検討を重ねた末の合弁契約。72年12月にブルネイからのLNG船が大阪に入港、プロジェクトチームの熱意と努力が結実しました。
藤野社長の下、海外での大型プロジェクトが相次いで手掛けられました。特に資源開発事業へ積極的に参画。日本の資源調達に大きな役割を担っていきます。豪州での鉄鉱石や原料炭、ザンビアでの銅地金、カナダでのパルプなど、資源確保のための海外への開発型投融資案件や長期大口輸入契約などが増加したのもこの頃です。
ビジネスのグローバル展開はもとより、単なる商取引から開発投資型への転換が進んだことで、現在のMCグループのビジネスモデルへの道筋が作られた藤野社長時代。71年には三菱商事は英文社名をそれまでのMitsubishi Shoji Kaisha, Limitedではなく、Mitsubishi Corporation (MC)を使用することとしました。