世界ひとめぐり アラビアコーヒーに宿る、おもてなしの心
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幼い日の祖父との思い出
サウジアラビアを含むアラビア半島のコーヒー文化が、2015年にユネスコ無形文化遺産「アラビアコーヒー、寛容さの象徴」として登録されたことをご存じでしょうか。客人にアラビアコーヒーやデーツを振る舞うことは、相手への敬意を表す大切な習慣です。サウジアラビアで生まれ育った私が、わが国の文化に息づくホスピタリティを紹介します。
亡き祖父と共に客人をもてなした幼い頃の記憶が、今も鮮やかによみがえります。祖父は、伝統的な社交場「マジュリス」に客人を迎えると、温かいあいさつを交わし着席を勧めました。そして、まき火で沸かしたお湯を使い、丁寧にコーヒーを入れます。「ミファー」と呼ばれる金属製の準備ポットから、「ダッラー」と呼ばれる別の金属製ポットへと注ぎ、さらに「フィンジャル」という取っ手のない小さなカップに少量ずつ注ぎました。かつては、客人にコーヒーを振る舞う前に、まず主人、またはコーヒーを入れた本人が最初の1杯を口にしていました。これは、そのコーヒーが丁寧に入れられた良質なものであることを確かめるためです。その後、最初の1杯は、最年長、あるいは特別な客人から順に注ぎます。少量ずつ注ぐのは、お代わりを勧めること自体が、おもてなしの作法だからです。客人がカップを軽く横に揺らすしぐさは、「もう結構です」という合図。祖父は、客人のカップの減り具合に気を配りながら何度も注ぎ足し、語らいのひとときを楽しんでいました。
砂漠から生まれた、一杯の思いやり
この伝統のルーツは、アラビア砂漠にあります。旅人たちはかつて何世紀にもわたり、広大な砂漠の移動時に、食料や水、休める場所を求めてきました。そんな過酷な環境の中で、人々の間で育まれてきたのが、おもてなしの心です。誰に対しても見返りを求めずに迎え入れ、手を差し伸べる気持ちがどれだけ込められているかが、名誉の基準とされるようになりました。今もサウジアラビアでは、それが一杯のコーヒーに表れています。
このおもてなしの文化は、イスラム教の教えによって、さらに深く育まれてきました。それが顕著に見られるのが、聖地メッカとメディナです。サウジアラビア国民にとって、年に1度のハッジ(大巡礼)や一年を通して行われるウムラ(小巡礼)で巡礼者をもてなすことは日常の一部で、信仰を表現する行いにもなっています。
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イスラム教の聖地、メッカ -
第2の聖地、メディナ
現代の喧騒を離れ、本物の伝統に憩う
アラビアコーヒーが供されるマジュリスのような空間、地域の味わいを活かした料理、職人による工芸品――。今日、観光産業の発展と共に、文化や伝統が現代的な要素と融合し、新しい形へと進化していることもサウジアラビアの魅力です。訪れる人は、快適に過ごせる環境の中でも、この国で受け継がれてきた文化や伝統に触れることができます。
その中でも、訪問者を魅了するのはやはり、現地の人々のおもてなしの心。家庭でも、ホテルでも、迎える側が相手への敬意と細やかな心配りを忘れず、信頼をじっくり育てようとする姿勢は、今でも変わりません。アラビアコーヒーとデーツは、そうしたおもてなしの最初の体験になるかもしれません。さらに、そこから続く温かな歓迎が、多くの訪問者にとって最も印象的な思い出になることでしょう。
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