北海道におけるLNGトラック向け小型LNG充填設備の
実証事業のご紹介

最新情報

事業の目的

本事業は運輸部門でのCO2排出量削減を
目的とし、電気自動車(EV)や
水素燃料車(FCV)が抱える大型トラック向けの
課題(十分な航続距離・積載能力が実現困難、
また充電・充填に長時間を要する等)を踏まえ、
カーボンニュートラル社会実現に向けた
現実解のひとつとして推進するものです。

LNGトラックは、現時点でEVやFCVが達成困難と
される1,000km以上の連続長距離走行が可能であり、
かつ従来のディーゼルトラックと比較し、
10%程度以上のCO2排出削減効果が
期待される次世代燃料トラックです。

エア・ウォーター株式会社
(以下「エア・ウォーター」)と共に、
日本で初めてLNGを燃料とする
大型トラック(以下「LNGトラック」)と
小型可搬式LNG充填設備
(以下「LNG充填ボックス」)を使い
実証走行を実施中であり、
これらを日本国内で普及させることを目指しております。

実証事業の概要

環境省実証事業に採択

2021年5月、環境省の「令和3年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」*1に採択されました。

2023年4月には、環境省から実証期間の2年間延長が認められました。
LNG充填ボックスの付帯設備として、新たに圧縮天然ガス(CNG)充填設備*2を追加し、実証事業を継続中です。

尚、本事業は、北海道庁が推進する「ゼロカーボン北海道」*3に賛同しております。

ゼロカーボン北海道

*1 2022年度から「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に名称変更されました。
*2 CNGはCompressed Natural Gasの略であり、圧縮した状態の天然ガス(LNGとは異なり気体の状態)。
現行のLNGトラックは、エンジンの暖気や高負荷時に補助燃料としてCNGを利用する仕様であるため、
定期的なCNG充填が必要となります。
*3 北海道経済部が推進する取組。北海道では、「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す」
ことを表明しており、北海道が有する豊かな地域資源を最大限に活用しながら、
脱炭素化・経済の活性化・持続可能な地域づくりを同時に進める「ゼロカーボン北海道」に向け、
道民・事業者・市町村・団体等が一体となり、その実現を目指すこととしています。

充填所運営・車両走行の実績

2022年4月に苫小牧市、同年6月に石狩市においてLNG充填設備の操業、
計14台のLNGトラック(いすゞ製LNG GIGA)の実証走行を開始しました。

2022年4月の実証走行開始以来、累計走行距離は200万キロを突破し(2024年8月時点)、
充填所・車両共に大きな不具合・トラブルもなく、充填時間等含め
軽油車同様のオペレーションを継続中です。

2024年7月には、Volvo製のLNGを燃料とするトラクターヘッド2台を新たに実証事業に導入し、
同年8月より走行開始しています。

液化バイオメタンの利用

2022年11月、北海道内の畜産ふん尿由来のバイオガスを原料として製造される
液化バイオメタン(LBM)のLNGへの混合を苫小牧充填にて実施し、
LNG/LBM混合燃料のLNGトラックへの充填及び実証走行を開始しました。

苫小牧充填所でのLBMの混合はこれまでに計7回実施され、
LNG/LBM混合燃料中に占めるLBMの最大混合率は約65%を記録しています。

CNG充填設備の開発

2024年2月、苫小牧充填所にCNG充填設備を追加し、LNGトラック向けCNG充填も開始しました。

  • Volvo製LNGトラクターヘッド
    1. 液化窒素貯蔵タンク
    2. コージェネレーション発電機
    3. ボイルオフガス再液化装置
    4. LNG貯蔵タンク
    5. 温水ボイラ
    6. 温度調整器
      温水式蒸発器
    7. LNGディスペンサー(給液機)
    8. ボイルオフガス
      バッファータンク
    9. UPS装置
    石狩LNG充填ボックス
  • 苫小牧LNG充填ボックス
    1. 液化窒素貯蔵タンク
    2. ボイルオフガス再液化装置
    3. LNG貯蔵タンク
    4. ボイルオフガス
      バッファータンク
    5. LNGディスペンサー(給液機)
    6. 温度調整器
      温水式蒸発器
    7. 温水ボイラ

LNG充填ボックス内 制御室

コージェネレーション発電機

ディスペンサーノズル

非常用電源

LNG充填ボックス外部 階段

実証事業パートナー

共同実施者

協力者

LNGトラック実証走行協力者

関係省庁

環境省環境省
(環境省HPはこちら

よくあるQ&A

LNG充填BOXの特徴は?

輸送事業者の物流施設内での設置も想定し、大型トラック1台分の駐車スペースに設置できるよう、小型化いたしました。1日当たり、50~60台分のLNGトラックの充填に対応しており、LNGトラック1台当たりの充填時間はわずか5分程度です。LNG充填ボックス内のLNG在庫量を遠隔監視し、LNG充填ボックスへのLNG補充を適時適量行うシステムを構築することで、LNG充填ボックスへのLNG安定供給体制を確立してまいります。
また、世界初のLNGのボイルオフガスを燃料とした電源自立型コージェネ発電システムを搭載しています。大規模停電時においても、LNGトラックへのLNGの充填が可能となっており、外部への電力供給も可能となる優れた機能を備えていることも特徴の一つです。

車両向け燃料としての
LNGの利点は?

大型トラックは、本邦の運輸部門で第2位のCO2排出源となっています。LNGトラックは、電気自動車や燃料電池車では困難な1,000km以上の長距離走行と積載量の確保が可能です。
LNGトラックは、従来のディーゼルトラックに比して、10%程度以上のCO2排出量削減※が期待できます。LNGトラックは、振動・騒音も軽減されており、排気ガスも非常にクリーンでディーゼルのような石油臭もないのが特徴です。
平成28~30年度の環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」にて、いすゞ自動車が試作した大型LNGトラックは、高速走行を中心とした都市間輸送にて、1回の燃料充填当たり1,000km以上の走行と、2015年度(平成27年度)重量車燃料基準値を達成したディーゼル車比CO2排出量10%程度以上の削減を達成。

実証実験の詳細は?

LNG充填ボックスの商用化に向けて、いすゞ自動車株式会社のLNGトラック14台を用いて、実証実験を重ねてまいります。北海道電力株式会社の協力を得て、本設備の有効性およびLNGトラック実走行時におけるCO2排出量と燃料費の削減効果を確認の上、事業化の検討を行うものです。加えて、将来的にLNGへの液化バイオメタンの配合を行い、CO2のさらなる削減策についても検討してまいります。

LNG充填ボックスの安全性は?

LNGトラックに充填されるLNGは、極低温液体のため、専用ノズルを用い、完全に密閉された状態で行われます。LNG充填作業者は、部分的に低温になる箇所に触れ、低温やけどになるリスク等を避けるため、保護手袋とフェースガードの着用が必要です。加えて、LNG充填ボックス周辺の火気の扱いも禁止するなど、安全策を図っております。
また、LNG充填ボックス内のLNGタンクは二重構造になっており、LNGの液漏れリスクは限りなく低いものとされております。LNGは毒性がなく、気化ガスは空気よりも軽いため、万一、地面にLNGが液漏れした場合も気化し、放散するため、土壌や水質を汚染することはありません。

商用化の時期やコストは?

実証実験の結果を踏まえ、2020年代半ばを目標に事業化の検討を行う予定です。輸送事業者が負担するコストについては、ディーゼルトラックの燃料代と比較し、魅力的な価格となるよう、本実証試験を通じて検討してまいります。

お問い合わせ先

地球環境エネルギーグループCEOオフィス
事業構想ユニット
モビリティグループ
いすゞ事業本部 市場開発室