Global Now
今、私たちはどのような社会に生きているのか。
世界中で起きている出来事をシリーズでお伝えします。
魚の養殖に関する世界最古の書『養魚経(ようぎょきょう)』は中国の春秋時代末期、紀元前470年ごろに書かれたとされる。「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」「会稽(かいけい)の恥(はじ)」などの故事で知られる越の国王・勾践(こうせん)の家臣・范蠡(はんれい)が記した。この書には、范蠡が成功したコイの養殖方法が書かれている。「同じ大きさのオス4匹とメス20匹を一緒に飼えば、共食いもしないし稚魚もよく生まれる」「スッポンを一緒に池に入れるとよく育つ」など、養殖の妙技を多数紹介している。このように、古代から食用の魚を養殖する取り組みは世界各国でみられた。
日本は1人あたりの1日に食べる魚介類の量が世界平均の約3倍と、世界有数の魚食大国だ。2010年には世界で初めてウナギの完全養殖に成功するなど、養殖技術の研究も進む。近年は日本人の食生活の変化により、多くの養殖魚が食卓に登場するようになった。40年ほど前にはアジやサバといった大衆魚が多かったが、今では養殖が主流のサケやブリといった高級魚が人気の上位にきている。
中国などで魚の消費が急激に増えているため、養殖業への世界的な期待は高まる一方だ。おいしい魚をたくさん育てる、養殖技術の進歩は未来の食糧事情を大きく変える可能性を秘めている。
世界における魚介類の消費量は増えているものの、天然資源保護の観点から漁獲量を増やすことは難しくなっています。三菱商事は30年以上にわたり養殖水産物を取り扱っており、2011年にはチリでサケ・マスの養殖事業に参入し、また2013年からは、新興国で需要が急増しているエビの養殖事業をタイで始めます。
自社養殖を通して、トレーサビリティーが確保できる水産物を日本、欧米、アジア、中南米などへ安定的に供給できる体制を築いていきます。
2013年1月20日 朝日新聞「GLOBE」掲載 |