三菱商事

特集:主力事業の歴史と強み

6つの経営資本—事業資産

環境変化に応じて柔軟に稼ぎ方(事業モデル)を転換させ、価値創造に取り組んでまいりました。

外部環境と企業価値の変遷

金属資源事業 金属資源事業

金属資源事業は、三菱商事のビジネスを語る上で欠かせない中核事業の一つです。当事業は、事業環境の変化に応じて、事業モデルの変革を積み重ねてきました。現在では、原料炭や銅を中心とする、世界最高水準のコスト競争力と品質を備えた優良資産ポートフォリオを構築しています。
2050年のカーボンニュートラル社会実現のためには、鉄や銅をはじめとするさまざまな金属資源を長期・安定的に供給できる体制の構築がますます重要となります。当社は、引き続きトレーディング・資源投資・事業開発を通じ、「必要とする人に、必要な資源を、お届けし続ける」使命を果たしていきます。本ページでは金属資源事業の歴史と強み、今後の展開等、当社の取り組みをご紹介します。

連結純利益 / 事業モデルの変革

事業環境の変化をチャンスに、
川上の資源開発投資へ大転換

当社は、戦後復興から高度経済成長黎明期にかけて、日本国内での各種工業製品の生産に必要な原料である原料炭・鉄鉱石等の資源を輸入代行する業務を一手に引き受けてきました。高度経済成長期は、日本の製造業の発展が進み、より多くの資源が必要とされるようになりました。当社は、資源の安定調達を目的として川上資産への出資の検討を開始し、1968年に豪州の原料炭(製鉄用石炭)事業への参画を果たしました。そして、1970年代半ばに日本の経済成長が鈍化すると、日本のみならず海外市場の成長を取り込むべく、グローバルトレーディングや資源投資事業に舵を切り始めました。2001年には、豪州原料炭事業の権益比率を50%まで引き上げ、世界最大の資源会社であるBHP Billiton社(現BHP)と対等の立場で新会社BHP Billiton Mitsubishi Alliance(現BHP Mitsubishi Alliance=BMA)を設立。現在では、純利益年間約2,000億円(当社持分/過去5年平均)規模まで成長し、当社における大きな収益源となっています。

金属資源事業の主要バリューチェーン

2本目の収益の柱 銅事業へ注力

当社が次に取り組んだことは、原料炭事業で成功した事業モデルの横展開です。1988年の世界最大の銅鉱山Escondidaへの参画を皮切りに、銅鉱山への投資に乗り出しました。早期に銅需要の伸びに着目したことで、現在では市場に出ることが稀な優良資産の権益を複数獲得することに成功し、世界最高水準のコスト競争力と生産規模を誇る銅資産ポートフォリオを脈々と築いてきました。また、近年開発された銅鉱山の中では最大規模であるQuellaveco銅鉱山については、パートナーである資源会社のAnglo American社と共に、コロナ禍中の各種想定外の課題を乗り越え、予定通り約4年で建設を完了し、2022年より生産を開始しました。当社の足元の持分銅生産量は本邦最大規模ですが、同鉱山の本格的な生産立ち上げ後はさらに拡大し、世界13位前後となる見込みです。

社会課題軸でのポートフォリオへの変革

「気候変動対策」という大きな社会課題に直面する現在、金属資源事業では、従来の「商品軸」での事業ポートフォリオから、「社会課題軸」での事業ポートフォリオ戦略にシフトし、新たな成長に向けて舵を切っています。具体的には、当事業を「低・脱炭素」、「電化」、「循環型社会」の3つに分類し、それぞれの分野において原料の安定調達の観点から社会課題の解決を目指しています。

トレーディング事業

金属資源事業の原点とも言えるトレーディング事業は、時代のニーズに応じて変化することで成長を遂げてきました。同事業を通じて得られる業界インテリジェンスやプレゼンス、そしてこれらを梃子にした新規優良投資案件の発掘など、トレーディング事業がもたらす付加価値は当事業をさらに強固なものとしています。

RtM(Resource to Market)事業

RtMI社オフィス

本邦需要家向けの輸入代行取引から始まったトレーディング事業は、中長期的な成長を目指し、2013年に情報と人材の集積地であるシンガポールに、トレーディング事業の統括子会社としてMitsubishi Corporation RtM International(RtMI)社を設立しました。
その後10年間、東京、ニューヨーク、ロンドン、上海の主要トレーディング拠点と連携してトレーディング機能やグローバルな顧客基盤の拡大・強化に取り組み続け、金属資源トレーディング業界において存在感のある事業会社に成長しております。
現在、2050年のカーボンニュートラル社会の構築に向けた取り組みが加速する一方、地政学リスクが激化する等、事業環境が急速に変化しています。こうした状況下、「必要とする人に、必要な資源を、お届けし続ける」という使命を果たすべく、ステークホルダーの声に耳を傾け、持続的な価値提供を行い、変化する事業環境に適応しながら成長し続けます。

原料炭事業

原料炭事業の強み

Integrated Remote Operations Centre(IROC)

当社は、2001年にBHP Billiton社(現 BHP)をパートナーとしてBMAを設立しました。BMAでは、操業中の7つの炭鉱および積出列車、積出港、空港を保有・運営しており、世界トップクラスのコスト競争力と品質を備えた原料炭を生産しています。年間生産量は約60百万トンで、世界の原料炭海上貿易量の約3割のシェアを占める世界最大規模の原料炭事業です。また、資源量は約110億トンあり、推定60年以上にわたり採掘が可能であるといわれています。
資源開発においては、周辺の生物多様性や環境、地域社会への配慮が重要です。BMAでは操業時に細心の注意を払い、自然環境、そして地域社会との共生を果たしています。社会要請や環境規制の要件を考慮した将来の閉山・リハビリテーション(原状回復)計画の策定・見直しを行っており、周辺環境と地域社会への負荷の最小化に努めています。
また、鉱山操業時の生産性や安全性の改善を目指し、全炭鉱・港を遠隔で一括管理するIntegrated Remote Operations Centre(IROC)を設置したほか、DXを活用した自動トラックの導入を鋭意進めています。

BMA炭鉱マップ / 2022年 原料炭海上貿易量

これからの見通し

「鉄」は、各国の経済成長を支える基礎素材です。また、カーボンニュートラル社会の構築に向けたインフラ整備にも不可欠な素材であり、引き続き堅調な需要成長が見込まれます。鉄鋼業では、製鉄の低・脱炭素化のため、鉄鉱石を水素で還元する製鉄法や鉄スクラップを原料とする電炉製鉄の拡大が進んでいます。しかし、両製鉄法の商業的な普及には相応の移行期間が必要であり、移行期間中はコークスを還元剤とする高炉製鉄法が主流であることが見込まれます。 そのため、高炉の生産効率を維持しつつ、CO2排出量の低減に寄与する高品位の原料炭の重要性が高まる見通しです。BMAでは、引き続き世界トップクラスの高品位原料炭を、需要家に安定供給していくことで、製鉄プロセスの低炭素化に貢献していきます。

製鉄プロセスの脱炭素化に向けた動き(見通し)

銅事業

銅事業の強み

Quellaveco銅鉱山

1980年代に銅鉱山への投資を開始して以降、当社の銅事業は着実に成長してきました。現在は、南米のチリ共和国とペルー共和国に5つの銅鉱山を保有しており、いずれも豊富な資源量・埋蔵量を有する優良資産です。当社の足元の持分銅生産量は約25万トン/年と本邦最大規模ですが、Quellaveco銅鉱山の本格的な生産立ち上げ後はさらに拡大し、今後は40万トン/年程度を目指しています。

当社銅保有資産(当社参画年・出資比率・所在国) / 銅生産者ランキング

これからの見通し

「銅」は、産業の血管としての電線や情報ネットワーク等の敷設に不可欠な素材です。加えて、カーボンニュートラル社会の構築に向けて、風力・太陽光発電などの再生可能エネルギーを中心とした電化の進展、電気自動車(EV)の普及が進むと、さらなる中長期的な需要増が見込まれます。一方、既存銅鉱山における品位の低下傾向に加え、開発難度上昇(不安定な資源国の政情・許認可取得難度の上昇)等の制約が存在し、資源の安定供給が重要課題となっています。こうした環境の下、当社では既存事業の生産量維持・拡張を軸に、保有権益の買い増しや新規資産の取得、新技術の活用による銅分回収等を通じ、銅事業の成長を目指しています。2023年には、チリ共和国における新規案件(Marimaca銅鉱山プロジェクト)の開発に向けた取り組みを開始しております。

VOICE

現場における三菱商事社員の活躍

当社出向社員
(左)前Head of CEO Office
(右)前Head of GM Office
開発中のQuellaveco銅鉱山プロジェクト現場にて

2022年7月、Quellaveco銅鉱山はコロナ禍という未曽有の困難に見舞われながらも、予算・工期ともにほぼ計画通りに銅精鉱生産を開始しました。その背景には、開発意思決定直後からQuellaveco銅鉱山に出向し、パートナーのAnglo American社と二人三脚での建設、操業立ち上げに取り組んだ、三菱商事社員の隠れた尽力がありました。1日5百万米ドルが動く巨大プロジェクトにおいて、株主視点から全体最適のために経営上のリソース配分を考えるという、さまざまな国・商品の事業経営に携わる商社パーソンとして学んだスキルが活かされました。また、経営の視点を現場レベルに落とし込む際に欠かせない、目的の共有やチームビルディングといった「人を動かす力」も、組織を大切にする三菱商事で培ってきたスキルでした。

LNG事業 LNG事業

三菱商事のLNG事業の歴史は、未知の領域に踏み込むチャレンジの足跡が刻まれています。戦後、石油の輸入販売を軸として成長してきた当社エネルギー事業は液化天然ガス(LNG)に着目し、1960年代以降、石油ビジネスで強化してきた顧客との関係性・接地面を活かし、LNG事業を創出・発展させてきました。本ページではLNG事業の歴史と強み、今後の展開について、当社の取り組みをご紹介します。

連結純利益 / 事業モデルの変革 / LNG事業プロジェクトの変遷

バリューチェーン内で事業を多角化

当社は、1960年代に日本初のLNG導入であるアラスカのLNG輸入事業へ参入しました。右から左へモノを動かすだけではなく、売り手の欧米企業、買い手の本邦電力・ガス会社と粘り強く交渉を続けながら長期契約の締結を実現することでプロジェクトを主体的に進め、1969年11月にLNG船第一船が横浜へ入港、当社LNG事業が幕を開けました。
1972年、当社は天然ガス液化事業(ブルネイLNGプロジェクト)へ初参画しました。総投資額450億円以上に上る巨額の事業投資であり、参画時の当社権益持分は45%(Shell社45%、ブルネイ政府10%)と、石油メジャーと対等な立場での事業参画となりました。その後もクリーンエネルギーを求める社会的要請、本邦を中心としたLNG需要の高まりに応える形で、当社は1980年代以降世界各地でLNG液化プラントへ継続して投資を実行してきました。
さらに、豪州ノース・ウェスト・シェルフプロジェクトを皮切りに液化・輸送に加えて上流ガスの開発・生産事業にもバリューチェーンを拡大していきました。インドネシアのドンギ・スノロ事業ではLNGプラントのオペレーターに挑戦し、より主体的に事業を経営する中でさまざまなノウハウを蓄積しております。また、米国ルイジアナ州では従来のLNG輸入基地をLNG輸出基地として転用するキャメロンLNGプロジェクトに参画しました。同プロジェクトでは、北米市場から調達した原料ガスを液化し、当社はプロジェクト全体の生産量の内、3分の1に当たる年間約400万トンのLNGを自社で引き取り、日本を含めた世界各地の需要家に輸出しております。

LNG事業の強み

当社は世界各地のLNGプロジェクトへの参画を通じ、世界のLNG輸入量の約25%を占めるプロジェクトに関与しております。また、民間企業の持分生産量ベースで比較するとShell社、ExxonMobil社等に次ぐポジションに位置し、当社で取り扱うさまざまな商品の中でも特に高い市場シェア・プレゼンスを誇っています。これは顧客・産ガス国・パートナー等から厚い信頼を得てきた結果であり、構築されたネットワークから得られる質の高い情報は新規事業の構想、実現に寄与しています。まさにこの好循環が当社の強みであり、LNGサプライチェーン全体への深い関与を実現している要因の一つと言えます。

LNG持分生産能力(民間会社/2025年断面想定)

LNG事業のこれから

当社は、環境負荷の低い天然ガス・LNGをカーボンニュートラル社会への移行期に必要不可欠なエネルギーと位置付けエネルギーの安定供給に取り組むと同時に、「LNGサプライチェーンの低・脱炭素化」も推進しており、次世代エネルギー部門とも密に連携し、CCUSやカーボンクレジット等によるLNGバリューチェーン全体のGHG排出量の削減にも取り組んでおります。次世代エネルギーに関する当社の取り組みについてはP.60~63をご参照下さい。

カーボンニュートラル社会へのロードマップ

自動車・モビリティ事業 自動車・モビリティ事業

三菱商事の自動車・モビリティ事業は、1950年代後半以降、アジアの新興国を舞台に本格的に立ち上がりました。日本の自動車メーカーと協業しつつ、自らが販売・生産のイニシアチブを取りながら事業経営に乗り出した結果、川上から川下まで、地域密着型の自動車バリューチェーンを構築し、三菱商事の主力事業の一つとなりました。本ページでは自動車・モビリティ事業の歴史と強み、今後の展開について、当社の取り組みをご紹介します。

連結純利益 / 事業モデルの変革

事業モデルの変遷

バリューチェーンの横展開、
そして新事業領域へ

完成車の輸出を手掛けていた三菱商事の事業モデルが転換するきっかけは、タイでの自動車事業でした。いすゞ自動車(株)と組んで、1957年から現地でトラックの輸入販売に取り組んでいた当社は、自動車産業の育成を目指すタイ政府の要望を受け組立工場を設立、生産・販売のサプラチェーンを整えます。アフターサービスや販売金融サービスの拡充にも努め、お客様のニーズに応える地域密着型のバリューチェーンを構築した結果、いすゞはタイでのピックアップトラックの代名詞として定着しています。
 その後、インドネシアにおいて三菱自動車工業(株)(のちに三菱ふそうトラック・バス(株)が分離独立)と組み、1970年に自動車生産販売統括会社を設立。1970年代以降生産・販売・アフターサービスから販売金融・中古車販売まで事業網を拡げ、タイ同様に地域密着型の強固なバリューチェーンを構築しました。これによりタイ・インドネシア事業は、当社の自動車事業の収益の柱となりました。タイ・インドネシアで築いたバリューチェーンをモデルにその他東南アジア・その他新興国、豪州・欧州・米州等、世界の他の地域への展開に取り組んでいきます。また、自動車事業を軸に、当社の他事業と連携しながら、カーボンニュートラル社会を見据えた新たな事業を生み出していきます。

トリペッチいすゞセールス/
Tri Petch Isuzu Sales(TIS)社

地域密着型のバリューチェーン構築により、
強い事業をつくる

タイにおけるいすゞ事業は1957年に開始した、いすゞ自動車製大型トラックの完成車輸入に遡ります。上記のタイ政府の要望を受け、当社は1963年に自動車組立工場を建設し、タイでの自動車生産を開始しました。この組立工場にいすゞ自動車(株)が出資して、泰国いすゞ自動車(IMCT:Isuzu Motors Co.,(Thailand) Ltd.)を設立しました。1974年には泰国三菱商事の自動車販売部門を分離独立し、当社の事業投資先であるTIS社が誕生しました。
TIS社はタイのマーケットに密着したビジネスを展開してきました。タイでは、凸凹が激しくぬかるむ地方の道路、年間10万kmも走り燃費に敏感なユーザー、修理を施しながら10年以上も乗り続けられる車が求められるといった固有の事情が存在します。TIS社は販売網とともに、いつでもどこでも修理できるアフターサービス・部品供給体制を充実させながら、お客様のニーズを汲み取り、メーカーと共に市場にあった商品を投入し続けてきました。このような地域密着型のバリューチェーン構築とマーケットインの視点を重視した結果、タイのお客様が求めているのは、高い汎用性を持ち、燃費、信頼性、耐久性に優れたピックアップトラックであるとの結論に至り、その普及に注力してきました。その後もスペースキャブやAT車などお客様のニーズに合せてこのセグメントでは初となる商品を発表し続け、ピックアップトラックはタイでのベストセラーモデルとなりました。1980年代以降のタイの急速な経済成長の波にも乗り、「いすゞのピックアップ」はタイでトップブランドの地位を確立しました。
部品・車輌の製造、国内向けの卸売販売・小売販売および販売金融、アフターセールス、自動車保険、海外向けの輸出・販売など、川上から川下までオペレーションを行い、地域密着型のバリューチェーン構築を進めた結果、地域での揺るぎない信頼を獲得できたことが当社自動車事業の強みの源泉であり、当社の収益基盤となっています。

タイ自動車事業バリューチェーン / タイ自動車市場におけるいすゞ自動車シェア

総合モビリティサービス事業の
構築に向けて

電動化時代を見据え、モビリティ×エネルギーの統合知見という自動車・モビリティグループの強みを活かし、日本をはじめ、当社が強固な事業基盤を持つ国・地域おいて「総合モビリティサービス事業」の構築に取り組んでいます。マルチブランド川下事業、バッテリーソリューション事業、地域交通DXの相互連携を図り、EX・DX一体推進による事業開発を加速させます。

総合モビリティサービス事業の展開

鮭鱒事業 鮭鱒事業

三菱商事が伝統的に強みを発揮している分野の一つに水産事業があります。漁獲から卸売まで幅広い領域に携わり、水産会社や水産加工会社、物流会社と連携しながら日本の食を支えてきました。その中でも鮭鱒事業は、水産物に対する世界的な需要が高まる中で、安定的な質と量を提供するために当社が特に注力をしている分野です。本ページでは鮭鱒事業の歴史と強み、今後の展開について、当社の取り組みをご紹介します。

連結純利益 / 事業モデルの変革

事業モデルの変遷

市場の変化を捉え
トレーディングから加工業へ参入

当社の鮭鱒事業の始まりは鮭缶詰の輸出でした。やがて、日本の高度経済成長とともに、天然鮭鱒等の日本向け輸入事業にも事業領域を拡大させてきました。さらに、水産物専門の販売子会社の設立や大手加工会社の買収を通じ、日本国内における販売基盤を固めてきました。
しかし、1990年代に入ると養殖鮭鱒の生産量が天然鮭鱒の漁獲量を上回るようになり、天然鮭鱒の市場価格が低下したことをきっかけに、当社の取り扱いも安定供給が可能な養殖鮭鱒にシフトさせるとともに、タイの水産加工会社との連携の下、加工事業へ参入し収益を安定化させました。

生産・加工・販売の組み合わせにより
グローバルなサプライチェーン構築へ

2000年代後半、良質なたんぱく源である鮭鱒は、新興国の経済成長や欧米での健康志向の高まりにより世界的な需要拡大という環境変化に直面、養殖鮭鱒の市場価格は上昇基調となりました。そこで当社は需要拡大の機会を捉え、「養殖」という川上領域への参入を決断し、2011年に南米・チリで年間生産量約1,000トン規模の養殖事業を開始しました。その後、地元チリの有力企業買収により鮭鱒生産量は一気に3万トンへ拡大、これにより、生産・加工・販売にわたるサプライチェーンを構築しました。さらに2014年11月、当時世界市場シェア第3位であったノルウェーのセルマック社を完全子会社化したことにより、三菱商事グループが手掛ける養殖鮭鱒の年間生産量は18万トンとなりました。セルマック社は、地元ノルウェーだけでなく、カナダとチリにも生産拠点があり、その上欧州市場や北米市場等への販売チャネルも有しています。このように、欧米・チリ・アジアにおける生産・加工・販売の組み合わせによりグローバルなサプライチェーンの構築を実現しました。

鮭鱒事業のサプライチェーンマップ

鮭鱒事業の強み

生産適地の希少性と需要の堅調な伸長

鮭鱒の生産適地は、水温が6~16℃の波が穏やかな入り江・フィヨルド等に限られ、世界的にも希少であることから、養殖事業への新規参入の機会は限定的です。当社は希少な生産適地であるチリ・ノルウェー・カナダの3大拠点において養殖を行っており、市場におけるプレゼンスを有しています。
また、消費者の健康志向・サステナビリティへの関心の高まりなどを背景として、良質でサステナブルなたんぱく源である鮭鱒の需要は今後も堅調に伸長していくとみられ、潜在需要が供給を上回る環境は継続すると見込まれています。

業界トップクラスの収益性

当社の事業参画後、生産効率化・収益力向上策の推進・販売強化を継続した結果、セルマック社は業界トップクラスの収益性を維持しています。

生産適地の希少性 / 地域別養殖鮭鱒市場規模(WFE) / 需給予想

鮭鱒事業のこれから

既存養殖事業の拡大と収益力向上

鮭鱒養殖事業の生産を引き続き拡大し、伸長する需要に対して安定供給を目指すとともに、デジタル技術なども活用し、さらなる環境負荷の低減に加え、生産性向上やコスト削減等の努力を継続していきます。

陸上養殖事業を通じ未来創造/地域創生へ

当社は、マルハニチロ(株)と共に2022年10月に富山県入善町で鮭鱒の陸上養殖事業を行う合弁会社アトランド(株)を設立しました。海上養殖は生産適地の制約があることから、今後の成長機会の一つとして陸上養殖事業の検討が進められています。当社はアトランド(株)設立により、デジタル技術を活用した陸上における鮭鱒の持続可能で安定的かつ効率的な生産体制の構築、地産地消型ビジネスモデルの実現を目指していきます。また、セルマック社との相互連携・ノウハウの共有を通じ、シナジー創出も図ることで、当社鮭鱒養殖事業の一層の基盤強化を目指します。

強い事業を組み合わせた
新たな稼ぎ方・
新たな事業の構築により
MC Shared Valueを創出

各事業領域で、環境変化に応じて常に発想・視点の転換を行い、稼ぎ方(事業モデル)を柔軟に変化させてきた結果、多様かつ強い事業ポートフォリオを保有していることが当社の強みです。国際社会の多軸化・分断化、地政学リスクの高まり、日本社会の少子高齢化等、国内外の環境が猛スピードで変化し、社会課題解決の難易度が高まっている現在だからこそ、この変革の中で成長させてきた強い事業と強い事業を結び付け、新たな稼ぎ方(事業モデル)・新たな事業を創出していきます。このような新たな組み合わせにより、社会課題の解決を実現し、MC Shared Value(MCSV)を創出していきます。

強い事業を組み合わせ、将来の成長の柱を構築
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