2019年 社長年頭挨拶

2019年1月4日
三菱商事株式会社
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本朝、三菱商事本社(東京・丸の内)にて行われました、当社社長 垣内威彦 による「2019年年頭挨拶」を下記の通りご報告致します。                                          
 
 

【はじめに】
あけましておめでとうございます。皆さんのお顔から、お正月を過ごされ、今年も頑張るぞとの思いが満ちあふれていることを拝見させて頂き、私も皆さんと共に本年も全力を尽くす決意を新たにしました。
本年は平成が終わり、新しい元号が始まる年となりますが、干支の亥のように「猪突猛進」という訳にはいかないと思っています。むしろ、「思索」の年、即ち冷静に筋道を立てて深く考える年にしたいと思います。
 
【外部環境の認識】
先ず世界の経済状況を見ますと、技術革新が経済成長のエンジンになっています。主な分野としては、携帯通信等のデジタル分野、自動車などのモビリティ分野、バイオテクノロジー分野、スマートシティなどの都市開発分野などが挙げられます。デジタル化は、AI/IoTの導入や最先端技術の開発を導き、あらゆる分野で産業の変化を起こしています。まさに第四次産業革命の真っただ中にいると言っても過言ではありません。米中貿易対立における中国の輸出減少等が目立ってきているものの、世界経済全体が継続的に下振れするということにはならないと考えています。
 
先端技術の発展は今までの世の中に対する挑戦でもあると考えています。例えば、スマートフォンは登場してまだ十数年しか経っていないにも拘わらず多くの人の生活には最早なくてはならない存在となってきています。こうした一つの「物」を手放さないで生きていくことが出来ない状態をどの様に考えれば良いのでしょうか。また、バイオテクノロジーで人間のDNAを解明するということは人類の進化に大きな影響を与えるということになります。更には、人工知能が人間の知能を上回った時、人間はどのような機能を果たすべきなのか、人工知能と人間との棲み分けをどうするのかが問われることになると思います。生活スタイルの変化のみならず、今まで培ってきた人間の価値観や尊厳をも変化させる影響が生じます。人間の全ての行動、即ち、朝から晩まで何をしているかが可視化される世界をどのように解釈すれば良いのでしょうか。
 
「産業革命」とは技術革新によって、その時代の価値観や常識を破壊し、新たな社会規範を創造することに他なりません。つまり、最先端技術が社会を変え、その変化に対応出来る社会規範を新しく造り上げなければならないタイミングにあるからこそ、米中の対立が顕在化したのだと考えるべきだと思います。真のリーダーになる為には、先端技術の開発競争だけではなく、新しい社会の規律や価値観を生み出す使命もあることを忘れてはならないと思います。
 
中国は最先端技術をベースに更に自力で高度なイノベーションを起こそうとしています。これら先端技術の研究においては既に中国が米国を追い越し、世界の先頭を走っているとの報道もあります。技術革新の原動力は、自由主義と民主主義を前提とした個人・組織の創意工夫が原動力となって、イノベーションが起こるというのが今までの常識でした。言い換えると、自由主義や民主主義がない社会では産業イノベーションは起こり得ないと考えられていました。それでは中国が現在、最先端技術研究で先行しているということを、どう解釈したらいいのでしょうか。中国は、過去20数年に亘り、民間企業の発展を容認してきていたように思います。また、共産党は13億人の中国人の代表として、大学の成績優秀者で構成される約8千万人の開かれたエリート集団だともいえます。そういった面においては、社会的、経済的にも自由は拡大されていると思います。即ち、中国は政治や経済システムにおいても、進化してきていると考えるべきと思います。
 
一方、既存の先進国を見ると、米国を中心とした自由主義、民主主義の国々においては、その政治体制において、明らかに問題が顕在化しています。少なくとも、国民参加の多数決による選挙での政策決定に対する矛盾が顕在化してきております。中国が国家資本主義で進化を遂げている中、民主主義・自由主義の国々も政治・経済システムを進化させなければならない状況にあろうかと思います。
 
先程も申し上げた通り、世界をリードする国とは、先端技術開発のリーダーであると同時に、先端技術が作り出す新しい社会のコーディネーターとして、人類の進化をリードしなければなりません。米中対立の決着には時間がかかることは間違いありませんが、両国が夫々の長所・短所を理解し合い、共存共栄する形で融合する、そういう社会、政治、経済システムができあがることが理想かと思います。
 
昨日のニューヨークのダウ市場は660ドル下落しました。年末から年明けにかけて激しい市況の変化が顕在化しているものの、経済のファンダメンタルズは強いけれども、政治的な意味での不安が極めて濃厚になっていることの証であると思います。ただ、最終的には大きく下振れすることなく、一定のレベルに収斂すると思います。
 
以上を踏まえ、今年は亥年にもかかわらず、猪突猛進ではなく、「思索」の年になると考えています。
 
【新中経について】
中経の策定にあたっても、前述のファクターを織り込んでいます。ここで今一度、組織改編と人事制度改革の思いを申し上げます。
 
昨今、産業の垣根を越えた新たなビジネスが構築されるパターンが続出していることもあり、既存の7グループを10グループに改編しました。先ずは新しい10グループで横通しのコミュニケーションを活発化してもらいたいと思います。それに加えて、改編で起こる異動を通じ、色々な方々が新しい人たちと出会い、新たなネットワークを改めて作ってもらい、複合化する新しいビジネスモデルを構想して頂ければと考えています。
 
三菱商事は社員の成長により支えられてきました。人事制度改革の運用にあたり、社員を評価する立場にある上司は、その評価や育成が上司としての最大のミッションであると考えを新たにしてもらいたいと思います。自分の考えをしっかり持って、率直にそれを直言できる部下を優秀な社員と是非評価して頂きたいと思います。
 
また、この3年弱に亘り、国内外の関連会社や拠点を訪問し、強く感じたことがあります。三菱商事の経営体系が連結経営にシフトされて久しいことから、様々な事業場所へ一人で赴くケースが多くなっています。多くの仲間に囲まれる本社の環境と異なり、その様なケースでは時に強いメンタリティが求められます。例えば、合弁会社に三菱商事を代表して一人で赴くケースや、アフリカの拠点を一人で運営するようなケースです。彼らの心の支えになるような、例えて言うなら赤い糸でつながっている、三菱商事を共に支えているというしっかりしたアイデンティティを持てる仕組みを作っていきたいと思います。
 
三菱商事の目指すべき会社像として、社員がいろいろな経験を積み上げることによって経営人材の宝庫になりたいと考えています。いかなる課題を持った会社であっても、三菱商事が関与することによってその前途を見極め、その行く末を共有し、見違える会社へ変貌させることができる人材が育つ会社になりたいと考えております。
 
三菱商事は社員の成長がエンジンとなり、発展してきた会社です。私を筆頭とする経営陣は、社員の成長のために多様な経験の場を提供していく責務があると考えております。
 
今年も三菱商事の発展のために全員で頑張っていきましょう。
 
 
 
以  上

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