Global Now
今、私たちはどのような社会に生きているのか。
世界中で起きている出来事をシリーズでお伝えします。
オランダの首都アムステルダムから特急で1時間、人口3万7千人ほどの小さな街ワーヘニンゲン市。ここは「フードバレー」と呼ばれる。
半径30キロ以内に1400を超える企業や研究機関が世界中から集まり、アメリカに次ぐ世界第2位の農産物輸出大国の原動力となっている。本家シリコンバレーと同じく、大学を核とした食や農に関するベンチャーが日々生まれ、世界へ羽ばたく。
低地の国という意味の「ネーデルランド」の名が示す通り、オランダは国土の1/4が海面下で、農地は決して広くない。それでも産学連携による技術革新が、大国のたゆみない成長を支え続ける。
一方、高齢化による担い手不足や耕作放置地の増加、東日本大震災の影響などで衰退著しい日本の農業。フードバレー構想から再生を狙う動きが、北海道や新潟など各地で進む。食の安全や産地のブランドに意識が高まる新興国をターゲットに、農産品や加工品だけでなくITサービスや熟練農家の技術、さらには和食までを輸出していく。こうした農業を中心とした「6次産業化」で、地域だけでなく社会全体の活性化を狙う。
アジアを皮切りに世界の食料基地、流通拠点として日本の農業が脚光を浴びる日は、そう遠くない未来かもしれない。
仙台の農業生産法人「みちさき」は、震災で大きな被害を受けた菊地守社長が、農業による地域復興を目指して設立しました。土を使わず肥料を溶かした培養液による養液栽培に取り組み、次世代に引き継げる魅力ある農業を目指しています。被災地の復旧・復興支援のために設立された三菱商事復興支援財団では、野菜の包装・保管施設新設のための資金を「みちさき」に提供するなど、農業を軸とした地域復興を支援しています。
2014年3月16日 朝日新聞「GLOBE」掲載 |