三菱商事

Steps for the BETTER FUTURE:社会課題と向き合うビジネスの積み重ねが、世界の未来を変えていく

気候変動、貧困や飢餓、教育格差といったさまざまな課題が山積する現代。
持続可能な社会をつくるために、企業は社会課題にいかに向き合い、
未来への一歩を踏み出すべきか。
新シリーズの第1回では、企業の周辺環境でいま起きている変化や、
これからの企業が重視すべき価値について、
国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問の末吉竹二郎さんに話を聞いた。

PROFILE

国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問

末吉竹二郎氏

すえよし・たけじろう/東京大学卒業後、三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)、日興アセットマネジメント勤務を経て、国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問に。脱炭素を目指す約600の企業・団体が集う、気候変動イニシアティブ(JCI)の代表や、自然エネルギー財団の副理事長、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの会長も務める。

—— 昨年の世界経済フォーラムが「ステークホルダー資本主義」を打ち出すなど、企業に社会的責任を求める流れが強まっています。また、社会課題への企業の向き合い方も変わってきたように思います。その背景には何があるのでしょうか。

近年の地球環境の変化によって、ビジネスを築く基盤そのものが変わり始めてきたことを多くの人が実感しているからでしょう。例えば、2011年にタイで発生した大洪水では、日系企業を含む多くの工場が水没し、グローバルなサプライチェーンが寸断。ほかにも、19年に日本を襲った台風、米国や豪州などで多発する山火事、さらにハリケーンや熱波など、異常気象による被害は世界各地で起こっています。

そもそも、気候変動をはじめ、生物多様性の損失、貧困、児童労働など、あらゆる社会課題を生み出している根源は何でしょうか。それは、短期的な利益ばかりを追求するビジネスのあり方にあるのではないかと思います。持続的なビジネスは安定して安心できる暮らしがあってこそ。そのために自分たちが率先して問題解決に取り組まなければ——。そんな意識の転換が、様々な企業で起こり始めているのです。

—— 社会課題解決の長期的な方向性を示す政府、そして、その方向性をもとに行動を起こす企業。いずれも重要なアクターですね。

英国は「2030年以降、国内でのガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止」を打ち出しました。これは熱心な温暖化対策である一方で、電気自動車(EV)の市場競争を有利に進める“ゲーム・チェンジャー”としての施策とも捉えられます。

またEUでは、コロナ禍で落ち込んだ経済の再生を、環境を重視した投資などを通じて行う「グリーン・リカバリー」の動きが広がっています。限られた予算でBuild Back Better(よりよい復興)を目指す考え方は非常に合理的ですし、これによって取引相手を選別するという意味では、EUの効果的な戦略でもあると感じます。

このように、社会課題解決はもはや新たな経済競争であり、その主導権争いは世界で始まっています。そしてSDGsの最も重要なメッセージは「いまの社会システムを変えること」であり、現代は「戦後最大の社会改革」ともいうべき変化のときです。そんな時代に存在することの意義を、企業はいま一度見つめ直してほしいと思います。

—— 具体的に、企業にはどのような変化を期待しますか。

まず、世界が直面している社会課題を的確に理解することです。それと同時に、自らの事業に起因する課題については、その解決のために事業ポートフォリオやビジネスの進め方をどう変えていくべきなのか、真剣に考え実行してほしい。非常に幅広いポートフォリオを持つ三菱商事は、すでに様々な分野で見直しに取り組んでいますが、資源の安定供給者として資源バリューチェーンの川上から川下まで多様な産業に接点を持つ同社には、そのネットワークを活用してさらなる変革を実行していただきたい。日本が脱炭素化を先導していくためにも、その取り組みを国内外に発信することで社会改革を牽引してくれることを期待しています。

—— いま、読者へ伝えたいことは。

現代は、「破壊」と「創造」が同時進行で起こっている大きな転換期です。社会課題の解決を千載一遇のチャンスと捉えるか。それとも、変化できないまま時代に取り残されるか。我々はいま重大な岐路に立っています。もちろん、その主体は企業や政府に限りません。私たち一人ひとりが、それぞれの持ち場で社会課題と向き合い、目指す未来に向けて行動を変えていく。その積み重ねがきっと、未来の世界を変えていく力になるでしょう。

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