特集対談
小林 健司
執行役員
コーポレート担当役員(CSEO)
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野内 雄三
代表取締役 常務執行役員
コーポレート担当役員(CFO)
×
立岡 恒良
独立社外取締役
資本コストや株価を意識した
経営の実現に向けて
2023年3月の東証要請を受けた当社の対応や
経営執行側のCFOおよびCSEOと、 社外役員が議論を交わしました。
2023年3月に、東証が資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について、
上場会社へ要請していますが、三菱商事はどのような対応を取っていくのでしょうか?
野内:東証からの要請が出る前の段階から、当社は中期経営戦略2024(以下、中経2024)の枠組みにおいて、すでに対応を進めていました。中経2024の定量目標の一つとしてROE二桁水準を掲げており、経営管理制度の推進を通じてこの水準を安定維持することで、株式市場から求められる株主資本コストを上回ることができると分析しています。この中長期的なROEの維持向上に対する市場からの信頼感や期待感が、適正な株価形成にもつながるため、市場への説明が大変重要になってくると捉えています。
立岡:中長期的にROEを維持向上していくという安心感・期待感・確信を投資家の皆さんに持ってもらうことが大事という考えは、その通りだと思います。特に現在当社には投資に振り向けられる原資が十分にあるので、投資家の皆さんをはじめとしたステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、今後の投資の収益性について丁寧に伝えていくことが重要になってくると思います。この辺りについては、新設されたCSEOにも期待したいところです。
小林:有難うございます。現状、当社はまだまだ株式市場からバリュー株、資源会社として評価されている状況ですが、実際には、当社は成熟企業であるとともに成長企業という側面もあると考えています。今後のIR活動の中で、まずは当社の過去のエクイティストーリー、つまり当社がどのようにビジネスモデルを進化させ、成長してきたかをしっかり示していくことから始め、EX投資をはじめとした今後の成長性を、丁寧に伝えていく所存です。
立岡:当社はEX投資についてもROEの維持向上に資する投資を厳選し、規律を持って厳しく投資判断をしており、取締役会としてもそれをモニタリングしています。外部からの採算性への関心が高いEX投資こそ、この投資規律をしっかりと説明することが安心感の醸成につながると思います。
今後の成長性を示していく中で、三菱商事として意識して打ち出していくポイントはありますか?
野内:足元では、地政学リスクをはじめとしたさまざまなリスクへの対応が企業活動の維持にとっての重要さを増しています。ただこのような不確実性の高いマクロ環境下であるからこそ、十分な財務健全性やキャッシュ創出力、地理的・産業的に多様で強靭なポートフォリオを保有し、その分散効果も含め、景気後退期における下方耐性を保持する当社の優位性が際立つ地合いであるとも考えています。
小林:はい。それに加えて、強靭なポートフォリオは、コングロマリットの当社ならではの新たな価値創造という視点からも重要だと考えています。これまで以上に変化のスピードと社会課題の解決の難易度が増している環境においては、多様なポートフォリオを保有していることで、これを柔軟に入れ替え、組み合わせ、結合させることにより、変化に対応して新たな価値を創造していくことができるということも当社の強みです。これをしっかりと説明していくことで、総体として各事業の合算を超える価値を生み出す事業ポートフォリオであると、 当社が投資家にさらに評価される余地があると考えています。また、当社の強みに加えて独自性についても述べますと、現在当社では循環型成長モデルを実践して資産の入れ替えを進めていますが、各事業のライフサイクルに応じた資産の循環を目指す当社の取り組みは、限られた投資期間内でのキャピタルゲイン獲得を主目的として投資ポートフォリオを入れ替えるPEファンドとは明確に区別されるところと認識しています。
野内:そうですね。一般的に総合商社は業態が分かりづらいと評されることも多いからこそ、当社の強みや独自性を理解頂くことは大変重要なことだと感じます。
小林:今後もROE二桁水準の維持向上に向け、中経2024で掲げた経営管理制度の取り組みを推し進めていくとともに、当社独自のエクイティストーリーを丁寧に示しながら、投資家の皆さんをはじめとしたステークホルダーとの対話や開示のさらなる充実化に努めていきます。